2018年10月28日
【プレイバック試乗】トヨタ・ランドクルーザー80 バンVX(後期型)
20年30万km以上走っても未だにお声が掛かるランドクルーザーの凄さ。
なんかちょっとファッションで乗っていたユーザーの下に居たような車で、妙に大径のタイヤや無意味に変わったマフラーとか、この御老体にコレは堪えないのか?って感じの車でもありましたが。
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とはいえランクルが硬派一辺倒だったのかといえば実は本当に硬派なのはサファリ(パトロール)の方ともされ、ランクルはむしろ今でこそ超硬派モデルの典型に捉えられているヨンマルなんかも従来の四輪駆動車よりも快適にオンロードを走れるような配慮を多数行っていたりと、むしろ「軟派」なんですよね。
だからランクルは何処の国へ行っても一定のサービスを受けられて結果的に永く使えるという意味で信頼が高く、本当に何もできないような地方ではサファリの方がそもそも壊れないように作ってあるからいいんだとか。
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そんな80系は現在の200系に繋がる系譜のモデルである。
このシリーズのランクルの成り立ちは初めて最初から乗用を意識して作られたと言われる55型にルーツがあり、ステーションワゴン型とも言われることがあるが、当時のクロスカントリー車のお約束どおり、普通に貨物登録仕様が存在する。
これは意外にもディーゼルの設定が残っていた100系まで継承された伝統であり、ディーゼル車は全車貨物登録車とのなる。
(200系もこれからディーゼルが追加されることになったら1ナンバーになるのだろうか?)
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今回の個体は後期型のバンVXである。
何が後期か前期かと言われても細かいことはよく知らないのだけれども、少なくとも1HD-FT型エンジンである時点で後期型である。
後期型はバブルの絶頂期に登場し、長期に渡って販売された車の宿命で、作り自体は前期型の方が良いらしいが、ガソリンモデルなんかは初期型は3F-Eという初代モデルにルーツがあるレベルの古式ゆかしいエンジンでディーゼルよりパワーも燃費も劣ったモデルだったりもしたので、ガソリン車にこだわる人は1FZエンジンが設定される中期以降を選んだ方が賢明だったりと、もどかしい部分もある。
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ハチマルは当時の世相の影響もあって、最上級グレードのVXリミテッドばかり売れていた車なのだが、今回の車はそれと比べると珍しい中間グレードのVX。
とは言っても外見上はオーバーフェンダーが付いてるし、背面スペアタイヤの装着も選べるので、詳しくなければVXリミテッドと何が違うのかほとんど分からない。
しかし、事実上グレード間の差別化の無くなった現在と比べれば、見るべきポイントを押さえれば普通に見分けが付く程度には仕様が異なっており、その見分けるポイントとはドアノブ等がメッキになっているところであり、こういうところがグレード毎に細かく変わっている辺りがバブルの頃に作られた車らしいポイントである。
しかし中間グレードでメッキとなると、最上級は・・・?というと、最近のメッキの方が豪華に見えて上等という風潮から考えると異例だけれども、当時はフルカラードの方が上等と考えられていたらしくて(無塗装パーツとかも普通にあった時代だしね)、VXリミテッドはフルカラードとなる。
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現役当時はサファリと並んで規格外の巨大な車にしか見えなかったハチマルも、今や諸元を見てみると基本のボディは全長・全幅はCX-8の方がデカイという割りと「コンパクト」な車体である。
VXなのでオーバーフェンダー+背面スペアタイヤでこれらの装飾分だけ見てくれの寸法は広がっているので、それらも加味した数字は流石にCX-8よりはでかい。
だから、イマドキのSUVの感覚からすると見切りの良さやそもそも広さを稼ぐには不利なフレームシャーシ構造のお陰で狭い車内と合わせてえらくコンパクトな車に感じる。
しかしながら、スピードがメーター読みで1割ほど速く表示されているという、ノーマルよりも二回りは巨大なタイヤを履かされていたせいで、高さだけは一丁前に高かった(笑
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現役当時はガソリン・ディーゼル合わせて国内のSUVのパワーユニットとしては最強を誇っていた1HDエンジン。
そもそも6気筒4.2リッターターボという時点で乗用車というよりは2tトラック並みのサイズのエンジンではあるのだが、同クラスのエンジンでも基本設計が70年代でOHVだったサファリのTB42と比べても、この世代から設計が一新された最新設計のSOHCエンジンで165馬力(初期型)もあり、2.2tにも達するボディを170km近くまで加速させる力があったのだ。
何せ80系デビュー当初はガソリンよりもディーゼルの方がパワーがあった上、他のライバルにしてもランクルほど強力なエンジンを積んだ車は存在しなかったため、ランクル80のディーゼルがガチで国内最速SUVの地位に数年間就いていたほどである。
のちに1HDエンジンは100系で国産乗用ディーゼル(厳密に言えばランクルのディーゼルはプラドの系譜のモデルを除くと貨物登録される車しか存在しないので「乗用」ではないが)では初めて、そして未だに唯一の200馬力超えを果たした1HD-FTE型に進化する。
このエンジンはNAの1HZ(何故か型式が変わる)と世にも珍しい5気筒ディーゼルの1PZで実質的にモジュール構造をとっているという、ちょっとした特徴もある。
今回のそれはNOxPM法によって従来の仕様では販売が不可能になったため、24バルブ化とEGRの装着で規制適合&パワーアップが図られた1HD-FT型である。
とはいえ、巨大過ぎるタイヤと30万kmも走ってちょっとお疲れだったのか、ズモモモモという感じにもっさりと吹ける程度で数字ほどのパワー感は無かったのは残念なところ。
最も飛ばすとまっすぐ走らないので、それなりに足の遅いフィーリングで助かった感もある。
でも流石ディーゼルらしく、燃費は10kmとはいかないけれども7km程度は走っていたようだ。
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内装は巨大なランクルを象徴する感じで、当時えらく幅広に見えたオーディオとエアコンパネルが横に並んでいるという、独特の配置のインパネが目を引くけれども、今の感覚で見るとこれむしろ車内の天地が足りなかったから横に並べた感がありますね・w・
アームレストになりそうなほど巨大なセンタートンネルが真ん中に出っ張ってるので、これでインパネのスペースがかなり食われている感じでしたから。
同じフレームシャーシのクロカンでもパジェロは逆に普通にこの辺りのインフォテイメントを縦に並べていましたし、その上で小物入れまで作る余裕があったり、ずいぶんと天地のある車だった気がしましたけど。
しかし、当時のランクルはハチマルとはいえ普通にワークホース的な雰囲気が残っているので、あんまり豪華な感じはしませんぬ。
この辺り、「乗用車ライク」と称されたパジェロの方が確かに野性味を残しつつも乗用車的な高級感があった気がします。
あちらもあちらで相当にプラスティッキーでしたけど。
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事実上最後の前後リジットサスモデルであるハチマル(90系プラドから前輪独立懸架、70系は84年デビューでこの車より古い)、タフネスという点では未だに愛用者の多い型だけれども、前後ともにコイルサス化されているとはいえ、前輪がリジットだと乗り味は相応にトラッキンなものになりがちである。
しかし前輪がリジットであること以上にやっぱり巨大過ぎるタイヤのせいかハンドルを拳いくつ分かくらい揺さぶっても平気で直進していたくらいレスポンスはダルく、かと思えば路面が荒れてくれば酷いワンダリング(場合によっては半車線分くらい車が踊る)も出たりと、経年劣化とカスタマイズの悪影響が双方相まって余計酷いことになっていた感じがした。
それ以外にも停止直前に謎のジャダーが一瞬出たりと、そろそろどっかオーバーホールした方がいいんじゃないの?的な部分も。
そういう意味で20年30万kmのお疲れ具合は察せるのだけど、でもタイヤさえまともならまだなんとかものになりそうな雰囲気はしている辺り、普通の車より相当頑丈なんだなぁと。
乗り心地の方は今の200もそうだけど、ものすごく乗り心地のいいトラックである(笑
この辺りはタイヤとかの状態を鑑みても、何故かそこそこ良好だった。
日本の一般道路を普通に流れに乗って走るのならば今の状態は酷すぎるけど、どっかの山の中とかで作業車としてゆっくり走る程度なら、走れなくなるまでこのまんまでもいいかもしれない、そんな程度。
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Posted at
2018/10/28 23:08:03
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