
こりゃすげえ車だ。
***
バンとピックアップ両方、ようやく見てきましたよー。
別々の店にあったけど(笑
展示車としては出た直後に見たけれども、試乗車は今の今まで見ていなかったという。
流石に話題の車的な意味では注目度は無くなってきたのか、ランクル目当ての人は居なかったけれども。
それによく見てみると、登場から3ヶ月近くたった割りにはピックアップで試乗車の走行距離が900km弱、バンに至っては500kmも走っていなかったので、初期の頃にお試しでそれなりに乗られた以降は殆どお飾り状態だったのではないかと思うレベルの走行距離である。
***
■ランドクルーザー70ピックアップ

モノとしてはバンより全長が約45センチ(!)長くなり、逆にバーフェンが無くなるので幅は10センチナローになる。あとはタイヤがチューブタイヤで径もバンより一回り大きい物が装着されるという、完全実用仕様になるけど後は一緒。
その全長はトヨタの中ではセンチュリーと同じという長大なものであるけれども、それ以上に最小回転半径が7mを超えるという、乗用車ではあり得ない超大回りな小回り性能のお陰で、そもそも店から道路に出る時の転回からして結構辛い(笑
そもそも、ドラポジ自体もキャブオーバー車に近いような完全なアップライトな腰掛けスタイルなので、ボンネットが鼻先に付いているとはいえ完全にドライブフィールはトラックのそれ。
更に異様に高いフロア高のお陰で普通のSUVやミニバンと比べても更に高い宙に浮いているような視界と、真四角であるが故の見切りの良さ。
ウエストラインと比較してヒップポイントが高いので開放感も妙にある。
そして乗ってる時は気づかなかったけど重いクラッチに、これは明らかに最近のワイヤーリンケージMTと違う、エンジンの鼓動に反応してタッチも変わるダイレクトだけどやはり重くて渋いシフトレバー。
(ハンドルは普通に軽い)
乗り方が分かってないと店の敷地から出る前にもうギブアップしそうな車である。
こういうのを見てみると、同じカテゴリーで括られることも多いジムニーも、JA時代の車は末期でもまだこういう荒々しい空気もあったけれども、JB23にもなると結構乗用車なんだって思ったりするのである。
***
ドライブトレーンは1GR-FEに5速MTのみという漢らしい組み合わせ(つーか海外仕様のままだ)であり、04年まで販売されていた日本仕様のようなディーゼルエンジンやATはない。
アイドリング音なんかはV6ガソリンたる1GRの音そのものなので、ここだけ聞いていると乗用車なのだけれども、一旦アクセルを開けて走り出すと、このエンジンってこんな荒々しいフィーリングだったっけって思うくらいガロガロブロロンと唸り、そして大排気量NAエンジンらしく低速から豊かなトルクで巨大なナナマルのボディを悠然と走らせる。
それでいてガソリンエンジンなので、結構吹け上がりはシャープだったりとか、クロカンらしからぬ「プレジャー」もあるエンジン。
とはいえ、昨今のクリーンディーゼルブームや、そもそもナナマルの実用ユーザーのことを考えれば、ディーゼルもできれば欲しかったところで、海外仕様には存在する1VD(V8ディーゼル!)は極端にしても、ハイエースやかつてのプラドの1KDじゃダメなん?って思ったけれども、自分としてはやはり最近のクリーンディーゼル車と、或いはかつてのナナマルに載っていたエンジンのことを思うと、こう思うのである。
かつてのナナマルのディーゼルエンジンって、少なくともバンモデルについては1HZや1PZのような、大排気量
NAディーゼルのみの設定だったのである。
しかし、昨今のクリーンディーゼルエンジンというのは押し並べて少なめの排気量に高過給圧のターボが組み合わされるのであるが、これらのエンジンっていうのは非過給域ではトルクがまるで無い。
そして、これらのクロカン車というのは、極悪路では地面を舐めるように走る手前、そういうターボエンジンでは過給が掛からない領域も多用することになる。
この辺りは多少パーソナルユースも考慮しなければならないクロカン車ではあまり顧みられないけれども、完全に実用車である大型トラックなんかでは重要な要素で、クロカン車のように低速で悪路を駆けまわるダンプなんかはギリギリまで大排気量NAが好まれていたりした。
となると、理想はターボで大排気量の1VDだけれども、イマドキ排ガス規制を通すことが非現実的なNAディーゼルや、或いは日本向けでも調達が容易だけれどもクロカン車との相性の悪そうな最新のターボディーゼルを無駄金掛けて改修して使うよりは、ガソリンであっても大排気量NAに拘る方がよりこの車に合った選択になるのではないかと。
1GRのトルク感、そしてこの下のトルクの無いターボエンジンでクロカンすることの辛さや、典型的なクリーンディーゼルエンジンのデメリットを身をもって体験している身としては、実際最小のコストで最適な答えを導き出すという意味では、実に理にかなった選択だと思うのである。
***
ギアリングは意外にも1速発進前提のようだ。
ジムニーなんかは2速だったが。
ギア比自体は1速はクローリングなんかにも使うための超ローギアリングだから、1速で出ると全く車速が乗らないのだが、かといって2速で出ようとすると高くて少々辛い。
走り自体もやはりギア自体が低いので、あんまりスピードは出ない。
そもそも視線・重心が高いので、怖くてスピードが出せない(笑
***
快適性の面で言うと、ピックアップはどうも遮音性に関してはあんまり考えられていないのか、エンジンの荒々しい咆哮以外にも、ギアの唸り音とかボディ・フレームの軋み音なんかが普通に入り込んでくるので、走っていると「トラックだこれ!」という以外に無い(笑
ただ、ホイールベースが長いせいか、ピッチングとかの動きは貨物車特有の後輪荷重の軽さとか、或いは高圧のチューブタイヤとか、乗り心地の面ではマイナスになる要素満載の割には望外に穏やかで、特に路面がいいところでは結構ソフトな感じも受ける。
でも路面が荒れてくるとそれなりにバネ下の重いリジットサス特有の揺さぶられ感とかが出てくるのはお約束である(笑
***
■ランドクルーザー70バン

基本的な部分としてはピックと全く変わらないので、乗り味的な差しか書くことはないのだけれども、実際のところホイールベースが40センチ違うというのは、特にピッチング特性には非常に大きな影響があるようで、乗り味がまるで異なっている。
正直なところそういうところの乗り味という意味では、バンも決して小さい車ではないのに、ピックと比べてしまうとちょっとした路面の凹凸やうねりに遭遇する度に常に跳ねているような乗り心地となり、実際のところ案外快適性ではピックアップの方が快適に感じるのではないかと思う。
とはいえ、静粛性なんかは明らかにこっちの方が高かったり(少なくともギアの唸りとかボディの軋みとかはあんまり気にならない)、チューブレスラジアルになることによるタイヤ自体の緩衝性能とかのお陰で、細かいところのアタリは流石にソフトだったりと、そういう意味ではこちらの方が乗用車っぽい気もするが。
ただ、ピックアップよりはマシとはいえ、それでも6mを超える最小回転半径から来る取り回しの異様な悪さや、よじ登るようにしないと乗り込めない乗降性とかは相変わらずなので、やっぱり乗用車として使うにはかなり無理があることには変わりない(爆
***
ただ、それらの乗り味が古臭いのか?と言われると、正直FRベース+ラダーフレーム+前後リジットサス+ボールナットステアリングといった基本構造の車はジムニーも全く一緒だし、妙にオーバークオリティな感じも一緒なので、ジムニーをクッションにして考えると別に変な気は全くしないっていう。
たぶん、FFベースの乗用車しか知らないと「なんだこれ」ってなるんだろうけど。
というか、むしろ基本設計の面においてナナマルと23ジムニーですら15年は離れているのに、そういった共通項から生まれる乗り味の近似性の方が結構印象に残ったりとかね。
***
しかしながら、ホントナナマルって高く売れるんだな(いきなり手放す前提の話)。
普通に売ると仮定すると3年後の想定残価が基準で7割とか、残価設定ローンでも5年で5割余裕で残せますとか、そんな車聞いたこと無いレベルなんだが(笑
単に売るだけだったら、本当に「とりあえず動けば値段が付く」んだろうなぁ・・・。
残価設定ローンとかで買うような車ではないと思うけど。