
事実に基づいて書かれた『高熱隧道:吉村昭著』という小説をご存知でしょうか?
繰り返しになってしまいますので興味のある方は
過去の日記をご覧下さい。
小説を読んで心打たれるものがあり、今回の旅は慰霊が目的でした。
決して物見遊山の観光や山登りが主たる目的ではなかったんですよ😅
とは言えせっかくの機会ですから観光もしっかりとしなきゃww
慰霊の旅がスタートする欅平の集合時間が9時20分。
ですから宇奈月に前泊して紅葉見物と期待したのですが、紅葉はまだ先のようです。


小さなトロッコ電車に乗って宇奈月を後にしますが、

発車して直ぐの鉄橋。
よくもまぁこんな構造物作れましたね。

途中、トンネルが多いですが眼を見張る景色が多く見惚れてしまいました。
ですから途中の写真は次の二枚以外はありませんww

エメラルドグリーンのダム湖にヨーロッパの城のような発電所の一部。
欅平まで1時間20分程の旅だったでしょうか。圧倒される景色に時間を忘れあっという間に到着です。
時間が許せば散策したかったのですが、展望台から一枚撮るのがやっと😭
ここまで来ると紅葉が始まっているようです。
受付を終え荷物検査と金属探知機のチェックを受け、無事にOKが出ました。

ヘルメットを被り工事用トロッコ電車に乗り換えてトンネルを欅平下部駅まで500メートルほど進み、更に巨大なエレベータに乗り換えます。

河川勾配が急過ぎて当時のトロッコ電車では登れず、資機材と共に貨車を丸ごとエレベーターに乗せ200mを2分で上昇するんだそうです。
エレベーター内にはちゃんと線路がありました。当たり前ですけど😅
欅平上部駅の奥には展望台があり案内して貰いました。

奥に見えるは白馬岳

こちらの岩壁には悲惨な出来事が秘められているのです。合掌
小説に泡雪崩が工事関係者の宿舎を襲い多くの犠牲者が出た件が登場しますが、雪崩が宿舎毎吹き飛ばし小高い山を越えてこの岸壁に激突したのです。
対岸の宿舎からこの岸壁まで600m、物凄い破壊力です。
欅平上部駅からはさらに小さなトロッコ電車に乗り換え先に進みます。

この力持ちはバッテリー駆動車だそうです。客車は耐熱仕様なんだとか。
そんな耐熱仕様の客車はいよいよ高熱地帯にさしかかります。
人間の叡智と黒部の底知れぬ力の闘いの場所で、高熱隧道のタイトルにもなっているところです。
岩盤温度が160度にもなりダイナマイトを装填すると自然発火で爆発し犠牲者を出し、熱さのあまりに作業員も逃げ出してしまうような場所です。
そりゃそうですよね、火山地帯にトンネルを掘ろうって言うんですから。
現代のような重機のない戦前の工事ですからどれだけ難工事だったことか。
黒四の大町トンネルで大破砕帯に遭遇した話はよく知られていますが、時代背景からしてもこちらの方が難工事だったと思います。
案内の方が走行中にも関わらず頑丈なドアを開けてくださいましたが、硫黄臭と共に重苦しい熱せられた空気が車内に入って来ました。
現在は冷却設備のおかげで40度ほどに抑えられているそうです。
冷却設備が作動しなければ今でも160度に上昇するんでしょうかね。
耐熱仕様じゃ無ければ大火傷してしまいますね。

撮り遅れ高熱区間の終わりの写真です。
荷物を抱えていたため手を合わせることはできませんでしたが、心の中で合掌してたら出遅れました😅
進む先はトンネルばかりですが、高熱地帯を過ぎると外が見渡せる渡り廊下のような場所で停車。
どうやら駅のようです。

黒部第三発電所の為の仙人谷ダムです。美しいダムです。
多くの犠牲を払い、先ほどの高熱地帯をなんとしても突破しなければならなかったトンネルはこのダム建設のため。
資機材を輸送するルート確保のためだったんですねぇ....
先人達の苦難の歴史があって今の日本があると思うとウルっと来てしまいます。
そんな感傷を吹き飛ばしてくれる峡谷美がダムを背にすると目に飛び込んできます。

白竜峡って言ったかな?違っていたらごめんなさい。
アップで撮ると水の色が実に美しい。

黒部峡谷には十字峡、S字峡など有名なところがありますが、危険な登山道?を2日行程覚悟じゃ無いと観ることが叶いません。
仙人谷駅から進むこと900mほど、上部専用鉄道の終着駅、黒部第四発電所に到着です。
黒部第四発電所は、確か昭和38年に建設された地下発電所で大阪の変電所に供給されていたと思います。
発電所内をたっぷり見学させてもらいましてお土産まで頂戴してきました。


4機の内、2機稼働中でこんな大きな水車が黒部ダムの水を受けてクルクル回って電気を起こすんですねえ....

黒部第四発電所に別れを告げるとケーブルカー、正しくは荷物専用なのでインクラインと言うそうですが、標高差450mほど、距離にして815m、34度の勾配を20分かけてゆっくりゆっくり昇ります。

なんでも地下発電所を建設するために掘られた斜坑で、今は関係者の交通手段やメンテナンス資機材の輸送に使われているそうです。
インクラインから降りると今度はバスに乗り換え

10km先の黒四ダムを目指します。
途中、黒部トンネルの横穴の前で途中下車し、


裏から見る剱岳見学です。
剱岳を充分に目に焼き付けた後は再びバスに乗り込み黒四ダムに向かいます。
黒四ダム到着で関西電力主催の見学会は終了で、黒四ダムで解散となりますが慰霊の旅は後少しだけ。
黒四ダム建設でも多くの犠牲者を出していますので

慰霊碑に向かって合掌して今回の慰霊の旅に幕を下ろします。
あとは定番のダムカレー

をいただき、一人オプションツアーの幕が開くのでした。