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トルコンレスATというなかなか珍奇な構造を採るようだが、最初はハイブリッドだけニッサンのJR712Eに類似したモノを積むだけかと思ったら、違うんだな。

全車トルコンレスという、かなり思い切った形にするようで、じゃあ基本となるスターティングデバイスは何になるのかと思ったら、湿式多板クラッチと。

この構造は自動車でもアテーサE-TSのような4駆の前後の駆動制御に使われたりと歴史はあり、トランスミッション方面でもかつてのホンダマルチマチックで有名だったが、ホンダでは経年でのジャダーが問題になり、今はトルクコンバータに変更となっている。

独自構造大好きのホンダが結局トルコンを選んだように、トルクコンバータとはトルク容量に余裕があり、信頼性も高く、トルク増幅や流体クラッチであることのスムーズさがあり、効率面でもロックアップによる直結化があるなど、使い方も多様にあるわけで、かつてのSKYACTIV-DRIVEでもトルコンATをして「DCTに勝るメリットが有る」と謳っていたにも関わらず、このような形に変更するのは何か理由があるのだろうか。こっちのほうが効率がいいとか。

おんなじようなATはベンツがパフォーマンスモデル向けになんか作ってた気がするが、トルクコンバータと比べれば小型軽量に収まり、かつ乾式単板クラッチと比べれば制御パラメータも広く取れる、発進性は1速のギア比で稼ぐとすれば理屈はわかるが、そもそもトランスミッションの構造っていろんなミッションを見ても分かる通り、堂々巡りを繰り返した末に定番に戻ってくるのが常なので（それだけトルコンATとシンプルなMTの完成度が飛び抜けて高い）、5年後辺りからなんかやらかすような気がするんだよなぁ。

パフォーマンスグレード用に用意された、新開発と胸を張るデュアルブーストハイブリッドシステム、「トヨタ初」という非常に控えめな表現から見て取れるように、基本的な構造をよくよく見ると他社のパラレルハイブリッドと同じである。
国産で言えばニッサンのFR用ハイブリッド辺りが一番近く見え、後輪がモーターで駆動されるところも見るとホンダのi-DCD+SH-AWD辺りも類似した構造である。

ただネーミングの妙で他社のハイブリッドと比べると一番強そうに見える。さすがトヨタ。
ある意味ホンダ（2代目インサイト・IMAシステム）に対する優位性を植え付けようと生み出し、今や一企業の宣伝文句を超えて一般名詞化しつつある「ストロングハイブリッド」以来の大ヒットかもしれない。

やっぱりこの名前とターボエンジン付きであることに釣られてデュアルブーストハイブリッドに超期待してる人は多いようだ。

しかし先代モデルに採用され、レクサスにも使われているマルチステージハイブリッド（THSにトランスミッションをくっつけたやつ）とは全く別物、ある意味でトヨタらしさが全く無い構造。

まあTHSのような構造が流行らなかったのはトヨタが特許で固めてしまったので、法的に他社は手が出せなかったからだが、とはいえ半分電気自動車のような構造で他社のハイブリッドよりも高コストなTHSはどのみちトヨタのような巨大資本がコスト度外視または大量生産による強制的なコストダウンを図らなければ、まともに採用するのは無理だろう。

とはいえ大トヨタの製品だけにその辺りは関係ないと思うのだが、FF転換するにあたって、マルチステージハイブリッドはスペース的に採用が厳しかったのか、FF用を新たに開発するほどの見込みが無かったのか。

まあ他社でも実証されている通り、デュアルブーストの構造は高性能と高効率を低コストで両立するには割りと都合がいい。

敢えてクラウン用でこれを開発したことで、FFパフォーマンスモデル用ハイブリッドとしてこれを下方展開していくことは可能だろう。

THSではシステム出力自体は高められても、トランスミッションが無いという欠点は大きいので、数字ほどのパフォーマンスは実は得られていないゆえ。

本来ならそういうのはマルチステージハイブリッドでやるべきだったが、トヨタはその道を選ばなかった。