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2012年12月30日 イイね!

『N2喧嘩バトル』のIN CARドキュメント ~ああ「ハチロク慕情」第3幕~

『N2喧嘩バトル』のIN CARドキュメント ~ああ「ハチロク慕情」第3幕~ 前夜の鬱陶しい雨も上がって、光に満ちた、晴れやかな朝がやってきた。2012年も残すところ、あと3日になった。ひとまず、書きかけのBLOG原稿を仕上げよう。

 ホットバージョンの総尺は95分。その半分近い45分を『ああ、ハチロク慕情』のベースとなった「AE86岡山決戦」に割いていることからも、力の入れ方は半端ではないのがうかがえた。NHK大河ドラマの1回分と同じじゃないか。

 それにこたえて、予選のステージも丁寧に、じっくりと収録されている。各ドライバーたちのレースへの取り組み具合から、スキルのレベルまでがもろに透けて見える。決勝レースへの「観る側」の思い入れも、ぐんぐん高まってくるように、仕掛けてあった。

――N2決戦には過去最大の20台が出走、その中には、筑波のN2チャンピオンや、筑波N2で初めて1分切りをやってのけた「駿足NO.1」らが刺客となって、虎視眈々、土屋を狙っているスリリングな空気が、伝わってくる。とくにホットバージョンが選んだ6台(土屋車も含めて)に車載カメラを装着して展開する「IN CARドキュメント」は、期待を裏切らないものに仕上がっていた。


*エンジンをブローさせて決勝を走れなかったキトキト内堀その切れた走りはひときわ光っていた


*筑波N2チャンピオンのプライドにかけて「3速飛ばし」で熱走した斬りこみ隊長・鎌田。

 最初にS字カーブから裏のストレートに飛び込んだのは赤褐色のマシン。キトキト内堀が相変わらずの、キレのいい走りを披露する。それにつづいて、斬りこみ隊長・鎌田。優勝候補の筆頭だという。なるほど、ステアリングワークといい、シフトワーク、年輪を感じさせる円熟した味がある、と思った瞬間、シフトアップする左手が行き先を失った。なんと3速ギアをブローさせたのだ。それでも走りを続行する、3速飛ばしの秘技を駆使して。が、間違いなく走りのリズムを狂わせてしまった。

 カメラが再びキトキト内堀に焦点を合わせている。ペースを上げている。と、だらしなくエンジン音が垂れ、カラカラという異音とともに、白煙が室内にたちこめた。
「いまから一発、アタック中というところで……」
 残念だけど、エンジンをブローさせて決勝を走れなくなった、と唇をかむ内堀の顔がクローズアップされる。
 そこで土屋のアタックシーンがはじまった。目標の1分42秒台を、ひとまず、クリアー。で、なによりも見たかった、兄・孝太郎選手の走りが登場する。インフィールドを軽々と駆け抜け、土屋のタイムを上回る。1分42秒505。セクター1ではベスト・タイムだった。
「来た! よし!」
 ピットで見守る亜衣さんの声が弾んだ。

 41秒台に1番乗りしたのは、2012年の筑波N2戦で頭角を現した若きハチロクランナーの諏訪知己だった。この岡山国際は初めてとあって、前日の練習走行からコースインしたのはいいがクラッシュしてしまう。それでも、なんとかマシンを修復してこの予選に臨み、1分41秒951のタイムを叩き出したのだ。

 土屋のラストアタックがはじまった。ノーカットでそっくり1周、土屋の走りが見られた。しゃべりは全くない。すべてが土屋のために創られたNewマシンは、すっかり彼になじんでいた。桜井カムが心臓部におさまる5.5AGエンジンは心地よいハチロクミュージックを奏でる。1分42秒085。この時点で2番手。それにしても、と、ぼくは唸った。これが56歳という年齢を重ねた男の走りなのだろうか、と。ハチロクを走らせている限り、彼はひたむきに、フレッシュマン・レースをはじめたころの純真さを取り戻しているに違いない。ひたすらアクセルを踏み、ステアリングに己れを任せ、レーシングコースに溶けこむ。つまり少年そのものの初々しい走りを、今も喪っていないということ。これは決勝レースでどんな走りをしてくれるのだろうか。どこで闘いの牙を剥きだすのだろうか。それを伝えてくれるが『IN CARドキュメント』ならでは、の世界だった。改めてぼくは、わくわくしはじめていた。

 予選は結局、周回を重ねるうちに3速飛ばしのドライビングに慣れた鎌田が、240馬力を超える7AGのトルクをうまく使って1分41秒856のトップタイムをたたき出してP.Pに。この走りも一見の価値がある。






*第1コーナーを目指して鎬を削る土屋と鎌田。


*その模様を「INCARドキュメント」で伝えてくれた幸太郎号
 
 決勝の時間が近づいた。予選終了時点で4台がマシントラブルで消えていた。16台によるローリングスタートのためのフォーメーション・ラップが開始される。ゆったりとコースを1周したマシンたちが帰ってきた。横並びの五つの赤ランプが消えた。一瞬の空白があって、グリーンランプが一つ、灯った。と、いきなり土屋がインに切れ込んで、トップに立った。予選4位からのスタートだった孝太郎号がそれに続く。スタートの模様を車載カメラでリプレイされる。土屋の滑らかにインに滑り込むタイミングの絶妙さ。それを予測していたように真後ろに張り付く孝太郎号。その孝太郎号のカメラから、迷いなくインを取った土屋の気迫に押されて、道を譲ってしまった斬りこみ 隊長・鎌田の動きがバッチリわかってしまう。予選2番手だった諏訪も、その2台の気迫に呑まれて、5位までドロップしてしまう。



くだり切ったアットウッド・コーナーからは、のぼりバックストレートでのパワー勝負が待っている。土屋のスリップをつかって孝太郎号がヘアピンで勝負を仕掛ける。鮮やかにパス。
「やってくれるぜ、孝太郎!」ナレーター氏も絶叫してくれた。ピットのモニターでその瞬間を知る亜衣ちゃんの表情が、アップで映し出される。涙ぐんでいる。
 

*ヘアピンでインから土屋ハチロクを攻める孝太郎号



 インフィールド区間に入った。ここからは低速コーナーが連続する。ホットバージョンのN2決戦で念願のトップに立った兄・孝太郎がオープニング・ラップをとった。その一方で、予選トップの鎌田が3速を失ったハンディから、コーナーで回転が落ちすぎてしまい、スピードの乗らない苦戦を強いられていた。

 再び裏のストレート。今度は土屋が孝太郎のスリップを使ってやり返す。後ろから切り込み隊長・鎌田も伸びてきた。ヘアピン。土屋がインを抑えた。が、ヘアピンのギア比の合っている孝太郎もやり返そうとして、力みが入った。ラインが乱れた。それを鎌田が見逃すはずがない。孝太郎が3位に落ちた。
「これがN2の喧嘩バトル! スイートスポットの小さいN2マシンはわずかなミスもゆるされない。最終コーナーをうまくまとめた鎌田が、その勢いで土屋にしかける!」

 決勝の模様はここまでにしよう。結果は亜衣さんにとって痛しかゆしのどんでん返しが待っていた。が、ともかく、久しぶりに「IN CARドキュメント」で燃えてしまった。そして、小泉亜衣・孝太郎兄妹の「Dreams Come True」は見事にかなえられたわけだが、亜衣さんは恩師である故・桜井氏にどんな報告をしたのだろうか。
 
 考えてみれば、ベストモータリングが多くのファンに支えられ、ある時代を謳歌できた要因のひとつは、見る人の心を熱くした「実戦バトル」ものにあったのではないか。
ミラージュCUP、ゴルフのポカールレース。あるいは中谷、服部、琢弥らのF3シリーズ。それぞれに記憶に残るシーンが思い出されるが、ぼくにとって印象深かったのは、FISCOのTSサニー戦で登場した田島栄一クンの「IN CARドキュメント」である。アメリカから帰ってきたばかりの田島クンは間違いなく速かったが、100Rなどの右回りコーナーでシフトミスを連発してエンジンをブローさせてしまう内容だった。


*田島栄一クンの「IN CARドキュメント」(ベストモータリング1988年4月号より)

 粗削りだが、鮮やかな印象を与えたこの企画の立案者が田部靖彦クンで、この線をもっと拡大させよう、と指示したものだ。で、どの号に掲載したものだったのか、気になってちょっと調べてみたところ、創刊から5号目、1988年4月号だった。ここで一つの奇縁に驚かされる。同じ号に舘内端さんと中谷明彦君による『ちょっと放浪モータリングの旅』というコーナーが収録されているではないか。そこで、記憶の連鎖作業がはじまった。


*「ちょっと放浪モータリングの旅」で舘内さんと一緒に備前焼の窯元で轆轤を回す中谷クン。

*日本最古の庶民教育の場・閑谷学校にもを訪れた。備前焼の瓦に驚嘆する。


*仕上げは山陽スポーツランド中山サーキットへ。まだこのころは岡山国際の前身、TIサーキット英田は構想段階前だった。ちなみに、亜衣さんのレースデビューがこの中山サーキット。

 当BLOGの第1回「ファーストラン」でこんな一節を書き記している。
「(2011年)3月15~16日の岡山国際サーキットでレクサスLFAをバトルに引っ張り出せるようになったので一緒にいきませんか、とメディア企画部の田部靖彦部長から連絡が入った。前日に空路で岡山入りして、その足で閑谷学校。中山サーキット、備前焼きの窯元を回りましょうよ、という誘いがあった。このコース取り、実は24年前の企画で舘内・中谷の両氏を誘って「マツダMX‐04にめぐり逢う旅」を再現しようという、彼らしい思いやりに満ちたプランだったが、実はベストモータリングの最後のロケになるところだった。それが東日本大震災の影響で中止となった」

 そうだ、2013年の4月6~7日は岡山国際でスーパーGTの開幕戦だ。この機会を逃す手はない。今度こそ、間違いなく岡山へ。

Posted at 2012/12/30 04:12:14 | コメント(5) | トラックバック(0) | ホットバージョン | 日記
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何シテル?   06/22 10:14
1959年、講談社入社。週刊現代創刊メンバーのひとり。1974年、総合誌「月刊現代」編集長就任。1977年、当時の講談社の方針によりジョイント・ベンチャー開...
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