「NOB谷口」の目線で新着Hot-Version Vol.122を視る①
新調したi-Macにも少しは馴染んできた。外付けのDVD再生機である「USB SuperDrive」を本体とつなぎ、恐る恐るDVDのディスクを挿入すると、気持ちよく吸い込んでくれる。と、21.5インチのスクリーン画面いっぱいに、鮮やかな映像が再現される。この瞬間を待っていたんだよ。
その「SuperDrive」の初仕事は、新着のHot-Versionではない。萩の波田教官から送られてきた手造りの『2013 谷口信輝ドライビングスクール with RIO』で、サブタイトル替わりに、波田さんからのメッセージがさりげなく、添えてあった。《局長、ガンさんのDNA受け継いでやっていますよ〜》と。
いきなり、画面の中の谷口君がこちらに向かってお辞儀をしながら、語りかけてくれる。え!? それもわたしに呼びかけているのだ!
「正岡さん、こんにちは。谷口信輝です。先日は中山サーキットでのイベント(4月8日の『ベストモータリング同窓会』)に行けなくて、どうも、すみませんでした」
そのあと、わたしの体調を気遣ってくれ、退院したと聞いて安心したこと、そして次の機会には、ぜひ呼んで欲しい、とまでメッセージしてくれている。
なんという心憎いイントロだ。そして嬉しいったらありゃしない。ありがとう、谷口君。そして波田さん、あなたも憎いお人ですよ。
画面が切り替わって、『NOBUドライビングスクール』が、全く気取らない、日常のやりとりのような雰囲気で始まる。
北広島のスキー場「ユートピア サイオト」の駐車場を使って、谷口君がレーシングドラーバーとしてデビューする前から世話になっているショップのお客さんが、家族連れで参加する(だから、画面には少年や少女たちの熱い眼差しが溢れている)ジムカーナー・イベントの一端だった。
「みんな、クルマをビャーと流して、カウンターを当てて、なんて夢見てるんだろうけど、とにかく自分の支配下にクルマを置いて、コントロールすることをマスターして欲しいね。それはタイヤの力を100とすると、それを4つのタイヤにどう配分していくか、なんだよ。曲げたいと思ったら、まず少し前に荷重をかけて、少し、後ろを浮かせて……」
いやいや、この内容は素晴らしい。ついつい詳述したくなるが、この項は、届いたばかりの「Hot-Version Vol.122」の見所を紹介するんだった。そこで今回は、この号の中で、キャスター谷口信輝がどう見ているのか、つまり「NOBの目線」でトレースしたらどうなるのか。そんな試みを思いついてしまった。いかがなものか。ともかく、やってみましょうか。
まず、パッケージを拝見。
「峠最強伝説」は『ニュルvs.グンサイ』やでェ。「全長28km、コーナー数174、標高差300m。世界一タフなテストコースとして世界の高級スポーツカーメーカーがラップタイム合戦を繰り広げるニュルブルクリンク。そこで鍛え上げられた最新最強モデルをグンサイに持ち込み、我らがTOUGEマシンと競う!」
さすがプロやないか。短く、要領よく、うまいこと紹介するもんや。
持ち込まれたのは、ニュルFF最速ラップ、8分7秒を記録したルノーメガーヌRSと、昨年のグンサイ区間レコードを脅かしたGT-Rが2013モデルに進化してやってきた。
迎え撃つのは、FFの魔王、シーカーFD2 CIVICと雌伏2年、峠の魔王に返り咲いたJ’s S2000の2台。これはちょっと、見逃すわけにはいかんで。
ま、この辺の講釈は織戸学先輩が、うまいことしてくれてるわ。
《ステージ1》が始まった。土屋さんがシーカーCIVICで飛び出した。気温は15度で、コースはドライ。二日前の季節外れの雪が一部融けだし、道を湿らす状態。9000回転まで噴けるKtecエンジンは絶好調。フロントに履いた285タイヤでグイグイ曲げていく。
「割といい感じだよ、クルマ的には」と土屋さんの感想。TOUGE区間タイムは26秒611。この数字、しっかり覚えててよ。
2度目のアタック。今度は長い右コーナーを攻める時のギアの選択を変えたようだ。タイムはコンマ3秒強のアップ。やりますねぇ。
織戸先輩にバトンタッチされる。リアのタイヤも温まり、挙動も穏やかになった。そのインプレッション。
「パンチのあるエンジンだねぇ。頑張れ、頑張れ」
で、タイムは26秒231。
次がNOBの出番。タイムは26秒230。3者のタイムがほとんど差のないこの結果。やっぱり凄いで。
「フロントの回頭性はかなりいいですねぇ。ただ油断すると、ケツが出ます」
これがNOBのインプレッションだった。
ここでニュルブルクリンクからの「刺客」について、解説の欲しいところやが、しっかり、ナレーター氏が聴かせてくれとるわ。
――フォーミュラー・ワンのエンジンサプライヤーであり、楽しいFFホットハッチを提供してくれるルノーは、まさに一昔前のHONDAのような自動車メーカーだ。RSというグレードは、F1からワンメイク車両まで、すべてのレーシング開発の専門チーム「ルノースポール」が仕上げてくれたホットモデル、まさにタイプRなのだ。このメガーヌRSは36.7キロを誇るターボトルクを、FFレイアウトで使い切るため、強靭なボディとともに、トルクステアーや外乱に強いというダブルアクスルストラットをフロントサスペンションに採用、ニュルブルクリンクの厳しい路面で徹、底的に鍛え上げられた。
そしてルノースポールはこの4月、世界でクルマを鍛えるプロジェクトを鈴鹿から開始した。で、ルノージャポンのマーケティング首脳のいうことが憎いねぇ。それも達者な日本語で。
「385万円から、265馬力、360ニュートン・メーターのルノーメガーヌRSをニュルで一番速いクルマを手に届くところにもってきた。それもただタイムをたたき出すだけのクルマをつくっている訳ではないんです。それは、ある一部分のものにしか過ぎなくて、開発の段階のいいところでタイムアタックして、それを出した。それをコミュニケーションをするんですけれども、それはほんの開発のプロセスの中での、わずかな一部分でしかない。そこがすごく重要なポイントだと思いますね」
そこまでいうなら試してやろうじゃないか。ま、ノーマルだから、ここからどこをチューニングすれば楽しく走れるかな、その辺を見てみたい、と前置きして土屋御大がコースに飛び出した。
「ブレーキが甘いなぁ。強く踏まないと、ちょっとこわいな」
乗り出してすぐに意外なコメントが飛び出した。ま、装着タイヤが、シーカーCIVICのそれと違ってダルな仕様。やむを得ないか。タイムは27秒824。
「タイヤがショボい。アンダーが出るのが早い。もうちょっとパワーが欲しい。クルマはしっかりしてるんだけれどなぁ」
バトンタッチされた織戸先輩。攻めずにじっくりチェックする。
「うん、アクセルをオフした時のフロントの入り方はすごくいいねぇ。それにステアリングにFF独特のキックバックが全くないねぇ」
そしてNOBの番がきた。コーナーの立ち上がりで、パワーが出るところだと、フロントのトルクに負けて、トルクアンダーが出る。LSDが欲しいね。それがNOBの率直な感想だった。
区間タイム、27秒779。峠のFF魔王、シーカーCIVICの1秒半落ちである。
その辺を、まず土屋御大がこう斬り捨てる。
「世界のニュルに対してグンサイで仕上げられたクルマは素晴らしいね。タイプRから出て、何年もかけて熟成してきて今のこの速さがある」
それに待ったをかけるのが織戸先輩の役回り。
「この2台をここで比較するのはちょっとね。ルノーさんはノーマルですから。で、ぼくは思ったんですけど、これをベースにしていろいろ、たとえばブーストUPすればパワーも出るし、サスペンションを換える、タイヤも換えると、それだけでも相当、速くなる――そんなフトコロの深さを感じる」
そこでNOBからひと言。
「ぜひどこかが、このルノーをチューニングして持ってきて欲しい。素材としては相当いいとおもう。今は万人向けのセッティングだけど、これをグンサイに合わせたものに仕上げたら、かなり強敵になる」
とここまでが「ニュル対グンサイ」の前菜コース。メインディッシュは次の「J’s Racing 魔王 S2000」と「NISSAN GTR 2013」とのガチンコ対決だろう。はっきり言って、この2台の仕上がりは、どんな言葉を費やしても表現しきれないほど、素晴らしかった。第1ヒートはドロー。そして第2ヒートは……。
次回に詳しくレポートすることを約束しよう。いやぁ、想い出すだけでも、ゾクゾクしてきたで。