軽より小さな超個性派!? 儚く消えたスバル R1の上質な魅力 【偉大な生産終了車】
毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はスバル R1(2005-2010)をご紹介します。
文:伊達軍曹/写真:ベストカー
■スバル360を彷彿とさせる“スーパースモールカー”
ボディサイズをあえて軽自動車規格以下に抑え、名車「スバル360」へのオマージュともいえるステキな造形を内外装に採用した、あくまでデザイン・オリエンテッドな2+2の異色軽自動車。
それが、2005年から2010年まで販売された「スバル R1」 です。
大人2人が快適に乗れるワンルーム感覚のキャビンは、時にはクーペ、時には2+2シーターとして多彩に使いこなせるユーティリティと、軽自動車ならではの省資源性・軽量化とを実現
デビュー当時の広告キャッチフレーズは「Super(Small)Car」で、ビジュアルイメージには昆虫のてんとう虫も使用。
まさに「てんとう虫」の愛称で親しまれたスバル360(1958~1970年)を知る熟年層にもアピールする「スペシャル感たっぷりの軽自動車」だったわけです。
軽自動車のエンジンには直列3気筒が採用されるのが一般的ですが、当時のスバルは「軽自動車にも4気筒を!」という姿勢でやっていため、R1のエンジンも658ccの直列4気筒です。
そしてサスペンションも、ほとんどの軽自動車が車軸懸架式(リジットアスクル式=左右が1本の軸でつながっているタイプ)であるのに対し、スバルのそれはストラット式の四輪独立懸架でした。
フロントからルーフを経てリヤへと流れる「ワンモーションフォルム」を基本に、均整のとれたプロポーション、装飾を最小限にとどめ「塊感」を活かしたデザインを目指した
でもそういった機構類より、R1で特筆すべきは「デザイン」でしょう。
往年のスバル360あるいはフィアット500などを彷彿とさせるタマゴ型のボディデザインは、好き嫌いこそ分かれるかもしれませんが、それなり以上の審美眼を持っている多くの国民を唸らせました。
そしてデザインだけでなく、ボディはドアの開閉音すら重厚なほどの剛性を誇り、インテリアの質感も「これ、本当に軽自動車?」と感じてしまうほど高いものだったのです。
当初は最高出力54psの自然吸気エンジンのみというラインナップでしたが、2005年11月には最高出力64psのスーパーチャージャー付きDOHCエンジンも追加。
しかしR1の売れ行きが大幅に好転することはなく、2010年4月、スバルR1は一部のファンから惜しまれながら販売終了となりました。
■現在も異例の高値で取引される1台 ではなぜ1代限りとなったのか?
スバルR1が1代限りで生産終了となった理由。それはさまざまあるでしょうが、大きくは以下の2つだと思われます。
ひとつは、「おしゃれ軽自動車を売るのはやっぱり難しい」ということです。
R1という車は、細部のデザインうんぬんではなく「本質」としておしゃれな車でした。インパクトのある造形とするため、あえて軽自動車規格の枠をフルには使わなかったその姿勢。
万人受けするデザインはあえて捨て、「わかる人にはわかる」とでも言いたげな前衛的デザインを、勇気をもって採用したこと。
それらはすべておしゃれの基本である「やせ我慢の精神」に基づくものであり、どこか気高さを感じるサムライの精神でもあります。
インテリアには質感の異なる赤と黒のツートンカラーを採用。メーター部のレイアウトは大小3つのメーターを立体的に配置し高い視認性とスポーティさを両立させた。フロントシートには後突時のむち打ち障害の低減性能を考慮したシートを採用している
しかし実際にお金を出して軽自動車を買うユーザーとしては、そのあたりは「どうでもいいこと」でしかありません。
「そんなことより車内をもっと広く、もっと高くしてくれませんかね?」というのが正直な消費者心理というものでしょう。
もちろん、車に「粋」や「おしゃれ」を求める消費者もたくさんいます。しかしそういった消費者は別名「車好き」とも呼ばれていますので、そういった人はあまり軽自動車を買いません。
それゆえ「本質的な意味でのおしゃれ軽自動車」という挑戦はたいていの場合、失敗で終わるのです。
リアシートを格納させた状態でラゲッジデッキとして使用でき、助手席を前に倒すことで、ゴルフバッグやスオーボードも搭載可能。またラゲッジフロア下いっぱいに、深さ20cmのサブトランクを用意し、ユーティリティ性を高めた
そしてもうひとつの理由は、酷な言い方になりますが「車としてのデキも決して最高ではなかった」ということでしょう。
もちろんスバルR1は、「ちょっとこだわりすぎじゃないですか?」とおせっかいを焼きたくなるメーカーであるスバルが作ったものですから、悪い車ではありません。特に前述のウルトラ高剛性ボディなどには素晴らしいものがあります。
しかし走行中は正直「突き上げ感」のようなものをしばしば感じますし、アクセルペダルを踏み込むとガーガーうるさくなるエンジンや、ほぼ常にゴーゴーと煩わしいロードノイズなどは、R1のステキな世界観に浸ることを阻害する、ちょっと残念な要因でした。
とはいえこのデザインと、いかにもコストがかかっている作り込みにホレ込んでいる人は多く、その気持もよくわかるつもりです。
そして実際、走行距離短めの中古車は今なお車両価格100万円以上という、この世代の軽自動車としては異例のプライスで流通しています。
■スバル R1 主要諸元
・全長×全幅×全高:3285mm×1475mm×1510mm
・ホイールベース:2195mm
・車重:800kg
・エンジン:直列4気筒DOHC、658cc
・最高出力:54ps/6400rpm
・最大トルク:6.4kgm/4400rpm
・燃費:24.0km/L(10・15モード)
・価格:126万円(2005年式 R/CVT/FF)
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いまや小排気量エンジンの主流となっている3気筒エンジン。1気筒あたりの排気量のバランスが良いことで採用されているわけだが、やはり多気筒エンジンの振動の少なさや滑らかなフィーリングも捨てがたいところがある。
残念ながら現行軽自動車では4気筒エンジンを搭載したモデルは消滅してしまったが、過去に存在した4気筒エンジンを搭載したモデルを振り返ってみよう。
1)スバル(EN07エンジン)
長らくスバル自社製の心臓部として活躍したEN07型エンジン。1990年の軽自動車規格が改正され、排気量が660ccになったタイミングでレックスに搭載されたこのエンジンは、スーパーチャージャーと組み合わされたりDOHC化されたりと幅広いバリエーションを持っている。
搭載車種はレックスを筆頭にサンバー、ヴィヴィオ、プレオ、R1、R2、ステラとスバル製軽自動車すべてをカバーしていたが、中でも最強のスペックを誇ったのが、ヴィヴィオRX-RのE型以降に搭載された64馬力/10.8kgf-mを発生するDOHCスーパーチャージャーモデルだった。
なんと1気筒あたり5バルブという贅沢なエンジンも
2)三菱(4A30エンジン)
三菱の軽自動車用4気筒エンジンとしてご紹介するのは、1993年のミニカなどに初めて搭載された4A30型エンジンだ。通常のミニカやブラボー、パジェロミニなどに搭載されていたエンジンはSOHCのNAエンジンだったのだが、注目すべきはターボモデルだ。
なんと軽自動車にもかかわらず、1気筒当たり5バルブを擁する20バルブのDOHCインタークーラー付きツインスクロールターボ(長い)を採用してきたのである。これはもちろん世界最小の20バルブエンジンである。といってもスペックはずば抜けたものではなく、64馬力/9.9kgf-m(ミニカダンガン4の数値)だったのだが。
3)ダイハツ(JBエンジン)
最後にご紹介するのはダイハツが生産していた4気筒エンジンのJB型だ。1994年登場と最後発だからかスバルや三菱のものとは異なり、早い段階でタイミングチェーン方式を採用していたというのが最大の差異と言えるだろう。
スペックも先代コペンに搭載されたツインスクロールターボのものでは64馬力/11.2kgf-mとトップクラスの出力を持っており、モータースポーツベース車としてリリースされたストーリアX4に搭載された713ccエンジンもJB型エンジンがベースとなっているように、幅広いチューニングに対応する点も人気となっている。
一度は保有したいクルマの一台ではあるけど、今後増車する機会は来るだろうか?
低価格とまでは言わないけどR1eを市販車として供給出来ていたらもう少し違った未来が…無いか(汗)
Posted at 2019/06/26 21:45:25 | |
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富士重工 | 日記