2019年06月24日
ドイツ・ニュルブルクリンク24時間レースでスバルが2年連続でクラス優勝!
1周約25km世界一過酷なサーキット
SUBARUのモータースポーツ統括会社であるスバルテクニカインターナショナル(STI)は、ドイツで6月20日~23日に開催された、第47回ニュルブルクリンク24時間レースにWRX STIの市販車ベースのレースカー「SUBARU WRX STI NBR CHALLENGE 2019」で出場。2リッター以下のターボエンジン車が参戦するSP3Tクラスで優勝。2011年の初優勝以来6度目、2連連続の快挙となった。
STIにとって2008年以来今年で12年目となるニュルブルクリンク24時間レース。今年は「SUBARU WRX STI NBR CHALLENGE 2019」(ドライバー:カルロ・ヴァン・ダム/ティム・シュリック/山内英輝/井口卓人)が、SP3Tクラスのポールポジションでスタートした。
舞台となったドイツ・ラインラント=プファルツ州アイフェル地方のニュルブルクリンクサーキットは、グランプリコースとオールドコース呼ばれる北コースを合わせた1周25.95kmと長いコース。しかも高低差300mと起伏が激しく、天候も刻々と変化。路面は、一般的なサーキットとは異なり、摩擦力の低い一般道に近い舗装を採用。それゆえタイヤのグリップ力は低く、コースオフしたときのエスケープゾーンは非常に狭いため、極論を言えば「コースアウト=クラッシュ」は必須だ。世界一過酷なコースと言われるほどで、世界の自動車メーカーは、新車開発で「卒業試験」と称してこのコースを使っている。
このように、過酷なコースを走行する耐久レース中で、SUBARU/STIチームのマシンは序盤からノートラブルでリードを築き、スバルディーラーメカニック8人を含む整備チームの迅速かつ的確な対応によって完璧なレースを展開。明け方にベストラップタイムを更新するなどドライバー陣も奮闘していた。
結果、SUBARU/STIチームは、2008年の初出場以来最多周回数の145周(約3763km)を走破し、総合順位19位を獲得。2年連続でSP3Tクラス優勝を果たしたのだ。
「究極の一般公道」「緑の地獄」とも言われるニュルブルクリンク・サーキット(1周25.95km)における24時間レースでのクラス優勝により、SUBARU車は水平対向エンジン、シンメトリカルAWDをはじめとして、その信頼性や耐久性、高次元のパフォーマンスをあらためて世界にアピールしたことになったわけだ。
【完全勝利】ニュルブルクリンク24時間レース スバル WRX STIクラス優勝 2連覇達成
ニュルブルクリンク24時間レース2019
スバル WRX STIがSP3Tクラスに出場していたニュルブルクリンク24時間レースでは、クラス優勝をし、通算6度目となる2連覇を達成した。予選からクラストップの座をがっちり掴み、決勝では一度もクラス1位の座を明け渡すことなく24時間を走りきり、完全優勝を成し遂げた。
ディフェンディングチャンピオン
2日間に渡る予選では、ナイトセッションであることや路面がウェット状況であったことなどから、チームは出場選手に課せられた義務周回をこなすだけに留め、条件がよくなってからタイムアタックをする戦略をとった。しかもタイムアタック9分1秒台を早々に叩き出せたことから、予選時間を30分残してピットを後にする、ディフェンディング・チャンピンオンとしての余裕を持ってクラス予選1位を獲得した。
決勝レースは6月22日(土)、23日(日)の2日間に渡り、ドイツ・ニュルブルクリンクで23万人の大観衆を集めて行なわれた。サーキットのあるアイフェル地方は天候不順なことが多く、高い確率で雨が降る。また季節外れの雪や雹(ひょう)が降ったことも過去にはあったが、今回の「第47回 ADAC TOTAL24h-Rennen」の決勝は一度も天候が崩れることなく、終始晴天、ドライ路面でレースが行なわれた。
スタートはメンバーの中で「燃費のいい走り」をしている井口卓人が担当し、その後、カルロ・ヴァンダム、ティム・シュリック、そして山内英輝へとバトンを渡すローテーションを組んだ。
チーム作戦
チーム戦略としては、100Lの燃料タンクで走るWRX STIを通常は8ラップで給油というスケジュールを組む。スタートはフォーメーションラップも考えるとプラス1周されるので、燃費がいい井口卓人選手をスタートドライバーにしたという。
決勝レースは22日(土)午後3時30分にスタートが切られ、エントリー158台のマシンがスタートする。スバルWRX STIが戦うSP3Tクラスには8台がエントリーしている。2.0L以下のターボエンジン搭載クラスで、ライバルはアウディRS3やVWゴルフGTI、オペルアストラなどが参戦している。
スバルWRX STIは順調に周回を重ね、トップを脅かされることなく二人目のドライバー、カルロ・ヴァンダムと交代する。こうしたレース運びで順調に周回を重ね、全員が1回目の担当スティントを終えた時点で、すでに2位には2ラップのリードをつけ、首位が不動のものとなっていた。この時の総合順位は43位、狙うは総合でも上のクラスを何台食えるかに興味がいく。
こうした順調なレース展開はその後も続き、天候が安定していることも相まって、着実に総合順位を上げていった。また、各ドライバーが担当する周回数も燃費の良さを活かすように1周多く回るスティントも実施でき、当初の計画がどんどん狙いどおりに消化できていくレースになった。
一方で、レースはコンディションがいい割にはクラッシュするマシンも多く、コースのどこかでイエローコーションとなっている場所が頻繁にあり、60km/hの速度制限となる箇所がいくつもある、という状況が続いた。特にガードレールの補修作業が入るほどのクラッシュもありながら、スバルWRX STIは一度も事故に巻き込まれず、順調に周回できた。
乗り越えるものは見えず
レースを観戦する側にとって、こうした順調なレース運びは単調に見える。24時間なにも問題が起こらず、淡々と周回を消化していくのだ。しかし、出場するチームにとっては、まさに、狙いどおりの、理想の展開ができてるわけで、今回の優勝は、チームにとって、ひときわ感極まるものが多かったはずだ。
前年の優勝はもちろん嬉しかっただろうが、マシンにはトラブルがいくつか出て、また、ライバルマシンが消えていくなど「ラッキー」がいくつか重なって掴むことができた優勝だった。
しかし、今回の優勝は「すべて予定どおり」のチームにとって完全勝利という、同じ優勝でも全員が納得した優勝だったのだ。スタッフは涙を流して喜び、また普段はクールなカルロ選手も燥ぐようにように喜んでいたのが印象的なクラス優勝2連覇だった。
向かうところ敵ナシとなったスバル WRX STIだが、次なる挑戦はどんなものになるのか、楽しみだ。
クラス優勝は通算6度目
スバルのモータースポーツ統括会社であるSTI(スバルテクニカインターナショナル)は、6月22~23日に開催された第47回ニュルブルクリンク24時間レースに市販のWRX STIをベースとしたレーシングマシン「WRX STI NBRチャレンジ2019」で参戦し、排気量2.0L以下のターボ車クラス「SP3Tクラス」で見事優勝を遂げた。
総合でも19位を獲得
「WRX STI NBRチャレンジ2109」(ドライバー:カルロ・ヴァン・ダム/ティム・シュリック/山内英輝/井口卓人)は、SP3Tクラスのポールポジションからスタート。きわめて過酷なコースを走行するなか、序盤からノートラブルでリードを築き、スバルディーラーメカニック8名人を含む整備チームの迅速かつ的確な対応によって完璧なレースを展開。
明け方にベストラップタイムを更新(9分3秒998)するなどドライバー陣も奮闘した。その結果、SUBARU/STI チームは、2008 年の初出場以来、最多周回数の145周(約3763km)を走破し、総合順位19 位、2011 年の初優勝以来6度目、昨年に引き続き2 年連続となるSP3Tクラス優勝を果たした。
「究極の一般公道」や「緑の地獄(グリーンヘル)」とも言われるニュルブルクリンク・サーキット(1周25.95km)における24時間レースでのクラス優勝により、スバル車は水平対向エンジン、シンメトリカルAWDをはじめ、その信頼性や耐久性、高次元のパフォーマンスを改めて実証した。
なお、スバルのオフィシャルウェブサイトの特設ページでは、今回のニュルブルクリンク24時間レースに関する詳細を紹介している。
スバル WRX STI、過去最多の145周で2年連続6度目のクラス優勝…ニュル24時間
スバルテクニカインターナショナル(STI)は、6月20日から23日にかけてドイツで開催された「第46回ニュルブルクリンク24時間レース」に、市販車ベースのレースカー「SUBARU WRX STI NBR CHALLENGE 2019」(88号車)で出場、2年連続、6度目のクラス優勝を果たした。
スバルSTIの参戦は、2008年以来12年目。今年も2.0リットル以下のターボエンジン搭載車クラス「SP3T」に参戦した。
SUBARU WRX STI NBR CHALLENGE 2019(ドライバー:カルロ・ヴァン・ダム/ティム・シュリック/山内英輝/井口卓人)は、SP3Tクラスのポールポジションからスタート。きわめて過酷なコースを走行する中で、序盤からノートラブルでリードを築き、スバルディーラーメカニック8人を含む整備チームの迅速かつ的確な対応によって完璧なレースを展開。明け方にベストラップタイムを更新するなどドライバー陣も奮闘した。
その結果、SUBARU/STIチームは、2008年の初出場以来最多周回数の145周(約3763km)を走破。総合順位19位、2011年の初優勝以来6度目、昨年に引き続き2年連続となるSP3Tクラス優勝を果たした。
ニュルブルクリンク24時間:スバルWRX STIが総合19位に食い込む快走をみせる
2019年のADAC・トタル24時間レース=ニュルブルクリンク24時間レースは6月22~23日、ドイツのニュルブルクリンクで決勝レースが行われ、SP3Tクラスに参戦したカルロ・バンダム/ティム・シュリック/山内英輝/井口卓人組88号車スバルWRX STIは、今季もクラス優勝を飾ったほか、総合でも19位に食い込む素晴らしい走りをみせた。
2007年からニュルブルクリンクに挑戦しているSTIは、今季さまざまな改良をWRX STIに施し、2019年のレースに挑んだ。ドライバーラインアップは昨年から変わらずバンダム/シュリック/山内/井口という信頼をおく4人がステアリングを握った。
6月20~21日の2回の予選では、カップカーやGT4カーらに続き、9分01秒872というタイムで、予選総合53番手に食い込んだ。ドライバーたちは目標としていた9分切りができず悔しがったが、それでもSP3Tのパフォーマンスとしては非常に高い。
迎えた決勝では、序盤にシュリックがSP9のアウディにラップされる際にヒットされダートを走ってしまうものの、それ以外のアクシデントや大きなトラブルはなし。今季のWRX STIは、速さだけでなく安定感も抜群。ドライバーたちもきっちりと仕事をこなし、アクシデントが多発した今季のニュルで、気づけば総合19位という素晴らしい結果を残すことになった。当然SP3Tは優勝だ。
「ドライバーもノーミスでしたね。今年の(荒れた)展開をみていると、ラッキーだったと思います。みんなが役割を果たして、うまくいったんでしょうね」と辰己英治総監督は振り返った。
ちなみに、カップカー等に次ぐ順位と言える総合順位について聞くと、「意外といくんですね」と笑う。ただ、辰巳総監督によれば、もっと上がってもいいものなのだとか。それはスタート時のカラクリだ。
ニュルブルクリンク24時間は158台ものマシンが予選を通過しており、スタート時は安全性を配慮し3つのグループに分けられる。WRX STIは、排気量からグループ3の前列からスタートすることになるが、本来の予選順位では下にいた、グループ2のマシンたちが前にいるため、彼らをまず抜かなければいけないのだ。さらにWRX STIは、グループ1のマシンたちから比べると、6分もの“ハンデ”を背負っているという。
「ウチはスタートでグループ1から6分遅れているんですよね。我々の間にグループ2がいて、ほとんどがウチより遅いんですが、それを抜くのに時間がかかっているんですね。それがなかったらもう少しいくかもしれませんね」と辰己総監督。
この総合順位も含め、今季のスバルの快走は、全国のスバルディーラーから参加したメカニックたちを含め、全員がきっちりと仕事をこなし、大いに賞賛されるべきものといえる。ニュルではスバルファンも増えつつあり、今季はさらに鮮烈な印象を残すことになった。
SUBARU WRX STIの改良点は? ニュルブルクリンク24時間レースの勝利を誓う
6度目のクラス優勝なるか
SUBARUのモータースポーツ統括会社「スバルテクニカインターナショナル」は、2019年6月20日から23日にかけてドイツ・ラインラント プファルツ州アイフェル地方にあるニュルブルクリンクサーキットで開催の第47回ニュルブルクリンク24時間レースに参戦。このチャレンジは、2008年以来12年目となり、2019年度は昨年に引き続きWRX STIをベースとする車両で参戦する。
「SUBARU WRX STI NBR CHALLENGE 2019」は、2.0リットル以下のターボエンジン搭載車クラスである「SP3T」に参戦。同クラスで6度目の優勝を目指す。全長25km、高低差300mと起伏が激しく、天候も刻々と変化する世界一過酷と言われるコースに挑戦するWRX STI NBR CHALLENGE。
水平対向エンジンとシンメトリカルAWDの基本レイアウトを活かし、「速く」かつ「意のままに操る」を実践しているWRXには、昨年仕様からさらに5つの主だった改良が加えられている。
【SUBARU WRX STI NBR CHALLENGE 2019主な改良箇所】・フリクション軽減によるエンジン性能の向上・ローギヤ化とステップ比の見直し・軽量クラッチの採用によるパワートレイン性能の向上・ジオメトリの最適化よる旋回性能の向上・エアロパーツのアップデート、鮫肌塗装の採用により空力を向上
なお、チーム総監督はSTIの辰己英治が担当。ドライバーは、カルロ・ヴァン・ダム(オランダ)、ティム・シュリック(ドイツ)、山内英輝(日本)、井口卓人(日本)の布陣で挑む。また今年も全国のSUBARU販売店から選抜された8名のメカニックがチームに参加し、レースをサポート。販売店メカニックの海外自動車レースへの参加は、技術力向上によって我々カーライフの「安心と愉しさ」を届けることを目的に1990年より継続している。
これまでに369名 (~2018年)のメカニックがサファリラリー、WRC(世界ラリー選手権)、ニュルブルクリンク24時間レースで活躍してきた。チームの栄冠、そして彼らの活躍に期待しよう。
ニュルブルクリンク24時間:スバルWRX STIの塗装がマットになった理由は。ルーフにも工夫あり
2019年のニュルブルクリンク24時間レースは、決勝のスタートが切られナイトセッションに突入した。今季もニュルへの挑戦を続けているSP3Tクラスのカルロ・バンダム/ティム・シュリック/山内英輝/井口卓人組スバルWRX STIだが、今季はカラーリングがマットな塗装になっているのにお気づきだろうか。そこには、ボディ表面を使った工夫がなされているのだという。
ニュル24時間に飽くなき挑戦を続けるスバルWRX STIは、内面ではローギヤ化、シフトショック抑制に向けたステップ比調整、パドルシフトショック改善とエンジン耐久性の両立、防水ECUの採用、パワーステ配管の見直し、マフラーとホイールの仕様変更など、さまざまな改良を受けている。
一方で、外面で目立つのがカラーリングだ。これまでスバルWRX STIは、スバルブルーとブラック、そしてSTIのピンクのカラーリングが施されてきたが、今季はその3色は同じながら、ボディにはマットなカラーリングが施された。
これは通称“サメ肌塗装”と呼ばれるもので、辰己総監督によれば空気抵抗低減を図るためのもので、c/d値が向上しているのだという。そして、今回さらに興味深いのが、ルーフ前側に設けられた薄いスリット状のものだ。
このスリットは、空気抵抗が大きいこの場所に貼ることで、空気の剥離を防ぎ、リヤウイングに流れる空気を増やすものだという。風洞ではしっかりと効果が出ているとのこと。フロントガラスの上面は空気が強くあたり、負圧ができる。これが空気抵抗になるのだが、このスリットを設けることで負圧が減るというのだ。
「もちろんこれだけではありませんし、コーナリングスピードも上げていますが、エンジンがほぼ変わらない状況のなかで、最高速は今年の方が出ている」という。
辰巳総監督によれば「遊び半分で始めた」というが、当初はベルクロを貼ってみたりと試行錯誤。最終的に、塗装の保護などに使うヘリテープという素材を採用。このスリットでc/d値が変わらないが、ダウンフォースは増えているそう。
今季、フェラーリがF1でマットなカラーリングを採用したりしているが、理由としては軽量化を挙げている。ただ実際は、マットなものにすることで空気抵抗を減らすような効果もあるのかもしれない。ひょっとすると、これらのサメ肌塗装やスリットは、今後市販車にも活かされるときが来るかも……!?
【予選トップ】ニュルブルクリンク24時間レース スバルWRX STIの挑戦
ニュルブルクリンク24時間レース2019
2019年のニュルブルクリンク24時間レース(ADAC TOTAL24時間)の予選が終了した。6月20日に行なわれた予選1回目は現地時間の20時30分から23時30分までの3時間行なわれ、SP3TクラスにエントリーしているスバルWRX STIはクラストップで1回目予選を終えている。21日は2回目の予選が行なわれ、予定どおりSP3Tクラストップを獲得した。予選を終えた直後に、各選手へショートインタビューをしたのでお伝えしよう。
狙い通りの予選
予選のトップバッターは山内英輝選手。チームトップの9分01秒872を記録
ーー山内英輝
「ソフトタイヤを履いてタイムアタックに行きましたが、目標の9分切りができなくて悔しいです。去年のセクタータイムとほぼ同じタイムで、ギリギリ上回れるかというところまで攻めていったんですが、切れなかったです。路面温度は予想外に上昇していて44度あって、ソフトだと少しきつかったかな。タイヤの動きが大きくて路面温度が上がるとアンダーが強かったですね。でもクルマのコンディションはすごくよくなっているので、また、井口選手は燃費がいいので、データを見て勉強して、決勝ではスティントを減らせるくらいできるように頑張ります」
チームは路面温度の高さからミディアムタイプのタイヤへ変更し、カルロ・ヴァン・ダム選手がタイムアタックを行なった。
ーーカルロ
「19年のマシンはエンジンとトランスミッションとセンターデフを統合制御したので、高速でのスタビリティがよくなって、ハイスピードのハンドリングがいいね。ミッションはアップシフトもダウンシフトも、とてもスムースでギヤレシオも変えて、去年よりコーナースピードが上がっているように感じるね。トータルでマシンへの信頼性が高くなったと思うけど2年前のレースではとても暑いコンディションでパワーがなくなり、グリップも無くなっているから、その対策としてエンジンのクーリングや車内も改善されている。
今日の午後の予選はコースが混雑していて、自分のアタックタイムは9分6秒だったんだ。遅いクルマをカルーセルのアウトから追い抜いているから2、3秒はロスしていたよ。昨日の夜はウェットだったしね。それと、QFレースの時(2019年5月)に辰己さんに「クルマが動くのは好きじゃないから」という相談はしたけど、どうなったのかはまだよくわらないな。ただ、クルマは動かないほうがいい」
カルロ選手が言う「クルマが動く」というのはムービングと表現しており、「しなり」のような微妙な変化が起きているのは好きではない、という意味ではないだろうか。
ーー井口卓人
「僕は、カルロが走ったタイヤでそのままアタックしましたが、9分8秒くらいでした。気温の高い日曜日の想定で走って、10秒が切れるのでこのタイヤでいけそうな手応えはつかめました。クルマのレベルがあがっているので、いつでも9分台前半で走れるから、そこでタイムも順位も稼げると思います。ただ、ちょっとタイヤの動きが大きいので、そこを改善できればもっと走れると思います。たまたま、僕のデータは燃費がいいみたいなので、担当スティントを8ラップから9ラップに目標設定して走ります。みんなでスティントのラップ数が伸びれば、トータルではもの凄いことになるとおもうので、頑張って挑戦します」
ECUの統合制御が燃費への好影響もあり、チームはスティントの計算、トータル周回数も昨年を大きく上回る狙いで挑戦していくようだ。
ーーティム・シュリック
「私は予選は走りませんでした。義務周回数は昨日クリアしているので、山内選手が良いタイムを出しているので安心です。予選は30分ほど残っていますが、マシンは温存ですね。今年のマシンはラップタイムもよくなったし、燃費もよくなったので9ラップに挑戦したいですね。このチームはドライバースピリットもいいし、とても楽しいメンバーが揃っていて、チームの雰囲気がいいです。日本人と欧州人の違いを観察して、日本人の気遣いはとても気持ちがいいです。このチームで走れることが嬉しいですね。
今年はクラス優勝は当たり前で、楽に勝てるような展開に持っていきたいですね。レース中に仮眠が取れるくらいクルマの完成度が高いのでね。特に違いを感じているのはニュータイヤに交換したインラップでも100%のタイムアタックで走れるようになりました。それはデフとレスポンスがよくなったからだと思います」
スバルWRX STIは総合53位、クラストップの予選結果だった。SP3Tクラスの予選2位はアウディRS3に19秒もの大差をつけているので、もはや敵なしだ。またSP8クラスは4.0Lから6.25LまでのNAエンジン搭載クラスで、RC FやアディR8 LMS BMW M3 GTRなどハイパワーマシンのクラスだが、そこを含んでも2位にポジションしている。
明日の決勝は、現地時間午後3時30分にスタート。今年のニュル24時間はWRX STIにとってどんなレースになるのか楽しみだ。
【異変】ニュルブルクリンク24時間レースの現場で SUBARU STI
ニュルブルクリンク24時間レースに挑戦を続けるSUBARU STIは、2019年もWRX STIをベースにした車両でSP3Tクラスにエントリーしている。ところが今年は例年にはない、ちょっとした異変が起きているのだ。
SUBARUが見つめるニュル24h
異変とは、SUBARUの役員がこのニュルブルクリンクに応援に駆けつけてきていることだ。「それが何か?」と特に不思議に思わないかもしれないが、ニュル24hへの挑戦は、これまでスバルの子会社であるスバル テクニカ インターナショナル(STI)がその活動を行なってきた。だから、親会社のエンジニアが協力することはあっても、役員をあまり見かけることはなかった。
ドイツ・ニュルブルクリンクの会場にはSUBARUの大拔専務取締役、藤貫執行役員の二人が顔を見せていた。実はこのお二人は、先月のスーパーGT第3戦鈴鹿300kmレースに参戦しているSUBARU BRZ GT300の応援にも駆けつけていたのだ。
先代のSTI平川社長がSUBARUの役員を兼務していたことを除けば、SUBARUの役員がSTIのレース現場へ駆けつけること自体が異例のことでもあるのだ。
その意味するところは何か?
STIの狙い
STIが行なうモータースポーツ活動の狙いは、市販車をベースにしたレースマシンを製作し、その過程から得られる数え切れないほどのデータと知見、そして、人材育成をするというのが大きな狙いになる。
ニュル24hへの挑戦は2008年から行なわれ、今回で12回目の挑戦になるが、今年はさらにSUBARUに対する信頼回復という狙いも持っての挑戦になる。先代STI社長の平川良夫さんからは、ユーザーとの絆を深めるためにも、技術、人材育成、人との繋がりが大切であると話していたことが継続されているわけだ。
一方で、SUBARUの役員が来場するという意味は、STIの活動から得られる多くの事柄をSUBARUへ取り込もうとしている、と考えるのが普通ではないだろうか。わざわざドイツまで出張してきて、その現場を見ているわけで、明確な目的がなければこうしたことはあり得ないはずだ。
これからのSUBARU
明確な目的とは?
視点を変えて、自動車産業は今、100年に一度の変革期が訪れており、クルマを製造してユーザーへ販売するだけでは企業として生き残れない、と考えているのが世界中のカーメーカーだ。ではどう変わる必要があるのか?
ダイムラーが言い出した言葉、「CASE」で表現されるように、コネクテッドと自動運転と電動化、そしてサービス/シェアリングといった要素で、新たなビジネスを創出する必要があるというのはもはや、明確な事実だと言えるだろう。
カーメーカーにとってそうしたCASEへの対応で新たなビジネスモデルを創出することも重要課題であり、その一方で、ユーザーとは直接関係しないが、環境対応として欧州のCAFE(企業平均燃費)への対応、北米のZEV対応、中国のNEV政策への対応も行わなければならない。そしてカーメーカーにとって最も大切なことである、「ユーザーに自社のクルマを選んでもらう」という、所有欲を刺激する魅力あるクルマづくりができるか?という、大きくわけて3つのフェーズに対応していかなければならない、ということだ。
つまり、CASEによる新たなビジネスモデルの創出、2つ目が環境対応、3つ目が欲しいと思わせる商品(クルマ)づくりという3要素への対応がマストであるということだ。
クルマはいつでもどこでも自由に移動できる快適なものであったが、数年先には、電動化やコネクテッドなどの高度化する技術によって、所有しなくても自由に簡単に移動する手段へとクルマが変わると言われている。そうなれば、ユーザーは高額な支払いまでしてクルマを購入する意味がなくなり、これまでの製造・販売の経済構造が崩れる時が来るというわけだ。
そこは十分危機感をもっているカーメーカーはいかに、所有してもらうか?それは「他にはない魅力あるもの」でなければならない。そのためには・・・
こうしたさまざまな状況から、カーメーカーはプレミアムブランド化を目指したり、ブランド力を高めたり、そして他にはないサービスを取り込んだりと多角的に、そして俯瞰して思考し、ものづくりへ取り組んでいるわけだ。
話がだいぶそれたが、SUBARUの役員は、特殊なものづくりのノウハウを豊富に持ち、人材育成を続けてきたSTIの存在、コンプリートカーの存在、そしてスーパーGTやニュル24hでの優勝とか、連覇とかいったファンの心を鷲掴みにできるパワーなど、スバルファンがたくさんいることを目撃したわけだ。
こうした現状をSUBARUの役員は放っておくはずがなく、子会社STIと一緒にこれからの未来のSUBARUを築く下準備に取り掛かったと見ていいだろう。まずは、モータースポーツから市販車への技術フィードバックとファンを掴むというハードとソフトが揃うモータースポーツへの取り組みをしていくための「下見」ではないだろうか。
所有欲を満たす魅力ある商品づくりには、モータースポーツで鍛えられ、その技術や人が生産車へフィードバックされる。そこには信頼性の高い、魅力たっぷりの市販車が一般ユーザーの手元に届けられるといったストーリーは必須なのである。<文:高橋 明/Akira Takahashi>
【余韻】ニュルブルクリンク24時間レースでAWDはドライでも速いことが証明できたby辰己英治
ニュルブルクリンク24時間レース2019
スバル STIの先端技術 決定版 vol.40
スバルWRX STIのニュルブルクリンク24時間レース、完全優勝はまだ余韻が残っている。レースが終わった翌日、アデナウにあるスバルのファクトリーを訪ねた。そこで辰己総監督から出てきた第一声は「終わってしまうと、どうやって勝ったか思い出せないですね」という開放感、脱力感たっぷりの一言だった。
今は何も覚えていない
もしトラブルが出たり、アクシデントが起きていたら、「あーすれば良かったとか、こうすれば良かったという思いが残って、細かいことまではっきり覚えているでしょうね」と辰己総監督は話す。
ーー辰己
「実際にレースをやっているときは、結構緊迫した場面があって、いろんなことが頭の中を駆け巡るんですけど、それが大事に至ってないからこういう完全勝利という結果になったわけですからね。それでも安心して見ていた時間は全くなかったですね」
「ティムが無線でGT3に当てられた!というのを聞いたとき「あ!終わったな」って思ったんですね、モニターには草むらを走るシーンが写し出されて、「あ~これうちのクルマだ」って。でもそのあと、ティムから大丈夫なのか?無線で聞いてくるんですけど、電波の調子が悪くて実は詳細なことがつかめていなかったんですね。でもティムは元気に走り出したので「あ~良かった」って思いましたよ。あとでピットに戻ってきて見たら、ボディにはちょっと傷がついたくらいでホイールも傷があるくらいだったので、本当についてました」
ーー編集
「どれくらいの強さで接触したのかわかりませんけど、レーシングカーは接触すると大抵は壊れますよね?ましてコース外に出るほどなら」
ーー辰己
「まぁ、本当に軽い接触だったのかもしれませんけど、相手はパーツが飛んでしまうほどの接触ですから、それなりに衝撃はあったと思います。だけど、WRXの足回りの部品は、ロアアームやクロスメンバー、ステアリングギヤボックス、タイロッドなど、どれも市販製品のままなんですよ。それが意外と頑丈なんでしょうね。そこも良かったんだと思います」
ーー編集
心地よい疲労感と達成感の中、少しずつ思い出させてしまっているインタビュー・・・
「レースは順調そのものでしたが、心配になる要素とは、どんなものですか?例えば、デブリやピックアップといったアンラッキーなものでしょうか?」
ーー辰己
「ピックアップもね、影響をうけないように工夫しているんですよ。それはQFレースからこの本番までの間に変えているんです。というのは、どうしてもピックアップはあるので、ゴム片がついたら飛ばしてしまおうという対策です。そのために、QFからはエアロでダウンフォースを強くして、タイヤのエアもほんの少し上げています。そうすると路面との摩擦が増えるので、くっついたゴム片が剥がれやすくなるんですね。だから、空気圧も0.05以下のレベルでピットインごとに変更していました」
パワートレーンへの高い信頼性
ーー編集
「エンジンへの心配はなかったのですか?」
ーー辰己
「いま340psの出力ですけど、この出力であれば信頼性は高いことがわかっていました。テストで24時間使ったエンジンをどこまで使えるのか試しているんです。すると48時間もっちゃうことも分かっていたので、その耐久性のある仕様で仕上げてあるので、そこは心配なかったですね。あとは補機類をきちんとやれば問題ないです。エキゾーストは去年苦労したので、今年は全面的にフジツボさんの技術にお願いして、やってもらいました。音量も含め完璧でしたね。バンテージの巻き方一つでも亀裂が入ったり、溶接技術も重要だし、そこはさすがでした」
ーー編集
「ミッションはシーケンシャルですが、いかがでしたか?」
ーー辰己
「ミッションは全体にローギヤード化しました。トップスピードが落ちるほどではないレベルで。以前は最大トルクが出る付近を中心にギヤ比を決めていたのですが、どうもパワーで走った方が良さそうだということがわかって、少しエンジンを高回転まで回すように変更したんです。そのための変更ですね。結果的には3、4速で走る登坂路が走りやすいとドライバーは言ってますから」
GT4より速い!
ーー編集
「それとAWDの制御ですよね、ポイントになるのは?」
ーー辰己
「そうですね、去年雨の中、ごぼう抜きをしたから「雨はAWDだから速い」という印象になって、ドライは遅いという人もいるんですよ。そんなことは絶対になくて、ちゃんとシャシーを作ればAWDはドライでも速いんです。それが、今回、一切雨がなく、完全ドライのレースでしたから、それが証明できてよかったです」
ーー編集
「GT4よりも速いタイムでしたしね」
ーー辰己
「スポーツカーをベースにしているレースカーのGT4にコーナリングで負けていないです。トップスピードがうちは全然遅いのでラップタイムでは厳しいですけど、24時間走れば、GT4勢より上位になりましたからね、気分いいです。シャシーをしっかり作ることと、いろんな工夫したことで勝てる力をつけたと思うので、ある程度のレベルに来たと思います」
ーー編集
「いろんな工夫があったと思いますが、なにか一つ教えていただけませんか?
ーー辰己
「例えばホイールですね。これまでマグネシウム製を使っていたのですが、今年はアルミにしました。1本あたりの重量は数百グラム重くなるんですが、それよりも重要なのは剛性です。これまで硬ければ硬いほどいいと思ってました。ですから、ホイールのディスク面と裏側では剛性が異なり、なかなかやっかいでしたけど、高剛性だけではダメでなんだということに気づき始めたことがありますね。つまり、しなやかさもある程度必要ではないかということです」
そこまでいくと想像でしかわからないが、しなりを利用したグリップということだと想像する。またエンジンにしても、ミッション、LSD、などのパワートレーンは全て耐久性も許容範囲も手中に収め、シャシー、ボディ剛性、サスペンション、そしてタイヤ&ホイールと空力性能で操安性能を作り出し、トータルバランスを整えて24時間に挑んだことがよくわかる。細いことの積み重ねにより、多くのデータと知見を得、それらがレースを支えたということだろう。
ーー編集
「ここまで完勝すると次に何に挑戦するのか気になりますが、何かプランはありますか?」
ーー辰己
「いや、今は、何もないです。まだ、今年のレースはどうやって勝ったのか思い出せないくらい心地よい疲労感を味わっているので、日本に帰ってじっくりマシンを眺めていると、また何か思いつくと思います。そこからあらたな挑戦を考えます(笑)」
Posted at 2019/06/25 21:47:42 | |
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富士重工 | 日記