
平成12年にわたしのもとにやってきて、以来8万7000キロを超す走行距離を刻んでくれたTOYOTAプログレNC300 IRバージョンの機嫌が、ひどく悪い。
その挙句、駐車場にバックで入る際、コンクリート壁に左リアのバンパーをこすって白い擦り傷をつくったかと思うと、朝のエンジン始動で、イグニッションキーをひねった瞬間、ザザザッと不快なハミングをしてから、やっと目覚める始末。
*どこへ行くのも一緒だったプログレ。難転(=南天)の寺として有名な西秩父、宝円寺にて。和の景色がよく似合う。
*プログレ反逆の痕?
どうやら、御多分に漏れず、クルマを手放そうかな、などとオーナーの心離れがはじまると、それを敏感に感じとって、愚図りはじめたにちがいない。身内のひとりが、にわかに海外へ転勤することになり、ブラックのLEXUS IS250 バージョンLを処分したいのだが、できれば私に引き取ってもらえたら嬉しい、と申し入れてきた。もちろん、グラリとこころが揺らいだ。車幅は90センチほど広くなっているものの、基本的にはプログレの発展型だ。セルシオからマジェスタ、そしてプログレとTOYOTAのFRサルーンに親しんできた。だから延長線上にある選択には違いない。
*LEXUS IS250(ガリバー店頭)
ふた回りほど若いクルマ仲間のジャーナリストに、この選択はどうだ?と訊いて見た。
「それはいい。プログレのピンと胸を張った、アップライトなプロポーションは、もう古い。空気抵抗が大きくて、燃費に影響しすぎる。その点、IS250のデザインは、セダンでありながら、いかにも地を這った感じがあって、時代の新しさがある」
そうかなあ。ぼくは最近の車のデザイン傾向が右へ倣えで、とくにフロントマスクが、いつも怒ったような顔をしているのが、気に入らない……。わたしなりの反論だった。
「いや、いや。ぼくらは新しいクリエーターたちのものを、実際に使っていかないと、その新しさの正体を見抜けなくなりますよ。プログレとか、プリウスには、萎れた感じがしてならないですよ」
萎れた感じ。それは新しいテーマだな。その観点でわがプログレを見始めた途端に、プログレの機嫌が悪くなって、ついにはバンパーに白い傷痕をマークしたわけである。
練馬・谷原のガスタンクのそばに、行きつけの給油所がある。そこに古い付き合いのH所長がいて、なにかと車の面倒を見てもらってきた。歳末、相談に立ち寄ったところ、年明けに時間をとるから、それまでにプログレ用のマイカカラーの同色タッチペン、下地塗り用のパウダーなどをカー用品店で買っておいてほしい、というのだ。なにやら秘策があるらしい。楽しみに、約束の1月2日の午後を待った。
1月2日。朝から箱根駅伝をTV観戦。早稲田のエース、大迫が9人抜きを演じながら、区間賞に8秒足りなかったのを見届けたところで、近所の八幡神社に初詣で。やっと午後を迎えた。そろそろ、H所長の手が空いた頃合いだ。
H所長の提案はこうだった。バンパーの傷は応急処置として、タッチペンで補正してみよう。プログレ全体の萎れ感は「クリスタルキーパー」というボディーコーティングで生き返らせましょう。さらにヘッドイトのカバーグラスを磨きましょう。それで相当にフレッシュアップされますよ、と。
こうして、洗車、オイル交換を済ませたところで、バンパー傷の補修、そして『クリスタルキーパー』に取り組んだ。控室で待機する間、FBで「近況」を報告する。
「行きつけのGSで給油&洗車&メンテナンス。オイルが真っ黒。御免な、わがプログレよ」と打ち込んだつもりが、「わがプリウスよ」と誤記してしまった。これは、いかん。早速「いいね!」を寄せていただいたFBの仲間にお詫びをしなくては。とくに「みんカラ」仲間である元木久憲さんからは「プリウスは、シビアコンディションになりやすいので……」とコメントまで頂戴しているのに。
2時間が経って……。目の前の登場したプログレは、はじめて手元に届けられた時のプログレかと見紛うあでやかな姿態を取り戻していた。バンパーの傷跡も、ほとんど気にならない程度に修復されている。
「うん。あとはエンジン、足回りのメンテナンスをすれば……」
H所長も一仕事した満足感からだろう、いい笑顔でプログレを送り出してくれた。で、その料金は? クリスタルキーパーだけでも¥15,800。結構な出費だが、12年も連れ添ってくれているプログレへのお年玉と思えばいい。
プログレを目白通りに持ち出した。すぐに環八の、かつてのバイパスだった路線が交差する。ちょっと走ってみるか。
右へ折れると、練馬中央陸橋から荻窪方向への地下道が待っていた。交通量はまばらである。ちょっと失礼して加速してみた。お、いいね! プログレの機嫌は治ったらしい。IS250には悪いが、わたしのプログレを手放す気は、あっさり霧散してしまった。
シートだって、本革仕様のISより、このプログレのジャカード織物仕様の方がお気に入りだったじゃないか。それに……和の風景に似合うのは、プログレを置いてほかにない、と常々いっていた癖に……。プログレの声が聴こえたのである。
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プログレSTORY | 日記
Posted at
2013/01/04 01:05:31