2025年07月12日
1シリーズ(2シリーズ)という車は結構複雑奇怪なラインナップをしている。
かつての1シリーズは3シリーズのプラットフォームを切り詰めた、ある意味かつての3シリーズコンパクトにも連なるようなCセグメントでFRのパッチバックというかなり特異な車だったが、3世代目からはミニとコンポーネントを共用する一般的なFFハッチバックに転換した。
で、2シリーズはお約束通りクーペシリーズ・・・となるのだが、まず「2シリーズクーペ」となるとこれは大元となるはずの1シリーズとは全く違う、従来の1シリーズのような3(4)シリーズを切り詰めたFRクーペになる。
しかし「2シリーズグランクーペ」となると、これは普通に1シリーズにトランクを付けたような4ドアクーペである。さらに「アクティブツアラー」となると、なんとこれは偶数番号を名乗るにも関わらずMPV系のハッチバックとなる。
要するにBMWの入門編を担うボトムレンジとして、手広く構えているシリーズと考えればよい。
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■M235 xDrive グランクーペ(F74)
モデルコードだけ見れば現行型は今年デビューにも拘らずなんと未だにF系となるグランクーペ、でも中身はG世代相当なので安心してよい(とはいえ先代モデルのビッグマイチェンに近い感じでもあるが)
BMWのモデルコード、E系の後期(2000年代に入った辺り)から数字がインフレするようになったというか10の桁で車種を分けて1の桁で細かい差分を区別する感じになったので、20世紀までのモデルと比べると早々にモデルコードが進んでしまっているが、E系までの感覚で見るとEの後期以降は実は「空き」番号がかなりある。
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2シリーズグランクーペ、見た目は完全に「1シリーズにトランク付けてセダンにしたもの」。
でもグランクーペと名乗るだけあって、この手のハッチバックをセダンにしたモデルによくある東南アジアの不格好なセダンではなく、Bピラー以降はきちんと作り直されてて写真写りは微妙だけど実車はちゃんとBMWの4ドアクーペしてて割りといい感じ。
しかし後席はこの車格で流麗なルーフラインのクーペスタイルを採ってしまうと一般的成人男性の体格ではヘッドクリアランスがマイナスに突入してしまって(あとドアの開口部の形状も非常に悪い)、身長150~160cmまでの空間となっており正直使い物にならないので、後席も使うなら1シリーズを買おう。
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最近手広く展開されている、「純正MほどじゃないけどMスポーツよりもさらにMらしく味付けしたハイパフォーマンスグレード」のMパフォーマンスシリーズ。
M235ではB48系エンジンのフラッグシップ・300馬力仕様を搭載し、xDriveとDCTで4輪を駆動する。
走りは一言で言えばBMWらしい部分を凝縮した車。
BMWに限らず、この手のエントリーモデルは当然そのメーカーに初めて触れるユーザーも多くいるわけなので、ベンツにせよアウディにせよそれらのモデルは名刺代わりに味は濃いめに付けられる傾向があるのだが、この車はまさにそれ。
コンパクト・・・と言っても昔の3シリーズと同サイズで、実は重量も結構あるのだが、車の動きはボディの実寸から想像される軽さと一体感を持っており、少なくとも1.6t近い車重は感じさせない。
そしてそんな車格に300馬力ターボの豪快な加速、ドライブモードセレクターをスポーツモードにすると如何にもなエキゾーストノートが呼び覚まされて全開加速ではバブリングさせながらガチンガチンと如何にもな感じに荒っぽく変速する、まあ「速い車ってこんな感じだよね」っていう要素全盛り。
それでいてユーザーフレンドリーさが必要な部分は徹底的にユーザーフレンドリーに、エフィシエンシーモードで走らせれば乗用車らしくしっとり快適に・・・という風に、身構えなくても乗りこなせるスポーツに仕上がっている。
そういう意味では直6がとか、FFがとかを考えなければ実によくできた車だと思うのだけれども、たぶんBMWを欲しがる人が求めるBMWってこれじゃないんだろうなぁっていう気がする。
たぶんこれでいいならベンツのCLA45AMGとかアウディS3辺りでも一緒だろうから。
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■218d アクティブツアラー エクスクルーシブ(U06)
前述のとおり、「2」シリーズなのにMPVという摩訶不思議な構成になってるアクティブツアラー、モデルコードも現行型からは「U」を名乗り始める、こちらも摩訶不思議な感じのモデルになった。
最もこの辺りはBEV系も専用のモデルコードを名乗り始めているので、いよいよこの辺りはよく分からなくなってきている。
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先代には3列シートの「グランツアラー」も設定されていたのだが、現行型ではそもそも設定無し。見た目はデカくて豪華なフィット。
また今回珍しくMスポではなく標準車が出てきた。
最近のBMWはMスポ偏重で、見込み生産で輸入されるモデルはほぼ全数がMスポなどのM関連モデル、3シリーズのように標準車の導入が無くなったモデルすらあるくらいなのだが、1・2シリーズ系はユーザー層の幅も厚みもあるせいか、普通に標準車も輸入・宣伝されていたりする。
とはいえこの車、ヘタなセダンよりはよほどスタビリティが高く安定しておりハンドリングも自然なので、自然とMPV系の車のハンドルを握っているということを忘れてしまう、紛れもないセダン感覚のドライブフィールを持っている。
ドラポジなんかは典型的なMPV系コンパクトのノリで普通にアップライト気味なのだが、国産ミニバンとかで着座位置やドラポジをセダンに寄せてそれらしいと謳っている車とは異質な感覚で、本当に自然と背の高い車に乗ってることを忘れてしまう。
ただ、その代償だとは思うのだが、足回りはバネもダンパーも結構硬い。
足回り自体は素直に反応するのでバネ下の存在は感じず、NVHのレベルは優秀ではあるのだが、それなりに大きめの入力が入るような荒れ方をしている路面では不快というほどではないが明確に足回りの硬さを感じる。
近年のBMWはMでもない限りパッセンジャーに優しい乗り味が特徴的であったのだが、その点この車はMスポーツですらないのにやや古典的なBMWの乗り味。
この辺りは日本とドイツの使用環境の違いと言えばいいのだろうか、或いは車重や重心の都合上バネを固めざる得ないなら思い切って全部スポーティ方向にという趣向なのか、とにかくセッティングが整ってる分ハンドルを握る分には大変具合がよろしいのだが、MPVらしい快適性を求めるとやや違う感じで、高速道路を多用する人ならバッチリという感じだが、車に興味のない奥様専用車とか街中メインだと不満も残るかもしれない。
しかし走りの質感の高さで言えばB〜Cセグメントクラスの、それもそれなりに重心の高いハイト系のモデルとしては非常によくできており、それだけに国産ではなかなか難しいダウンサイジングしつつ家族のことも考え、それでいて上級車同様の走行性能を両立させる選択肢として敢えてこういう車を選ぶ意味もある・・・まあアクティブツアラーでもフィット2台分するので、特段安い車ではないのだが。
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そしてこの2台、共通点としてはDCTを採用する点にある。
かつてBMWではDCTはハイパフォーマンスモデルの証という感じであったが、最近はMモデルでもトルコンATが採用されており、DCTはフォルクスワーゲン的な乾いた雑巾を絞ってでも効率を絞り出すための手段として主に小型モデルに採用になっている。
そのせいか如何にも以前のスペシャルモデル然としていた部分が全て取り払われ、制御もさらに洗練され、まずクリープするようになった。
しかもこのクリープが結構強力で、クリープはするけど半クラッチで無理やり進んでるような心許なさがあった従来のDCTのクリープとは違い、MTで言えばアクセルもしっかり必要なだけ踏み込んだレベルの、トルコンATと同等のしっかりした推進力が出ている。
そして発進時のクラッチ制御も普通のMT乗りレベルから上手いMT乗りレベル~トルコンAT並みにグレードアップしており、最早街乗りでの違和感は無いに等しい。
ただ、M235のスポーツモードでは発進時にほぼ半クラッチの時間を取らないような、かなり唐突な繋がり方をする。たぶんあのモードは発進からアクセルを全開に踏み込んでるのが前提なのだろう。(アクティブツアラーのスポーツモードは普通)
これで湿式なら信頼性も十分に思えるが、たぶんトルク400Nmクラスまでなら乾式で対応できるし、コスト的にも不利な湿式をこのクラスで採用する意味はイマイチないので、恐らく乾式ではないかと思われる。
となるとMはともかくアクティブツアラーみたいな普通の人が乗るための車にはDCTは依然ミスマッチじゃないかなって。
Posted at 2025/07/12 20:31:48 | |
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