〜新しき「記憶の芽」を育てるために〜
ひと月前に上梓した『PORSCHE Pride & Progress 偏愛グラフィティ』(A5判・全94ページ/有峰書店新社)のなかで、この1ページだけは、たとえコラムのかたちであろうと、どうしても挿入しておきたかった。
ポルシェ一族の最強ホットモデル、911 GT3 RSと 911 GT3を中谷明彦君がその素性を富士スピードウェイで確かめ、つづいてガンさんが911 GT3の進化ぶりや、初めて本気でポルシェと格闘した「タイヤテスト」の記憶を吐露してくれたあと、25P目にその「こだわりの1ページ」を滑り込ませた。それをそっくり、紹介しよう……。
まず赤系統の2台のポルシェ、356カレラ2と911カレラ2が霧のなかから浮かび上がっているはずだ。その真上にタイトルと、サブタイトルが……。そして、右側に聖書からの短いフレーズを引用し、簡単な解説が付けられている。
“一粒の麦もし死なずば”からのはじまり
ベストモータリング同窓会の原郷は1992 年10 月号 PORSCHE 特集にある!」
一粒の麦、
地に落ちて死なずば、
唯一つにて在らん、
もし死なば、
多くの果を結ぶべし。
一粒の麦は、地に落ちて死ななければ、一粒のままである。だが、死ねば、多くの実を結ぶ。自分の命を愛する者は、それを失うが、この世で自分の命を憎む人は、それを保って永遠の命に至る。
(ヨハネによる福音書12 章24 ~ 25 節)
そこに登場した3人のキャスター、徳大寺有恒(2014年11月物故)、黒澤元治、中谷明彦の「ポルシェ」を通して説くクルマへの情熱、愛、理解する力を、乳飲児のように吸収したあのころ。それをもう一度再現してみようじゃないか。それが「ポルシェ偏愛」への誘惑の第一歩だったとしても、なんという豊かで、滋養たっぷりな、先人のレクチャーだったことか。
★ ★ ★
「ポルシェ偏愛」への誘惑グラフィティがなぜできあがったのか、その根っことなった原郷『Best MOTORing 1992年10月号 Porsche Special』のタイトル画像を左下に配しながら、次ページからはじまる黒澤元治、中谷明彦、徳大寺有恒それぞれの「アーカイブ」を、じっくり味わってもらうための先導役としたわけである。つまり彼らの蒔いた種が、それからの歳月の中で、どんな芽を吹き、どう育っていったのか……。そんなことをみんなと語り合う「導火線」にならないものか。
なかでも今は亡き徳さんの『ポルシェを語る』には、特別の感情移入があった。何度も何度も、該当PORSCHE特集での彼のトークを聴き直し、文字にしていく作業は、まさにわたしの座右の銘にしている「一粒の麦……」の心を、さらに深いものにしてくれた。なにしろ、徳大寺有恒こそが、わたしに彼の愛車911 SCをポンと渡して、最初の「ポルシェ偏愛」に誘い込んだ「メフィストファレス」であったからだ。
さて、半年にわたるこの「偏愛グラフィティ」の取材・編集・製作で、「還暦プラス青春の20歳」は心身のエネルギーを使い果たしたのは事実である。そのため3年間続けてきた「中山サーキット」でのミーティングを断念し、然るべきタイミングで、関東圏で開催する肚づもりでいた。
2月18日の発売が迫ってきた2月15日、書店に『偏愛グラフィティ』が並ぶ前に、と目黒のポルシェJAPAN広報部へ届ける予定だったその朝、ネット通販のAmazonからメールが届いた。なんと「ベストモータリング編」と謳ったわたしたちの『偏愛グラフィティ』が事前に予約できますよ、という知らせであった。そのお陰で「売れ筋ランキング」の上位にはいっていることを知った……それならば、とわたしの足は「ポルシェ専用棚」をもつ代官山の蔦屋書店へ向かったのである。
なぜ「T—SITE」と呼ばれる「蔦屋書店」を中心にして、ライフスタイル提案型のお店やイベントに触れられるゾーンへ向かうのか。これもまた故・徳大寺有恒氏との関わりからであった。
2013年末、VWワーゲンGOLFが日本カーオブザイヤーのグランプリCARに選ばれたとき、その感想が訊きたくて、連絡を入れた。そして彼の「トークショー&サイン会」が、近く夜の代官山・蔦屋書店のイベントプレースで開催されるから来ないか、と誘われた。その間の出来事は以下のみんカラBLOGに詳しいので、ぜひぜひ(すでにお読みいただいている向きには。改めて、となるが)該当ナンバーをクリックして、ご一読願いたい。
*「トーク」のあとのサイン会。わたしが徳さんを撮った哀しきラスト写真となった。
①もう一度、徳さんと一緒に仕事がしたくなった!(2014年1月21日掲載)
②『徳大寺有恒、という生き方。』ドラマの共演者たち
(同年2014年2月2日掲載)
久しぶりに足を踏み入れた「T—SITE」。蔦屋書店「車とバイク売場」の責任者S氏はわたしを憶えていてくれた。単刀直入に、こちらの希望を申し入れた。
「前年、徳大寺氏の《トークショー》に触れたとき、近い将来、クルマ関係の単行本を創った時には、ここでぜひ、同じことをやらせて欲しい、とお話したことを憶えていらっしゃるか? 今回、ポルシェへの偏愛グラフィティを出版することになったが、黒澤元治・中谷明彦共同監修、ベストモータリングというすでに終刊となってしまった《VIDEOマガジン》を今もなお愛しつづけて、いつの間にか同窓会という名の《編集部》が編集・製作してしまった出来事などを含めて、トークショーを実現したい。それも「同窓会」を兼ねたイベントとして……」
こうして、一旦は断念したはずの「第5回ベストモータリング同窓会」は、4月22日夜の《トークショー&サイン会》とその後の懇親ミーティングという形で開催するところまでは、どうやら漕ぎつけた。
しかし、何かが足りない。せっかく平日の夜に集まったのだから。翌日の土曜日を善用できないか、というプランが「ベスモ同窓会編集部」の一人から提案があった。次の日、箱根のターンパイクを走って、終点・大観山パーキングのスカイラウンジ2Fは貸切OKなのでそこで同窓会を……というのだ。

*MAZDAターンパイク箱根
悪くない。が、ガンさんと中谷君のスケジュールはどうだろう?
さっそく両氏と連絡を取ったが、どうにもやりくりが難しいという残念な返事。こうなると、切り札の師範代・大井貴之君と、コボちゃんこと桂伸一君に事情を話して、一肌脱いでもらうしかない……。

*2日目の「箱根ターンパイク編」の講師に指名した桂伸一君が、また新しい「芽」となってくれるだろう。
さてこの先は?
すでに公表しているグループ欄の「イベント概要」と「イベント詳細」を参照いただきたいが、近く「蔦屋書店」からの正式告知と予約受付が開始されるので、ベストモータリング同窓会のメンバーでない方は、「トークショーとサイン会」についてなら、そちらからの予約で参加できるのでご安心願いたい。
「イベント概要」「イベント詳細」はこちら
最後にこの「1枚の写真」はいかがかな? 『偏愛グラフィティ』には使用しなかったが、63年式356カレラ2のゼロヨン計測光景。1992年度にベストカーもポルシェ特集を組んだ記憶を頼りに、ベストカーの地下資料倉庫に籠って、やっと探し当てた貴重なショットである。実はこの時にカビやダストにやられ強烈なアレルギー症状に追いやられてしまった。
ブログ一覧 |
ベストモータリング同窓会 | 日記
Posted at
2016/03/21 02:53:13