〜箱根路での恍惚と筑波バトルの死闘〜
『みんカラ・SPECIAL BLOG』に専用の席を設けてもらってから、5年と8ヶ月……。
時には、おのれを省みるためにも、そのスタートとなった《ファーストラン》から読み返すことがあるが、とても一日かかってもこなせないほどの量になってしまった。気ままな昔話のおしゃべり、勝手な「情報発信」に、呆れることなく付き合ってくれている「仲間」の励ましや反応が、何よりのエネルギー源であった。改めて、深く、お礼を申し上げたい。
単純なことかもしれないが「コメント」や「メッセージ」が賑やかに寄せられると、かつて販売セクションから報告される売れ行き調査を気にしていた現役時代の気分に戻ってしまうのだ。
そうした中で、もっとも「イイね!」が寄せられたのは2016年10月22日にアップした
『緊急特報‼︎ ベストモータリングは生きているぞ!』(こちらをクリック)であった。「158」という圧倒的な数字は、普段が40〜50だから、その意味は大きい。
「ホットバージョンの本田編集長の声が、1オクターブ、高い」というのがその書き出しで、一度は諦めた「New NSX」を黒澤元治さんが単独アタックして、それを引鉄(ひきがね)にして『ベストモータリング』を復活させる、という秘密のプロジェクトが続行可能になった、という報告だった……インパクトは強かったが、残念ながら肝心の『ベスモ復活』は、まだ実っていない。
もう一つ、印象が強烈だったのは、鈴鹿サーキットを周回しながらの「ガンさんのNSX辛口インプレッション」。締めのコメントでズバリと言い切った……。
「やっぱり車が重い。ダイナミクスをもっとあげるためには重量を軽くしなくてはダメ。それとサスペンションのつくり方が間違っている。荷重変動が大きすぎる。もうちょっとサスペンションの勉強をしければダメだな。シャーシーデザイナーにいいのがいない」
レーシンググローブを外す手つきから、ガンさんの想いがまっすぐ伝わってきた。これまでのNSXを生み、磨き上げてきたガンさんにしてみたら、今回のNew NSXは、どうやら別物であるらしい、とわたしも締めくくったが、その時から気になっていたのが、ガンさん同様、NSX-Rを今もなお愛蔵しているドリキン土屋がどう評価するのだろうか、ということだった。
「Hot-Version Vol.144」がやっと出来上がり、待っていた「回答」が明らかになった。文字になっているものではなく、直接に新型NSXを箱根のワインディング路から、筑波のバトルステージまで、「疾っている土屋圭市」の心、息遣いを映像で丹念に伝えてくれた。それはまさに、土屋圭市の『NSXの愛し方』公開といってもいい出来上がりだった。
その辺を、少し。トレースしてみようか。
大都会の夜のイルミネーションを映しとったNSXのボデイは、確かにため息の出るほどに艶かしい。が、スーパースポーツの主戦場でどうなのか。
はじめのステージは御殿場から乙女峠の手前で長尾峠へつながるワインディング。枯葉を巻き上げながらコーナーを抜けるNSXからは、間違いなく「新しき帝王」の威厳すら感じられた。
続けて芦ノ湖へ下っていく箱根スカイライン。ドライブする土屋圭市の声が上ずる。感激し、やがて恍惚ゾーンに入っている。
「いやァ、速ッ! これはスポーツカーだ。当然のことながら、旧型のNSXにはこういう加速感はないですよ!」
4駆を感じさせないHONDAの新しい技術力に触れたところで、まずはSPORTモードで飛び出した。
「ワインディングを気持ちよく走るんなら、SPORTモードで十分行けちゃう。フロントが逃げない。これは欲しくなるなあ。メッチャ、いいよゥ」
続けて、スポーツ+モードも試す。
「鋼のような踏ん張りになってきたぞゥ」
インプレの声も弾む。
「でも、ワインディングではスポーツ+モードはいらないかも……+(プラス)はサーキットだろうね」
霧に包まれたパーキングエリアで。
「最初に新型のNSXを見たときに、メイドインUSAでしょ、という感覚。しかしこうやって走ってみると、間違いなくHONDAの血は流れていると感じた。ワインディング・インプレッションに関しては、100点でいいと思う。乗りやすく、攻めても安定感がある。ただ、このあと、われわれは筑波サーキットに行って検証したい。ピュアースポーツになるのか、ならないのか、楽しみにしています」
筑波サーキットでは、晴れやかな冬の日差しを浴びながら、頼もしい仲間が待っていた。織戸学と谷口信輝の常連キャスターと世界標準のスポーツカーとして、ニッサンGT-R Track edition engineered by NISMOとPORSCHE 911 turbo Sが選ばれて、待機していた。
スラロームTEST、タイムアタック、そして5ラップの真剣バトル。
NSXがトコトン、裸にされていく。はっきり言えることは、35RT-Rにせよ、911turbo Sにせよ、モデルごとに徹底的に鍛えられ、磨かれ、進化している。だからサーキットを走る姿に、それぞれ特有の美しさがある。
それに比べて、一旦、開発・製造を止めてしまったNSXには空白の10年が付いて回る。サーキットを駆け抜ける姿は、華麗ではあるが、躍動感に欠ける。コーナー毎に腰が引けている姿が頼りなかった。
そこのところを、土屋圭市がどう伝えてくるか。「土屋圭市の愛し方」という今回の命題も、実はそこにあった。
結果は、ホットバージョンの本編をご覧いただきたい。ただし、これだけはいえる。タイム・アタックッでは1分3秒台だった土屋NSXが、ライバルたちとのバトル中は、なんと2.2秒台で走行、その秘術を尽くした様子を証明してくれる。
最後に、土屋圭市は、こうまとめあげていた
「アメリカ生まれの新型NSXを日本のHONDAがどこまで仕上げていくかという楽しみができた。バトルの後、自分のNSXを走らせてみたが、それがHONDAなんだね。ドライバーに挑戦状を叩きつけてくる。そのレベルに今度のNSXを創り上げられないはずがない。ワインディングでは100点満点なのに、サーキットでは電子制御があまりにも介入しすぎて、安全は安全なんだけど、それが楽しいか、というと、スポーツカーとしてはチョット、と首を傾げざるを得ない。しかし、これからHONDAがタイプRのように進化させてくれるのかな。それをわれわれは期待して待っていたい」
なるほど、それが彼の「NSXの愛し方」であったのか。最後に問われていた。
「で、新型に乗り換えるのですか?」
その答えは、すでに見えていた。手元の旧型Rをもっと進化させるプロジェクトをスタートさせるらしい。
(この項、終了)
ブログ一覧 |
ホットバージョン | 日記
Posted at
2017/03/02 23:30:57