2018年08月28日
モダンリビングの旗振り役だった姿は何処へやら、まあそれもこれも初代の成功に気を良くした&中国市場でもっと豪華な仕様が好まれたのいいとこ取りをしようとしたら二兎追う者は一兎も得ずな状況になったわけで、なんか3代目は毒気が抜けたFFラージセダン・・・かつてのマキシマ、或いは33セフィーロ辺りに先祖返りしたような車になった。
最も、型式は先代までのマキシマ系の車種であることを現していた「J」から現行型は「L」に変わっていて、これなんだと思ったら、北米アルティマの系譜なんですね。
アルティマは元々北米仕様のブルーバードから発展した車種ですが、一方のマキシマもブルーバードマキシマから発展した車種で、どちらをベースにしようがどのみち源流はブルーバードにあるところはなかなか面白いものです。
とはいえティアナという名前の源流であるローレル・セフィーロは実はこっちはブルーバードとは全く関係のない車であったり、その系譜を紐解くと大変複雑な変遷を辿っている一台であります。
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初代の頃からスポーティさとは無縁な車で、八方美人になりがちなこのクラスのセダンでは割りと稀有な性格の持ち主な車ですが(本当にスポーツグレード自体設定されたことが無い)、意外と乗り味はスポーティなんですよ。
勿論、恐ろしく軽いパワステやソフトな乗り心地、静かな車内なんかは如何にもな旦那セダンそのものなんですが、頭が軽く重心が非常に低い感じがして、結果的にソフトで快適なのにかなりの運動性も感じるという、なんかイマドキの車で言うところのトヨタTNGA世代の車に近い感じがする車です。
まあ楽しいかっていわれたら質実剛健に定評のあるQR25にCVTなんていう平々凡々なパワートレインでもありますから、動力性能に不満はないにせよ、スポーツ性は勿論のこと高級車としての色気も無いわけでやっぱり面白くもなんともないわけで、あくまで広くて快適なFFセダン、要するにブレッドアンドバターを地で行く車なわけですが。
そういう意味ではトヨタが最近ようやくたどり着いた場所にずっと前から立っていたような部分もある車であるわけですが、何にせよそれを活かしきれてないよねっていう。
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でもこの軽快な走行特性にどれだけ寄与しているかはわかりませんが、ティアナのカタログを読むとリヤサスに「コネクトブッシュ」なる、トーコントロール性を持たせた独特の機構があることが読み取れます。
ニッサンこういうの好きだよね。
昔のマルチリンクビームとかw
構造からするとロアアームを分割した上で、その真ん中にコンプライアンスブッシュを仕込んであるようですが、どうもこれからニシボリックサス臭がする(w
元いすゞのお偉いさんが上層部に居座っていたからというわけではないでしょうが、考え方としては非常に似ています。
ただちょうどこのティアナが出たのと同時期にクラウンも弾性サスアームを使ってジオメトリー制御をするようなことをやっていたので、かつてのニシボリックサスやマツダのトーコントロールハブが同じ時期に登場しているように、定期的にこういう積極的なコンプライアンスステア制御の機能を持ったサスペンションというのが流行るようです。
(そういえば4WSも世界的に復権してきてますしね)
ただ、トヨタは210系クラウンの一世代のみで採用をさっさと取りやめてしまったように、明確に効果が現れるレベルまで積極的にコンプライアンスステアを活用するのは、制御の不安定・不確定さなどで難しさがあるようで、ティアナの場合はトーコントロールと言っても基本的にはトーインのみを制御することを主眼に置いているようですが、ブッシュの伸縮に頼って果たしてトーインのみで済むのかみたいな疑問もあったりで、今もティアナがこの技術を使い続けているのは単にこの5年間モデルチェンジもマイナーチェンジすらもしていないから時流に取り残されているだけでもあるのですが。
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結局ニッサンは今売るものがセレナとリーフとノートくらいしかないという、壊滅的にひどい状況なわけで、本気で他に何を売ってるのか分からない状況なわけですが、ティアナもその例外ではなくて何しろ現行型は最初からやる気が全くなく、出てから5年も経つのに放置されたままという、マイチェンごとに安っぽくなっていくような変化が加えられていくのとはまた別の意味でひどい状況なわけで、なんか存在感が無いのも致し方ないよねっていう。
今のティアナが出た頃合いっていうと、このクラスのセダンに佳作がいくつか出て俄に注目を集めた頃だったにも関わらず、その流れに全く乗れなかったというか背を向けたのだから、よほど先代が(日本では)ずっこけたのが効いたと見える。
Posted at 2018/08/28 23:27:14 | |
インプレッション | 日記
2018年08月28日
現行型の以前に「若返り」を図ったのがいわゆるゼロクラウンと呼ばれた180系。
しかし、当時としてはあまりに急進的な若返り策であったせいか、確かに新規に流入してきたユーザーには好評だったものの、従来からのユーザーにはあまりウケが良くなかったとされる。
アスリートユーザーはどのみち若々しいというか、従来のクラウンユーザーとは違うユーザー層に支持されている傾向があるから性格付けは一貫しているのだけれども、ロイヤルはだんだん従来の旦那仕様に先祖返りしていったとされた。
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■180系
走り出して最初に思ったのは、やっぱりNVHへの配慮は完璧で、ハーシュネスのカドは完璧に丸められているし、フリクション感無くスムーズに軽く回るパワステは軽快、そして上品に振る舞う2.5リッターV6+6速のパワートレイン。
うん。これはクラウンだ。
でも、よくよく感じてみると、サスペンションが動き出すようなところの動きに曖昧なところは少なく、これが柔らかいかと言われれば高級車らしい快適さはあると思うけど、ソフトさがウリの車の動きとしては到底思えなくて、かなりしっかりしてるよね。でもバネはさすがにそんなに硬くない。
思うに、ゼロクラウンってダンパーがモノチューブ式を採用したことでも話題になったけど、このタイプのダンパーって減衰の立ち上がりが早いし、その上で減衰力・減衰カーブ自体もかなりしっかり感重視に設定されている感じ。
だからふわふわって感じはほとんどしないし、最初のワンタッチなんかはむしろ現行型の方がソフトに感じる。
ダンピングをガッチリ効かせて入力を受け止めるって方向性が徹底してる感じだから、この方向性に違和感を感じるというのであったらそれは致し方がないと思うし、これはこれで非常に良くまとまった足だと思うんだよね。
同世代の車ならフーガの標準足の方が余程一挙手一投足に対していちいちボディを揺すったり派手にロールしたりと、古典的な高級車臭い動きをする。
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■200系
200系にしてもしっかりダンピングを効かせていてそんな曖昧な感じがないんですよねえ。
確かに絶対的なバネの硬さなんかは非常に柔らかい感じはするのですけれども、ローリングの揺り返しとかで怖い思いをしたりするところが無いので、スポーティは言い過ぎにしてもしっかりした乗り味の車だっていうのは言えるんですよね。
概ね、180系の初期でやり玉に挙げられていたところを丁寧に処理してある感じで、根っこにあるものは基本的には変わっていない感じで。
ただ結局、日本車の多くはそういう傾向があると思いますけど、基本的にサスのバウンド側を締めてリバウンドを緩めるって感じで乗り味を作っている感じなので、ドンと入力が入ったときは望外にしっかり感があるのだけれども、伸び側がちょっとそれと比べると緩慢というか、かなり柔らかいのかなって思う感じあって、その辺りに良くも悪くもユーザーからのフィードバックに対する回答と「クラウンらしさ」が表れていた気がします。
ドライブトレーンの感触は基本的な構成(1GR+6AT)は変わっていないはずなのですけれども、180系と比べるとかなり緩慢な感じのドライブフィールになりましたね。
要するにアクセルが開いてない感じがするところとシフトアップがかなり早くてなるべく高いギアで走ろうとするのが第一って感じなので、この辺りはちょうど時期的に石油高騰とかリーマンショックの影響を受けたのであろう感じがかなりします。
スポーツモードだったりアクセルを踏んであげればそこそこ元気に走りますし、今となっては希少になったV6エンジンのきめ細やかな咆哮も伝わってきますけれども、まだ現行世代の4気筒ハイブリッドやターボの方がドライバーの意思に忠実な味付けに感じます。
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ドライビングインターフェイスなんかはまさにザ・クラウンって感じで、不思議とこの2世代でも、或いは210系・220系と比べても、一旦その作法を知ってしまえば違和感を感じるほど操作体系そのものが変化したりという部分がほとんどないのは、伝統を自信を持って積み重ねている車の強みなんでしょうねえ。
Posted at 2018/08/28 22:42:14 | |
インプレッション | クルマ
2018年08月26日
最近のBMWは日本車のように快適で気の利いた作りが特徴的だけれども、もし「ドイツ車らしい」BMWを求めるのならE90辺りの世代が最後なのかもしれない。
3シリーズはE90の先代モデルであるE46が「当代最高のセダン」と讃えられていたのを覚えているけど、その後クリス・バングルが指揮を執る個性化路線の推進により、色々な面において好き嫌いの分かれるブランドに急激に変貌していったけれども、E90はその揺り戻しでE65/66やE60と比べて若干スタイリングが薄味となり(デザイナーは日本人だし)、そういう新世代のBMWと旧世代のBMWの良い部分を折衷した、なかなか味な世代であるのかもしれない。
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一方のX1はX5に始まるBMWのSUVモデルの中で最後発かつボトムレンジに当たる小型モデルであるけれども、初代に限ってはプラットフォームがCセグメントと言うには若干大きなE90がベースとなっていた。
即ち、兄弟車である。
X5を作った頃はBMWが作った高級SUVということではヒットしたけれども、調子に乗ってパリダカに参戦してみたらノウハウ不足で速攻リタイアしたりして「格好だけのドイツ版CR-V」みたいな扱いをされたこともあったけど、X1の頃になるとそういう声もほとんど聞かれないようになってきた。
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この2台共通するのはとにかくパワステが重いことである。
特にアシスト量が要求される据え切り~微低速域などはX1など一瞬重ステか故障を疑うレベルに重いのだが、この世代くらいまでのBMW・・・つまりBMWはサーボトロニックと称する車速感応式のパワステを採用する前のモデルはこんなものらしい。
操舵感を均一にする立役者とも言える車速感応パワステに対して、こちらは単に「重ステより乗りやすくなればいいんでしょ」的な、いつ如何なる時もアシスト量が一定のシンプルな制御のようで、ある意味重ステチックなアナログでノスタルジックな操縦性を演出するのに役立っているように思う。
人間の感性からすれば低速が軽くて高速が重いのが自然に思えるけど、本来は逆なんだよね。
アシスト量が少ないせいか、キックバックみたいな路面からのインフォメーションも結構はっきりしてるしね。
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結局シャーシが同じなので乗り味もほぼ共通していて、最近のBMWにはない重厚な感じのシャーシにしっかりダンピングを効かせた足回りを被せた、車体の無駄な動きを一切許さない剛直さと精度感で、ある程度以上の速度を出していると本当に「いい」んだけど、ゆっくり走ってると重いパワステとダンピングの強い足回りのおかげで乗っててちょっと疲れる感じ。
とはいえガンガンに突き上げてくるほど硬いわけではないし、実際足は低速からちゃんと動いてるんだけど、その考え方が今と違うね。
X1だとそもそもボディ形状の関係上剛性面で厳しいのにセダンよりも大重量と大入力を支えなければ行けない手前、コンパクト志向なのに3シリーズベースである作りの良さがこの手のSUVにありがちなひ弱さを打ち消していてバランス良く仕上がってるんだけれども、大元の3シリーズは確かにちょっと国産車に乗り慣れた身からすると、違いが分かるのは嬉しいんだけど味が濃すぎるというか口に合わない面もあるかなって。
ドイツ車に乗り疲れる人はこういうところに疲れるんだろうなぁ。
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エンジンもこの2台は同じ。直4の2リッターでバルブトロニックのNA。
国産の4気筒と比べると実に雄々しいフィーリングで回っていくのはBMWらしいというよりは欧州車らしくて、4発であることの悲哀はあまり感じないけれども、走らせた印象はこの2台で結構違う。
どっちも6速ATで車重も同じくらいなので絶対的には同じように走っているはずなのに、X1では速く走る必要が必ずしもないSUVのおっとりとしたところにNAの自然なフィールと適度なトルク感がマッチして結構いい感じなんだけど、320では不思議とアンダーパワー感が先に来る。
先に「疲れる感じ」と思ったのは320の方で強く感じたのだけど、これはやっぱり重苦しい乗り味に加えて重苦しい動きに感じたのも大きいのかもしれない。
そういう意味では意外とジャンルが与えるスパイスというのは車の乗る気分にかなり影響が出るものなのだと、改めて思うのである。
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とはいえ車内に着席してしまうと、出自が同じというのが一目瞭然なくらいインテリアは似通っており、このくらいのグレードでは華やかなBMWインディビジュアルは当然設定は無く、黒内装にアルミ調のデコパネルのコーディネートに統一されてしまうので、iDriveをカチャカチャ弄れるのはいいんだけれども、弄ったところで車を所有しないのならばオーディオとナビの切り替えくらいしかやることがなかったりもする。
BMWは意外とオートエアコンの制御なんかが独特の部分があったり、或いは単に車体のユーザーカスタマイズが割りと充実してたりしていて、そういうところの扱いにiDriveの真価が現れてるんだけど。
そういう意味では最近は在りし日の国産車並みにハイテクのイメージの強いBMWの期待に反してどベーシックな2台で、正しいドラポジで安全確実に車を運行しましょうという、ある種の堅苦しいドイツ車のイメージそのものでもある。
Posted at 2018/08/26 13:40:09 | |
インプレッション | 日記
2018年08月26日
たぶん初期型のZ33に触れる機会があった。
いわゆる新世代VQエンジン(VQ35HR)になった後期はボンネットが違うのでひと目で分かるけど、馬力がちょっと上がっただけのもの(中期型)はどこ見ればいいのか忘れた。
ただボンネットの形状は前中期型で、後ろの排ガスシールがH12のものなので後期でないのは確定ってだけで。
しかもブレーキが片押しだったのでバージョンTか標準車。しかし6速車。
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Z33ってある意味Zの歴史を一度リセットするような存在だったりする。
Z32まではひたすら速く豪華にを追求してきた結果、32では当代随一のハイテクと豪華装備、そしてスーパーカーのようなグラマラスなエクステリアが与えられた反面、最上級グレードのツインターボTバールーフ仕様なんか最終的には500万近い価格にまで達していて、プアマンズポルシェから始まったZがいつの間にか安くて遊べるスポーツカーが欲しい人間からは程遠い高級車になっていたのだ。
それから比較すれば2by2の設定が無くなり、しかもデビュー当初はオープンどころかTバールーフ(サンルーフ)すら設定の無い、シンプルに2シータースポーツという原点に立ち返ったZ33は、280馬力のエンジンと6速ミッションを持ちながらも初期型でベース価格が300万・最上級グレードでも400万でお釣りが来る価格設定となり、当時バーゲンと騒がれたりもしていたのだ。
自分的にも実は33の初期型のMTが試乗第一号車だったりする。
(当時は上手く乗れなかった)
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とはいえ元々Zはピュアスポーツの顔をしたグランドツーリングカーであり、Z32にしてもスペックは立派でもスポーツカーとしては微妙な評価を下されていたりもしたけれども(まあGT-Rもあるしね)、そういうところはZ33でも変わっていないようだ(w
当時使いに使い回され、半ば辟易されていたVQ35は280馬力と言ってもまさに排気量とトルクに物を言わせるタイプのエンジンであり、2tクラスのエルグランドでも過不足無く走らせる事ができる以上、1.5tに満たないZでは冗談抜きで1000回転からが実用域である。
巡航するだけなら1000回転で事足り、加速しようと思えばターボ車では役に立たない1500回転以下の領域からでも即座にグイグイ来るトルクはまさしく大排気量の証。
折角の6速ミッションだけど飛ばしシフトでさっさと5~6速に入れて走るもよしと言ったところである。
逆にターボ車ならばオオッと来る3000回転辺りからはその力感が逆転するというか、結局低速から力のあるNAらしくフラットに回っていってしまうので、低回転域ほどのインパクトは無い。
Z33に乗ったのは15年ぶりくらいだけど、当時もこのトルクに振り回されていた記憶があるけど、全く記憶違いではなかったのだなぁ。
そういうフレキシブルなエンジン特性と、2シータースポーツと言う割にはまったりとした車の動きは、勿論乗用車と言うにはスパルタンな乗り心地がスポーツカーであることを声高に物語るけれども、実際広いアメリカ大陸やら、日本でも高速道路をのんびりハイペースで走るのに最適化されている感じがする。
同じような走り方は同じ大排気量NA車である先日のM3でもできるけど、アチラはやはり多少は回してないと機嫌を損ねそうなセンシティブさも伝わってくる故、タコメーターが1000回転辺りまで落ちてくるとハラハラしたけれども、如何にもアメリカ~ンなZはそんなことは微塵も気にならず、むしろこういう走りの方を推奨していそうでもあるw
だから意外と乗用車としてリラックスして乗れる車でもあり、サーキットを走るんなら別の車を買った方が賢明だけれども、街中でスポーツカーの雰囲気を楽しみながら移動ができるという、結構味わいのあるくるまである。
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とはいえある意味安い分だけひたすら走ることだけに集中せざる得ない殺風景な内装はグランドツーリングカーとしてはちょっとつらいね。
ドラポジなんかは悪くないし、ちょっと話題になったステアリングコラムの角度に連動して動くメーターナセルなんかもチルトステアをどういう位置にしても一定以上のメーターの視認性は確保できる、そういう部分はいい。
だから何がほしいと言われて足りない装備はほぼ無いけれども(そういえば何故かテレスコが無かった)、ドライブをより盛り上げたり快適にするような装備は一切無いレベルに小技が利かないので、その辺りはイマドキの86とかロードスターの方がよほど気が利いてるっていうね。
だから自然と運転していると前だけを見るようになっているのは果たして安全なのかつまらないのか。
文字通り「車を(使って何かを)楽しむ」にはパッケージングは優れてるんだけど。
Posted at 2018/08/26 04:44:38 | |
インプレッション | 日記
2018年08月17日
左ハンドル・MT・2ドアという、たぶん組み合わせ的には一番売れていなさそうな組み合わせw
E92からは日本仕様でもセダンも追加になったわけで、こういうバリエーションは豊富になった。
それが故に明らかに「不人気」な組み合わせも生まれそうではあるのだが・・・。
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元々M3はツーリングカーレースを戦うために生まれたエボリューションモデルであるけれども、実際にホモロゲ対応などでガチで作られていたのは初代E30だけで、2代目以降は一応はレースにも使われてはいるけれども、基本は4ドアやオープンモデルなども用意されているGT寄りのグレードになっている。
(一応限定仕様で毎度のようにコンペティション仕様が出てるけど)
とはいえアウトバーンやニュルブルクリンクでイキリ倒す・・・もとい、本気で走りたい人間向けのスポーツグレードであることにもまた間違いはなく、BMWも相応に「走りのBMW」としてやりたい事を好き勝手やるための存在でもある。
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この車、一言で言ってしまえば「ぼくたちがそうぞうするりそうのびーえむ」そのものである。
最近のBMWは優しい乗り味が特徴なのだけれども、M3は流石に骨太・精緻・硬質というドイツ車やBMWのイメージそのものの乗り味で、ビシッと硬いバネを鍛え上げられたシャーシとダンパーでガシッと受け止めて、ドッシリと地の果てまで駆け抜ける、「これだよ!BMWに欲しかったものは!」という感じがビリビリ伝わってくる車で、標準モデルのBMWとは対極ではあるんだけどこれはこれで「走る高級車」の究極形かなって思ったりするわけです。
そう感じさせてくれるのは単に走るだけでなく街中でのマナーの良さも当然にあるわけで、単なるガチなスポーツモデルに留まらず「メーカーが本気で作った車」の凄みを見せつけてくれるところもまた、この車が「理想」と感じる一端だと思う。
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しかしこの車が乗りやすいのかと言われると、「乗りやすいけど乗りにくい」と答える他ない。
その辺りに一番直結してるのがドライブトレーンなのだ。
専用の自然吸気の4リッターV8エンジンは大排気量NAエンジンらしくフレキシブルでトルクも太く、相当ズボラな運転まで難なく受け止めてくれる余裕を持っているのだが、駆動系がやや神経質で、扱いづらい感じなのだ。
とにかく、エンジンのフリクションなのかフライホイールなのかは分からないけども、アクセルを戻した時の回転落ちが非常に早く、シフトアップの時もほぼ中吹かしが必須なほどで、スムーズな変速が難しい車なのだ。
だからエンジンは太いトルクでずんずん走ってくれるのに、変速する度にガクガク揺れるヘンな車とも感じてしまう。
この車を無理なくスムーズに動かせたらそれだけでどんな車でもスムーズに走らせる腕があると思っていいと思う。
もちろん、重いというか入りの渋いミッションや、やや繋がりにセンシティブな部分もあるクラッチも扱いにくい印象を受ける一端ではあるけど、エンジンがその辺りの七難を覆い隠すほどよく出来ているので気になるレベルではない。
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この車は速いのか?と言われると、所詮NAの4リッターなので、最大トルクの山まではトヨタやニッサンのV8と大して変わらない。
街中では分からないのだ。
こればっかりは4リッターの排気量から絞り出せるトルクには限りがあるので、そういう如何にもな爆発的な速さはターボ車に分があるとしか言いようがなく、NAエンジンの高出力とは如何に高回転まで限りあるトルクを持続させるかに掛かっているわけで、その答えがレッドゾーン8400回転という8気筒4リッターという巨大なエンジンとしては異例なまでの高回転特性なのだ。
だからNAならではの素直でリニアな反応は良いのだけれども、普通に走らせると退屈ではないんだけど速さ自体は感じにくい。
確かこの世代のMのV8エンジンはV8のクロスプレーンでありながらも完全等長マニホールドを使うという凝ったことをやっているので、回るフィーリングは他の一般的なV8よりもビート感が薄くて、そのくせ荒っぽいところも当然なくて直6とかに近い感じになってる辺りはスペシャルって感じだけども、やっぱりアクセル踏まないと色々とその辺りの意味も伝わりにくいんだよね。
ただ、大排気量エンジンならではのフレキシビリティは400馬力クラスのメガスポーツにあるまじき乗りやすさ(トルク的な意味で)を提供しているのは確かなのだ。
Posted at 2018/08/17 04:22:16 | |
インプレッション | 日記