【試乗】レクサス・LC500　コンバーチブル

車両型式が「Z」となっているので、実はソアラの直系子孫となるレクサスLC。

2017年に登場したころは新たにラグジュアリークーペが1台登場したくらいのものでしかなかったが、ちょうどLCが登場したころくらいから自動車業界は電動化の荒波に飲み込まれてゆき、気が付くと（ハイブリッドももちろんあるものの）世界的にも希少となった大排気量マルチシリンダーNAエンジンを搭載する最後の生き残りになりつつある（アメ車除く）

＊＊＊
レクサスLCには標準仕様とちょっとスポーツ寄りのSパッケージ、そしてちょっとラグジュアリー寄りのLパッケージの3グレードが用意されているが、今回乗ったコンバーチブルは標準仕様1グレードのみの展開となる。

ソアラの直系・・・というかそもそもレクサスの最上級車の一台なので、どのみちクーペと言っても一切汗の匂いはしない。というかうちの車より高級車・乗用車っぽいぞ。

生憎の雨であり、コンバーチブルらしいオープン走行は楽しめなかったが（最も季節的に晴れててもオープンはそれはそれで地獄の可能性も高いが）、いざ走り出すと、まずソフトトップであることを瞬時に忘れるくらい環境音に対する静粛性が高い。

そしてトルコンAT搭載でしっかりクリープするのもうれしいし、ハンドルは据え切り～微低速域から軽々。

アイドリングや市街地走行レベルの低速では、車両からの騒音（排気音など）も如何にも存在感を誇示することの多い最近のスポーツモデルらしからぬ静粛性。

足回りは雰囲気程度に硬められており、ハンドルを切ったときなどの「スポーティ！」と嬉しくなる機敏さは確保しつつも、荒れた道を走ってもスポーツサスにありがちな不快な突き上げやシェイク感はほぼ出ない。

最初に2UR‐GSEが登場したとき（IS-F）には問題のあった電子制御スロットルのチューニングもまともになり、街中を走るだけなら実に快適至極な車である。

M5がセダンの皮を被ったスーパーカーなら、こっちはスーパーカーの皮を被ったセダンだな。

直系の40ソアラが優雅な見た目に似合わずかなりスパルタンな車だったのと比べると、LCはレクサスらしい丁寧にカドや灰汁を取り除いたクリアでスムーズな乗り味を提供してくれる。

うん高級車だねこれ。

＊＊＊
普段はうちの車より遥かに静かなのに、アクセル踏むといい音するんだよな。

でも477馬力もある割には、踏んでもあんまり加速感無かったような・・・雨だったからトラクションコントロール効いてたのかな。

トラコンが効いてたとすると、一切介入感が無い素晴らしい精度の制御である。

＊＊＊
今回乗った車はタン内装だったので、LCのインテリアの造形がよく分かって大変雰囲気が良く、乗り味の良さと合わせてこれすげえいいなあって素で思う車になっていた。

やっぱり、新車での価格帯はうちの車もLCも一緒なんだけど、ベース価格が600万とかの車をデコレーションした車と、最初から1500万で売ることを前提とした車では、やっぱり600万の車はいくらデコレーションしても600万の雰囲気が残るんですね。

で、出色の出来だと思ったのがドラポジ設計かな。
実家に帰ってきたような自然なポジションで、大変乗りやすい。

ドラポジがきちんと決まるし、シートのバックレストの面圧配分も最適。
ドラポジを決めたときに計器類など必要なものもきちんと見えるので、当然運転もすごく楽。

また豪華な見た目の割りには車からのアプローチがあんまりなくて、そういう意味でも静かな車なんだけど、レクサスのホスピタリティは基本的にはパッセンジャーの意思に必要最小限以上には介入しないところにあるんじゃなかろうか。

まあこの辺りはクラウンなんかもそんな感じだったので、レクサスというよりはトヨタの方向性なのかもしれないけど。

いまどきのドイツ車なんかは割りと露骨にユーザーを誘導しようとする、つまり「うちの車をこう動かしたければこういう風に扱ってほしい」というのが前面に出ているのに対して、レクサスはそういう主張を基本的にしてこない感じ。

そういう意味でも落ち着いて運転できる車で、グランドツーリングカーとして非常に良い車なんじゃないかなって。