今回はミリタリー(軍用)な1台を、お国はドイツから。
一応、VWビートル(タイプ1)の一族である「泳ぐ車」をご紹介。
【Leichter Personenkraftwagen K2s (4x4) Volkswagen Typ 166(128)】(独語)
「軽乗用自動車K2s(4輪駆動)フォルクスワーゲン166型(128型)」です・・・・。
ですよねぇ~w
まあ、これはいわゆる「正式名」でして、一般的にこの車は
「Schwimmwagen」(シュヴィム(シュビム)ワーゲン→泳ぐ車)と呼ばれています、ジュビームワーゲンと記載されることもありますけど。
はい、ナチスドイツ時代の軍用車になります。
まず、元になったのは
こちら、ビートル(タイプ1)・・・ですがビートルにあらず、正式名は「KdF wagen」と申します。そう、ビートル(VWタイプ1)の御先祖様、1938年生まれですが、既にビートル(タイプ1)としての基本型はこの時点で完成していたのです。
KdFって何?、Kraft durch Freude(クラフト・ドゥルヒ・フロイデ)(独語)の略で「喜びを通じて力を」という意味合い、「歓喜力行団」とも呼ばれ、つまり入会すれば労働者の皆様に娯楽を提供しますよ~という団体、まあ、労働者慰問(ただし、ナチス党の管理下で)のための団体でした。
「余は文明の利器たる自家用車を国民一人一人に与えることを約束する!」
という・・・(はい?)、総統閣下の国民車構想で生まれた車でした(紹介済)。990マルクを貯蓄出来るスタンプ帳をもらい、それがいっぱいになったら引き換えに車が手に入るシステムでしたが、実際には満額貯めても車が手に入った人はほんの一部で、結局戦費稼ぎのための詐欺に近かった訳ですが。
いつもすみません総統閣下w
そこから生まれた軍用小型車である
Type 82キューベルワーゲンがありました。
こちらはRR(リヤエンジンリヤドライブ・・・ベースがKdFですから)駆動のジープ的な車両だったのですが・・・こちらもそのうちに。
1940年、当時のドイツ国防軍はポーランド侵攻時の戦訓として、歩兵一個分隊が乗車したまま河川を渡河できる水陸両用車輌が必要であると認識、そこでキューベルワーゲンをベースに
車体をバスタブのような形状にして水密性を与え浮行能力を持たせて、RRレイアウトのままシャフトを介して前輪も駆動させるAWD化を施し、更に後方にスクリューを装備した水陸両用車両であるシュヴィムワーゲンTyp128(typはタイプ(type)の独語綴りです)を製作しました、舵取りは前輪がその役目を果たします。
スペック
オイルクーラー付き空冷水平対向OHV4気筒、排気量1,131cc、最高出力25馬力です。
これはTyp128も166もほぼ共通です。
Typ128は、1940年9月以降陸軍の工兵部隊に試験配備されましたが、実用試験の結果水陸両用車としての車体安定性や不整地走破性等が不充分である事が判明してしまいます。
そこで、改良を指示、整備性や走破性の向上を目的とした改良型シュヴィムワーゲンTyp166を設計、1941年8月にその試作車が完成しました。
Typ128と比べてホイールベースが40cm縮まり、車体長が37.5cm、車幅が14cmほど小さくなり、更に翌1942年ボデイ寸法をよりコンパクトにし、幅広タイヤに履き替えた改良型の
Typ166が完成しました。
最大の特徴である後部の3枚羽のスクリュー、路上走行時はこのように上に折り畳まれています、水上ではこれを下ろしてクランクシャフトと連結して回転させる方式です。
路上では最高時速80km/hほどで走行可能で、水上では時速10km/hほどで航行可能でした。
このように川などに入ったり、川から上陸したりする時のためにAWD機構が必須だったのです、スーパーローギア状態でのみAWD走行が可能でした。
運転席、軍用車ですからシートもこの上なくシンプル、基本的には4人乗りです。
画像は模型ですが幌も装備、広げるとこうなるそうです。サイドの窓は無いのであくまで簡易的な物ですが。
もし、水上でエンジンが故障したら?
手で漕げ!、ある意味ボートですからオールも装備、サイドドアの上部に取り付け可能、偵察にも使われていたので水上から静かに偵察なんて時にもエンジンを停止して使われたとか。
上記のとおり主に偵察などに使用されていて、当時は偵察にサイドカーなども使用していましたが、泥でぬかるんだ道路や路外での走破性が高くてしかも河川にも入れると使い勝手が良く、最前線の兵士達からの評判も良かったそうです。
1944年に生産していた工場が連合国側により爆撃されて生産がストップ、その後も残余の部品で細々と他の工場で生産されていたそうですが、1945年の敗戦により生産が終わりました。
総生産台数は14276台ほどと、水陸両用車両としてはかなりの台数が生産されています。
戦後、一部の車両はドイツ国内の消防署などで使用され、水上の救難作業などに従事したそうです。
さて、中古・・・まあ、そりゃ無いですよと。
というかその辺の中古車屋にシュヴィムが居たらビビるわ!ww。
海外では各国の当時の軍用車両の集まりや、軍用車コレクター達のミーティングの会場に姿を現すこともあるので、所有している方々は居ますけど売りに出ているかというと、オークションという形になってしまいますね、日本にも数台居るそうですが。
近年、欧州でのとある車のオークションで、当時物のTyp166が売りに出されたんですが、最終的には3500万円ほどの価格で落札されたそうです。
上記したキューベルワーゲンの方は当時物でも800万円ほど、随分差がありますがその理由は
VWタイプ181、通称シングというビートル(タイプ1)の車体をオープンクロカン風のボディに変えたモデルがかつてあったので、それを利用した精巧なレプリカが結構な台数造られていたんです。
キューベルなら駆動もRRのままでOKですからね。キューベルのレプリカモデルはだいたい750万円ぐらいで販売されていたとか。
シュヴィムの方はその特殊な車体もそうですが、AWD機構が再生のネックになってしまうのです、戦後の空冷VWにAWDはありませんでしたからね、AWD化の部分のパーツは当時物の再生品などを使うしかないわけです。
よって、海外(主に欧州)ではレプリカではなく当時物のシュヴィムを専門でレストアする業者が少数居るとか。レストア車両だと最低1000万円以上だとか・・・うん、無理っw
1940年代当時としてはかなり画期的な軍用小型車両、AWD駆動でしかも水陸両用、路上も80km/hほどで走行可能で不整地にも強く、前線の兵士からも重宝された小さなKamerad(カメラート、仲間(戦友)の意味)、それがtyp166(128) Schwimmwagen(シュヴィムワーゲン)です。
ナチスドイツ時代のバリバリの軍用車ですが、どこかカエルみたいな可愛げもある形が好きでしてね。
敗戦国側の軍用車両は基本的に処分されるので、なかなか残らないのが常、日本(帝国陸海軍)の「くろがね四軌」もそうですが(紹介済)。
残った車両は歴史の証人として、大事に残して行くべきだと思います。
所有・・・というかまずは実物を見てみたい、可能なら乗って・・・川や湖で釣りでもしたいですね。
このシュヴィムは観光用の水陸両用車の御先祖様でもあるんですよ。