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正岡貞雄のブログ一覧

2012年10月19日 イイね!

1分間のショータイム ~『因縁の仲』17年目の激突③~

1分間のショータイム ~『因縁の仲』17年目の激突③~ 予選が終わって、決勝レースを待つ束の間の休息。世界で初めての「86チューンドカー・バトル」のポールポジションをつかみ取ったAuto factoryのたしろじゅん選手が、峠からやってきた、ふたりの「走り屋おじさん」の手荒い洗礼をうけていた。

 峠一族の顔役、岡村和義(ヤシオファクトリー)が、ラフな扮装(いでたち)でふらりとパドックまで遊びにやってきた。


*最速タイムをたたき出したAuto factory86.ドライバーはたしろじゅん。峠一族の標的となった。



 週2回の走りこみとマシンの軽量化が当たって、最速タイムをたたき出したたしろ君を指さす。何を語りかけたのかは不明だが、
「ちゃんと、この業界のしきたりが判っているらしくて……」
 得たりや応、と番長・小林が、「はい、はい」としおらしい返事をしているたしろ君に、一発、かませてきた。


*どこか仁礼ディレクターと雰囲気が似ている「たしろ」選手は群サイからやってきた二人にはさまれて……。


*その瞬間、パドックの空気が凍りついた!? 


「ね、ね、これわかる? 窓ガラスからこれ(右手で制止するしぐさ)。なにか、わかる? いってごらん!」
 右手をマイクに見立てて、たしろ選手の口元につきつける。即座に、受難者が絶妙な間合いで、反応した。
「え、はい、はい。え~と、ヨッ、先行って」
 一瞬、時間が止まった。つづいて、周囲で笑いが明るく弾ける。番長、憮然とした表情で、
「岡村さん、こいつ、判ってないよ、業界が……」
 そして、つづける。
「ま、タテ社会ってのがあるからな」
「はい、よろしくお願いします」
 素直に叩頭するたしろ君。その仕草が妙に素直で、かわいいのだ。途端に、小林番長の頬がゆるむ。背中を見せながら、
「長生きしたかったら、そういうもんだぞ。ぼくもそういう風に我慢してきた」
 そうですね。もう一度、頭を下げる後輩に、もうすでに小林番長はこころを許しはじめているようだ。
 心の温まる光景だと思う。サーキットライフに情熱を傾注する男たちだけに許される、男臭い交流が、そこにあったからだ。で、ひょいと気づいた。このたしろ君、誰かに似ている! そうだ、この特集のディレクター、仁礼義裕のそっくりさんだよ、と。


*第2コーナーをトップで抜けるBee racing86.。今井ちゃんの心境や、いかに?

 決勝レースが始まった。逆ポールのレギュレーションのお蔭で、3番手からスタートできた今井ちゃんが、トップで第1コーナーに飛び込んだことは、すでに前稿で伝えた。第2コーナーから、コカコーラコーナーも無事通過。が、真後ろに、よりによって『因縁の仲』で結ばれたふたり、土屋圭市と大井貴之がつきまとっている。100Rの飛び込みが勝負だ、と今井ちゃんも判断した。そこのところを、今井ちゃんが正直に「コメント」として寄稿してくれたので、若干、ぼくなりのリライトをほどこして引用してみる。

「ハチロクで初めてのFSWレーシングコース。練習走行も周回を重ねる度にタイムアップする。そこで、少しでもトラクションをアップしようと、予選のあと、バトル直前に車高を下げて臨む。それが最悪のシナリオに! 1コーナーのブレーキングが変だときづいた。そこで、コカコーラコーナーは優しく踏む。あ! 後続が一気に追いついて来ちゃった。で、全開に! ところが、4速でレブっている。そこをあっさり土屋さんに狙われた。ここで負けるわけには行かない。無意識のうちに5速にシフトアップしていた。待っていたのは!
ぼくの楽しかった1分間のショータイム。あんなメンツを従えての1コーナー突入は快感♪ 腕が劣る分をこっそりパワーアップした代償がこの結末でした。帰ってから車高を下げたマシンを検証してみると、みごとな『底つき』。お笑いください」


*100Rへのアプローチ。すでにドリドリがインから。今井ちゃんの左手はすでに……。

 100Rにアプローチした時の今井ちゃんの車載カメラはバッチリ、その瞬間を捉えていた。ドキドキの今井ちゃんに襲いかかるドリドリ。完全に100R のインはがら空き状態。ドリドリがトップへ! と、ナレーションは入ったその時、今井ちゃんの左手は4速から5速の位置へシフトアップしていた。大井からの車載カメラが左へよじれていく、今井ちゃんの似非ハチロクを映し出してみせる。


*「因縁の仲」大井にも完全に前へ。いや、この時すでにコントロール不能に。

*今井ちゃん、コースを逆走? 



「なんか、今井ちゃんがちょっとフラフラしてるぜ~。あ、あ、あ~、あっはっは~」
 今井ちゃんは懸命にステアリングを右に、左に切って態勢を立て直そうと試みる。が、5速をホールドしたまま。そして、力尽きる。タイヤのスキール音を残して、クルリとリアからコースの外へ弾き出された。ゴツン、グシャリ。停まった。土煙が今井ちゃんを包んでいる。
 後方のマシン(たしろ車、山田車、小林車)からのリプレイ映像が、その一部始終を伝えている。マシンの右前がコンクリートフェンスに当たってしまって、走行不能に。
「ぼくの楽しかった1分間のショータイム♪ ホットバージョンを買って、みなさん、お笑いください」(今井清則)
 なんて切ないメッセージだ。ぼくも実は、このヘアピンで、EXAとミラージュを、2度も亀の子にしてしまった痛恨の傷跡をもっている。その瞬間を思い出してしまった。あれから、25年が経っても、その記憶はいまも鮮明に刻み込まれている。




 
 ここからは、久しぶりに、大井君の実戦バトルを愉しませてもらうとしよう。ダンロップコーナーをドリドリのアミューズ86がトップで通過する。2番手が大井のレッグ86。3番手にはレボリューションの菊池。各車の差は似た感じだが、少しずつ菊池が迫っている。少し離れてARCの小林号が6番手に。



*最終コーナーを立ち上がった。スリップストリーム・バトルがはじまった。FSWの86レースの名物になること疑いなし。


 最終コーナーを立ち上がる。5台が団子状態だ。ここから富士のストレートを使った、名物のスリップ・ストリーム合戦がはじまった。
「凄いよ、これ!」放送ブースでゲスト解説者に早変わりした岡ちゃんの、うれしそうな顔と声が紹介される。と、その瞬間、大井がやらかせてしまう。平野ナレーターが絶叫する。
「しかしここで、LEG大井が掟破りのウインド・ウオッシャー攻撃。やっぱり、相変わらずです」
 そのせいか、大井はトップで第1コーナーに飛び込んだ。が、見せてくれたのは、スリップ勝負で3位に落ちてしまったドリドリ。ギリギリまでブレーキングを我慢して、いったん2位に浮上していた菊池号を1コーナーでパスするシーンだ。


*初めての86レースの覇者となったレボリューションの菊池号
 
 2LAP目のヘアピンまでトップを守ってきた大井も、菊池に追い詰められ、300Rで軽くパスされてしまう。
「はやいなぁ」
 ぼやく大井を、さらに予選トップのたしろ号が左側からパスしようとして、縁石からはみだし、タイヤをグリーンに落とした。
「そこに道はないはずだがなぁ」
 へらず口だけは健在な様子。が、ストレートに入るとあっさり、右サイドからたしろに抜かれてしまう。
「あ、速い、速い、みんな速い。ちょっとォ、やめてぇ」
 呆れてみせるが、すぐにやり返す。逆にたしろ号のスリップに入って、やり返す。ストレートの真ん中あたりでは、前に出る。
「よっしゃ! でかいタイヤの勝利!」
 久しぶりに大井貴之のバトルトークに触れたが、往年の茶目っ気の聞けるステージではなかった。で、そっと「機密事項」を漏らしておこう。この「86バトル」が12月9日、筑波サーキットで「ホットバージョン」の収録を組み込んで催される。詳細は決まり次第、何らかの形でお知らせするとして、そのとき、かつてのベスモを愛好してくれた同志たちと、オフ会を開いたらどうだろう、と思いついたのだが、いかがかな。近くその辺を煮詰めて、告知したい。
 なお、この86バトル、大井3位、土屋5位。たしろじゅんは菊池の後塵を拝した。そうか、大井君が予選走行で今井ちゃんのマシンをパスするとき、はじめに「じゅんちゃん」と言い間違えたのは、たしろ君のことだったのか、とやっと気づいた。
(この項、やっと完結)


 
Posted at 2012/10/19 02:18:55 | コメント(8) | トラックバック(0) | ホットバージョン | 日記
2012年10月16日 イイね!

『ハチロク使い』の面々  ~『因縁の仲』17年目の激突②~

『ハチロク使い』の面々  ~『因縁の仲』17年目の激突②~ 久しぶりに「みんカラ」友だちから寄せられた『コメント』へ、せっせと返事を書きこむ時間が持てた。やっぱり、いいね。うれしいよ。

 この稿にとりかかった10月15日、午後2時30分現在で、11人が『因縁の仲』について、なにがしかの感想を寄せてくれた。ありがとう。


:*当日、富士スピードウェイでのオフ会に参集した86とハチロク。計500台。

 トップバッターは「ユーさん@midship」さん。ぼくの記事を読んだら、今回も購入したくなった、と最高の褒め言葉をいただいた。その感謝の気持ちを伝えたくて、ブログにお邪魔してみた。質感の高いデザインだった。「車に対する情熱をずっと持ち続けているおじさん」と自己紹介している。愛車のHONDAビートでFSWのフルコースを攻めた7分ほどの走行動画まで用意されていた。
 2番目が「FRマニア」君。ぼくの記事を待っていたが、今回は発売日に購入して、もう観てしまったという報告。
 3番目が「あっくんりょうパパ」さん。大井君の「ゴツン事件」でバンパーの前に立って「証拠」を隠していたシーンを懐かしがっていた。4番手が「TAKUV35」氏。すぐに新しいHVを買いに行く、とのことだった。
 5番手が自動車工学に取り組んでいる大学生の「えむしい@さんよん」君。今回の「いいね!」クリックの1番乗り。お礼を伝えたら、内容たっぷりのコメントが返ってきた。6番手の「あど」さん。8月5日の富士で86バトルを生観戦していたとのこと。いつも、いい目配りのできる人である。




 
 そして7番目「Bee☆R」。うん!? 『因縁の仲』の主役の片割れ、今井ちゃんだよ!「懲りずに、これからも精進します」と。以下、「miracle.civic」「AY345」「イワタカズマ」「CMO」の4人も揃って「ベスモ」がきっかけで、クルマの世界にドップリはまったうれしい「お仲間」たち。広報車事件、大井君の「ゴメン、ゴメン」などを共通の記憶として、いまも共鳴し合うことができる。なにかがぼくのなかで、快いメロディーを奏でながら、解凍されていくようだ。

 さて、前置きが長くなった。86バトルの予選開始の模様から始めようか。ディレクターに起用された仁礼義裕は、この86バトルに投入された各ショップの取り組み、工夫ぶりまで、丁寧に追っていた。チューンドバトルの場合、その点を大事にしないと、単なる速さ比べにすぎなくなるのを、仁礼はよく承知している。
 
 いつもの平野義和さんのナレーションが、賑やかに盛り上げてくれる。
「チューンド86は富士でどんな走りをみせてくれるのか。予選開始だァ。ちなみに今回はスピードリミッターが解除できなかったマシンが多かったため、スピードリミッターつきのレギュレーションとした。トップバッターはBee★Racingのハチロク~」

 いきなり、今井ちゃんがアップで登場、自分のマシンについての抱負を語りをはじめた。お、いい味、してるぜ。ひょっとしてHVは、彼を専属キャスターの仕立てようとたくらんでいるのかな。特にこの号からは、そんな匂いがしないでもない。



「手軽にやってみたいな、と。肩に力を入れ過ぎず、タイヤ、ホィールに足回りを。ま、普通にみんなが手に入るもので、まず、走ってみたいな、と思って参加させてもらいました」
 今回の86バトルのドライバーは、参加したショップがそれぞれに自前で委嘱する建前となっていた。で、Bee★Racingは社長が自らステアリングを握った。
 最高速はスピードガン計測で、185.2キロをマークした。今井ちゃんはファイナルを5.1に変更して持ち込んでいた。クロスミッション、ファイナル変更は、NAチューンの醍醐味である。このあたりは旧型ハチロクチューンで体得した手法であった。
 
 今井ちゃんはマシンつくりのプロ中のプロ。しかし、ドライバーとしてのレベルをぼくは知らない。そこで率直にご本人に問い合わせると、早速、返事が送られてきた。まとめると、こうなる。

――免許を取るなり、ジムカーナー、ダートラもどきを経験し、ストリートゼロヨンから峠を走る峠小僧に。さらにFISCOのスポーツ走行などを22歳までつづけ、富士フレッシュマンにBD105 ファミリアで初参戦。その後、KPにEPに86に、SA22CのRX-7、JSSのスカイライン、ロードスターレースの開幕戦。筑波のプレス対抗もCAR-BOY誌チームから参戦。ドラッグ関係ではタイに行ってランエボでレース参戦、アメリカで飛び込み参加したり、韓国に行ってデモラン等も経験。最近、ドリフトが少し、上達しました。チューニングカーで参加するのも、つくるのも好き。生涯、病気として貫きます♪

 なんとまぁ、見事なクルマ野郎ぶり。で、第1コーナーの飛び込みから第2コーナーを下る予選アタックを拝見。ステアリング・ワークしか映ってないけど、今井の旦那、ちょいとこじり過ぎじゃないでしょうか。どうやら、ドーンと運んでくれるビッグパワーの調教がお得意とみたが……。



 Best-Timeは2分14秒008。それが速いのか、遅いのか。各ショップのマシンのチューニングの程度、仕上がり、それに走りの生命を注入してくれるドライバーを、丁寧に紹介してくれる。いいねぇ、この丁寧さ。
 N2チャンピオンの鎌田芳徳選手を起用したHP1ハチロクは、みんなで楽しくサーキットを走れる手軽さを狙って、突っ込んだチューニングはしていない。LSDもなし。フロントに225という少し細めのタイヤ(リアは255)をチョイスしたため、若干、アンダーステアが出てきた。その対策としてキャンパーを3度半まで施した状態で、2分12秒322をたたき出した。

 ジムカーナー仕様をこの日のイベントのためにファイン・チューニングしたのが、名古屋からやってきたカーライフレボリューション K-one 86。ドライバーはスーパー耐久出場経験を持つ村尾真吾選手。富士を走るのは、久しぶりだという。最高速、182.2キロ、ベストタイムは2分14秒526。非力は否めない。
5 ZIGENインターナショナル86は、唯一、オートマチックトランスミッションでエントリーしていた。86のエントリーユーザーにも、気軽にサーキット走行を楽しんでもらえるパッケージで挑戦したい、と張り切っていた。最高速、181.31キロ、ベストタイムは、2分14秒136。今井ちゃんとドッコイドッコイじゃないか。



 お次はARCグレージング86。ドライバーは小林真一。愛称は「番長」とか。HV名物「群サイ」を主戦場にした『峠・最強伝説』などでいい味を見せてくれている、あの強面(こわもて)のお兄さんが、まるで坂本竜馬がふるさとの桂浜で、太平洋に向かって、腰に両手をあて、胸を張り、理想を訴えるような姿勢で宣言する。ちょっとした役者じゃないか。
「気持ちは、全部抜きます。気持ちですけどね。でもね、一番、タイヤが細いから(225)、それがいい方に出るか、悪い方に出るのか。パワーのないクルマは、それなりの走り方、乗り方があるので、それにぼくが対応できるかな、です。ま、ぼくは天才なんで(ニヤリとしながら、一瞬の間を取って)1周あれば平気です」
 番長が走り出した。最高速は185キロ、とこれまでのトップをマーク。タイムも2分11秒062と、ちょっと、飛びぬけた感がある。


 

 そしてお待ちかねのLEG MOTOR SPORT 86の番がきた。広島から自走で駆けつけてくれたという。特別指名を受けたドライバーが大写しされて、あごひげにめっきり白いものの増えた、懐かしい顔が登場した。そうか、大井貴之君は昔から広島のショップの人たちと懇意にしていたな。その線の推薦で、ガンさんの「ご老公シリーズ・山陽スポーツランド篇」に呼ばれ、見事に格さん役の大井を手玉にとったのが谷口信輝君だった。

「レック号に乗る大井です。今回、みんながリミッターつきでレースをするという話を聞いて、225を履いていたのを、235の40(R18)という、ちょっと外径のでかいタイヤに替えました。これでスピードを稼げるかどうかな、と」
 最高速は185キロと、前を走るARC号と同じだったが、スリップを使って、あっさり前へ。この時、番長へ「グッド・ジョブ」サインを送る余裕。そして宣言する。
「全部のストレートでスリップを使う!」
ヘアピンを立ち上がって300Rへ。ブルーのマシンのスリップに入る。あっさり並んだ。そこで一発かます。
「ここは3(ギアのポジション)だよ、ジュンちゃん(うん? だれのこと?)」
 と、言いかけて、大井が気づく。
「あ。今井さんだよ!」
 その瞬間、左の縁石からはみ出してしまう。危ない。待っていたのは右へ回り込む300Rのコーナー。
「あ~。あ、は、は」
 因縁の仲との再会。大井の動揺を象徴するシーンが、爆笑を誘う。この調子では、本番の決勝レースでとんでもないことが起こるに違いない。間違いなく、ぼくは予感していた。


*「因縁の仲」との遭遇に動揺した大井はコースからはみだした! あ、わ、わ、わ。

 となると、先を急がねばならない。申し訳ないが、この後、2分07秒台を出して予選上位に進出したカーメークrasty86や、チューニングメニューの多さではNO.1のレボリューション86、ハチロクと富士とドリドリの組み合わせを蘇えらせたamuse86、そして最速の2分05秒760、最高速188.6キロをマークしたAuto fctory86の詳細は、ぜひHV=118号の本編から鑑賞いただきたい。



 スターティング・グリットには恒例の逆ポールで10台が並んだ。3Lap勝負である。P.Pは予選最下位のK-one。今井ちゃんはイン側、3番手と好位置をゲットした。土屋圭市は6番手スタート。7番手に大井。ここはコクピットから解説する大井のコメントに耳を貸す、と。
「先頭の4台はチューニングの方向性的にストリート。で、真ん中の2台、3台がサーキット&ストリート。うしろがレーシング。要は速いってことですね」





 いよいよ、スタート。土屋はインを選んだ。それを車載カメラでリプレイする。「絶妙」という形容はこのためのものだったのか。クラッチミートはおよそ4500、トラクションのかかりのなんと滑らかなこと。加速。軽々と前車(4番手のHP1)を右サイドからパスしていく。左斜め前にいた5番手の小林番長もとらえかかる。と、番長、シフトミスをやらかした。すかさず、大井も左から番長ハチロクを抜き去る。
「外から行きま~す。中から土屋さん」
 第1コーナーが待ち受けている。ナレーションの平野さんも興奮を隠さない。
「そしてトップは、なんと今井ちゃん! K-oneの村尾選手をパスして、なんとこの記念すべきバトルのトップへ浮上した」



 第1コーナーの飛び込む今井ちゃんを、K-oneの車載カメラが捉えていた。2コーナーでお尻を振っているものの、無事通過。
「前にはだれもいない! これはド緊張」 
 コカコーラ・コーナーが待ち構えている。そこも通過した。が、ドキドキの今井ちゃんに襲いかかるドリドリ。ついに100Rの飛び込みで、すんなりインをとって、前に出た。そして、LEG大井号もこれにつづく。とうとう、「因縁の仲」の2車が、超接近。
 平野さんがナレーションの途中で叫んでしまった。
「なんか、今井ちゃんがちょっとフラフラしてるぜ~。あ、あ、あ~、あっはっは~」

 第1コーナーから100Rまでの1キロ足らずを、土屋、大井を本番のレースで、後ろに従えて走った代償はなんだったのか。以下。次回で総括しよう。
 


Posted at 2012/10/16 15:08:57 | コメント(5) | トラックバック(0) | ホットバージョン | 日記
2012年10月13日 イイね!

『因縁の仲』17年目の激突 ~新着HOT-VERSION Vol.118より①~

『因縁の仲』17年目の激突 ~新着HOT-VERSION  Vol.118より①~ いくらなんでも40日ぶりのブログ更新ははずかしいよね。夏バテを癒すために、ちょっと2週間ばかり、休暇をいただいたつもりだったが、いったん怠けてしまうと、なかなか腰を上げるのに手間取ってしまう。申し訳ない、と思いつつ、なぜだかPCにむかうと、ほかのことをやってしまう。


*この号のアシスタントは、2012年 ALTA GALSの林紗久羅さん、22歳。

 そこへ届いたのがホットバージョンの118号。実は、出来立てのホヤホヤ版の到着を心待ちにしていた。すっかり、HVの虜(とりこ)になりはじめている。ともかく、本田俊也編集長をはじめ、スタッフの真面目な取り組みに、熱いものを感じとっているからだ。



 では、はじめようか。この号の目玉企画は『TOYOTA 86 チューニングカー・バトル in FUJI』。まずメインキャスターの土屋圭市が一発、ぶち上げてくれた。
「さあ、今回のホットバージョンは真夏の祭典、FUJI86スタイル2012にきておりますが、(スーパー)GTのブースより盛り上がっているな、これ」
 なるほど、出店ブースが72店舗、来場者数も5500か。同時に催されたハチロクオフ会には500台が集結したという。ちなみに86が350台、AE86が150台。86人気は半端じゃないね。
「新型の86が登場して、新旧で集まろうか、というのだけど、そこでハチロクだけのチューニングカー・バトルをやろう、と。これは世界初ですね」
 もちろん、ドリドリも「アミューズ」チューンの86で出走する。


*大井貴之君との「因縁の仲」が、86バトルでどんな局面を招くのか。「今井ちゃん」の笑顔がいい!

 画面はいきなりイベント当日の朝に切り替わって、Bee Racing主宰者の「今井ちゃん」がなにやらゴソゴソやっているシーン。手にしているのはゴールド色の蛍光ペン。これを何に使うのかな、というナレーションがかぶさったところで、今井ちゃんが駆け寄ったのはブルーのBRZ。ノーズのエンブレムにはガムテープが貼られている。そこへ、なんと片仮名で「ハチロク」と書きこんでしまった。



「今井ちゃんは、あまりにも86バトルに出たかったため、なんと掟破りの作戦を決行。BRZをハチロクに変身チューニング、これでいいのかい!?」
 ナレーションの平野義和さんも結構、ノリノリだ。
さらに、リアのエンブレムには「86」と書きこむ。
「これで、ばっちり!」
 今井ちゃんの自慢そうな声がかぶさる。

 そして予選開始。エントリー車の紹介がはじまる。そのトップバッターに、今井ちゃんがチャッカリ、選ばれている。名前もフルネームで紹介されていた。今井清則――そう、記憶に刻み込まれた懐かしい人物じゃないか。

 あれはもう17年前の出来事だった。R33GT-Rがデビューして、恒例の筑波で「王者復活バトル」を『ベストモータリング』1995年4月号に設定したのはいいが、持ち込まれたR33 GT-R Vスペックの広報車が、チューニングカー顔負けのポテンシャルに仕上げられていた。ドライバーは清水和夫。ライバルたちの追従を許さない、圧倒的な疾さを見せつけた。

 バトルが終わって、ドライバー全員の評価ミーティングが一段落したところで、土屋圭市が切り出した。
「おれは納得いかないね。おれはずっと(広報部から提供されたVスぺを指さして)こういうクルマで取材をやってきた。それでいいクルマだ、素晴らしいポテンシャルだから、とみんなに薦めたし、自分でも購入した。もう2700人からの人が、ぼくらの評価を信じて買っている。だから、本当の性能はどうなのか。おれは市販車だけで、もう1回、真剣バトルをやらせてもらいたいね」

 これが「R33広報車事件」の発端だった。この土屋圭市のアピールにこたえて、直ちに舞台を鈴鹿サーキット・東コース(逆バンクコーナーを過ぎると、すぐにショートカットして、シケインを抜けたあたりに合流する)に移すことにした。

  当然、R33 GT-RのVスペックは、土屋圭市ご本人のマイカーを動員した。発売されたばかりのR33 GT-Rの方は一般ユーザーから調達するのに困難が伴ったが、幸い、当時の「GTマガジン」(交通タイムス社刊)の杉野勝秀編集長がノーマルを購入したのを聞きこんで、強引に口説いて、協力してもらう。それが縁となって、後年、杉野君は2&4モータリング社に転籍し、「ベストモータリング」の3代目編集長を務めてもらうことになる。このマシンには中谷明彦が搭乗した。
 同じく、GTマガジン編集部から借用したR32GT-R VスペックⅡには、そのころアルティアGT-RでN1レースに活躍中の桂伸一を指名した。
そして国産最速マシンのライバルとして、NSXにも登場してもらわなくては片手落ちになる。そこでガンさんの熱心な信奉者のひとりから借りることができた。もちろん、ドライバーはガンさんという条件つきで……。


 
  そして、さらにもう一台、大変なマシンが特別参加をしてくれていた。Bee Racing 33GT-Rである。そう、BZRに奇妙なチューニングをほどこしてハチロクに変身させてしまったあの「今井ちゃん」が社長を務めるチューニング・ショップからの提供マシンであった。チューニングの自由度が高いということでノーマル仕様を手回しよく確保して、やっと試作パーツを組み込んだところで、当時の編集次長・大井貴之が動員をかけたわけである。だから足回りのセッティングはこれから、という段階だった。つまり、シェイクダウンも済んでいない。その上、ローブーストで最高出力が390馬力、ハイブーストでは約500馬力を発生する超化け物マシン。それを大井貴之が調教できるのだろうか。
ま、新しいチューンドRの可能性を探る、なんて殺し文句で口説かれた今井社長、あの頃から、新しいものに取り組む姿勢、ちっとも変っていないじゃないか。いいねぇ。ついでだから17年前の、5台による5LAPバトルで何があったのか、思い起こしてみようか。

  まず、インから好スタートを切った土屋マイカーVスペックがクラクションで脅かしながら、桂32VスペックⅡを抜いて第1コーナーへ飛び込むが、すでにガンさんNSX-Rがしっかり前を抑えこんでいた。この時、大井チューンド33GT-Rは余裕をかまして最後尾から、前を行く4台の様子を観察していた。その模様を、当時はパッケージに付属させていた『BMリトルマガジン』に、大井本人らしきライターがこう書き記しているので、引用してみる。

「バトルの相手がみんなドノーマルだってこともあって、余裕こきまくりの走法。とりあえずはR32Vスペ(桂)とR33ノーマル(中谷)の差を車載カメラで説明して、R33Vスペ(土屋)とNSX-R(黒沢)のバトルを実況して、最終LAPの1コーナーで、黒沢NSX-Rをアウトから、F1みたいにバキューンとブチ抜きながら、横になっちゃいながら……。なんてことを考えながら走っているもんだから……」

  バトル4周目のストレートで、大井チューンド33GT-Rはスリップに入るや、まさに「バキューン」と土屋R33Vスペをぶち抜いて、トップを行くガンさんNSX-Rの追走を開始した。そこまではシナリオ通りだった。
「まずいね、NSX-R。ここからがぼくの仕事だよ。彼(ガンさん)をひとりにさせないのは……」
ところがのぼりのS字に入ったところでアクセルを踏もうが、ステアリングを切ろうが、ブレーキを踏もうが、出てくる挙動はオーバーステアのみ。さてどうなるか。


*「ゴツン」とやった直後の大井チューンド33GT-R。おいおい、どっちへ行くのかい?


*このシーンを見たい、との要望に応えて……。


*「ゴツン」とやって、今井社長に謝る大井貴之。因縁はこの時からだ……。

  そう、ご記憶の方もいらっしゃるに違いない。4周目の最終コーナーで、ハーフスピンを制御できないで、そのままガードレールへ吸い寄せられ、「ああ、ピットインしちゃう」と悲鳴を上げ、そのあと、「ゴツン」とやってしまったあのシーン。こうして今井清則社長と大井貴之の「因縁の仲」が始まったのである。これに土屋圭市が絡むと、かならず何かが起こる。今回のホットバージョン118号の「TOYOTA86チューンドカー・バトル」で、17年前の因縁を思い出させるアクシデントが、待っていた。その模様を、日を置かず、レポートすることを、約束しよう。

Posted at 2012/10/13 01:22:04 | コメント(12) | トラックバック(0) | ホットバージョン | 日記
スペシャルブログ 自動車評論家&著名人の本音

プロフィール

「雨上がりの朝が快い。加えて早朝5時から実況中継のドジャースVs.パドレス戦は、9回表の翔平君の3塁打が利いてDが逃げ切った。そんな時だから朝のデイリー紙買いの足取りも軽くなる。おお、TOP面はサト輝の豪快18号本塁打スイングのアップ。でも2戦連続の逆転負け。岩崎が簡単にやられた!」
何シテル?   06/12 09:50
1959年、講談社入社。週刊現代創刊メンバーのひとり。1974年、総合誌「月刊現代」編集長就任。1977年、当時の講談社の方針によりジョイント・ベンチャー開...
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