
日本滞在の最終日、午後から蔵王温泉に行ってきた。Keiのハブベアリングが完全に壊れていて気になったが、せっかくの一時帰国なのに温泉に行かないなんてあり得ないと思い、高速道路を使わないようにして様子を見ながらゴロゴロと走ってきた。
蔵王温泉はこの前の牽引テストのときも通ったが、夜中だったので温泉には入らなかった。牽引テストは軽量なトラクター(軽自動車)で、主ブレーキなしの牽引重量(Keiの場合は370㎏)を超える重量のトレーラーを牽引した場合の上り勾配、下り勾配での実際の状況を観察するのが目的で、その目的にふさわしい山形道(E48)と蔵王エコーラインをルートに選択した。特に、連続した下り勾配での速度コントロールにトレーラーブレーキがどう作用するかを観察するのが目的だった。
なぜ観察したかったかというと、慣性ブレーキというそのシステムに馴染みがなかったからである。大型のトレーラーは、トラクターからのブレーキラインがトレーラーにも繋がっていて、トラクターのブレーキを踏むと同時にトレーラーにもブレーキがかかる。また、ステアリングコラムにトレーラーブレーキのレバーがついていて、操作するとトレーラーのみに独立してブレーキがかかる。アメリカ仕様の重いキャンプトレーラーは電気式のトレーラーブレーキがついていて、それもトラクターからのブレーキ信号を受け取って設定されたブレーキトルクをサーボモーターの働きで発生させる仕組みになっている。しかし、慣性ブレーキはトラクターのドライバーがブレーキを掛けているかどうかを判別する機能がない。トラクターに対してトレーラーが圧し掛かる力によって受動的に連結器のシリンダーが縮んで機械式でトレーラーのブレーキがかかる。そうすると、トラクターのドライバーがブレーキを踏んでいようといまいと、エンジンブレーキや排気ブレーキ、リターダーなどの補助ブレーキ(Keiには補助ブレーキはないが)で減速すると、常にトレーラーブレーキが働いて、ブレーキが焼けてしまう心配があるのだ。
結論からいうと、それは杞憂に過ぎなかった。1速でエンジンブレーキを使っていても連結器のシリンダーはまったく縮まず、トレーラーブレーキは働かない。それどころか、普通に運転するときのような穏やかなブレーキング(0.2G程度の減速度)ではシリンダーは縮まない。まだやったことはないが、急ブレーキをかけたときだけ(トラクターに大きな制動力が必要なときだけ)トレーラーのブレーキが働く設定になっているようだ。シリンダーの摺動部の痕跡を見ていると、トレーラーを連結してから今まで一度も縮んだことがないようで、今度GoProをセットしてブレーキの様子を撮影しながら降坂テストをもういちどやってみようと思っている。
テストの結果、連続した下り勾配でブレーキが焼ける心配はなくなった。しかし、トラクターに大きな減速度を与えないとトレーラーブレーキが作動しないとなると、別の認識が必要になる。それは、通常減速時のトラクターのブレーキの負荷が大きくなるということと、滑りやすい路面ではトラクターに十分な減速度が生じず、トレーラーブレーキが作動しないので、トレーラーとトラクターを合せた質量をトラクターのタイヤだけで止めることで、制動距離が大幅に伸びるということだ。後者は、トレーラーにABSがないことからすると、やむを得ないことだと思う。もし、トラクターにのみABSがある状態で急ブレーキをかけた際、トレーラーブレーキも作動すると、トレーラーのタイヤだけがロックし、激しく横滑りして車線からはみ出す心配がある。トレーラーが横滑りすると重大事故の危険があるので、それよりはブレーキが利かず制動距離が延びるほうがまだマシということだ。それから、以前雪道ではトラクターの後輪とトレーラーの車輪にタイヤチェーンをかけるつもりと書いたが、これは意味がない。雪道ではトレーラーのブレーキが働くことはないのだから。制動距離を縮めようと思えば、トラクターの全輪にチェーンをかけたほうが、まだ効果がありそうだ。
なんでも自分で試してみるもんで、ネット上の情報だけで分かったような気になってはいけないと改めて思った。
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トレーラー | クルマ
Posted at
2019/09/01 01:13:58