昨日の記事でキャリーの安全性向上を評価したところなのだが、でもやはり、軽トラック、軽バンの安全性には不安が残る。それは、保安基準やJNCAPのテストをクリアするか否かという問題ではない。また、車体の最前部にドライバーが乗っているということに対する不安でもない。不安の原因は、フロントサイドメンバーの高さが低いことである。
フロントサイドメンバーは車体の最前部に進行方向に向かって2本延びている部材で、前面衝突の際の荷重を受け止め、それ自体が収縮しながら衝撃を吸収する役割を担っている。軽トラにもフロントサイドメンバーは存在する。
その高さを測ってみると、サンバーで40センチである。他社の軽トラでもみな同じような高さである。それは、キャビンの床下にサイドメンバーを配置するという構造上、高さが制限されるからである。
軽トラ以外の車種のサイドメンバーの高さはどのくらいだろうか。Keiのサイドメンバーは、

ボンネット内側から車体外装のどのあたりにサイドメンバーがあるか確かめて

巻尺で測ってみる。約50センチである。
プジョー308はどうか。

約62センチである。
サイドメンバーの高さにどうしてこだわるかというと、サイドメンバー高さが異なる車が正面衝突した場合、低いほうの車に高いほうの車のサイドメンバーがフォークのように突き刺さり、低いほうの車の乗員に大きな被害を与える可能性があるからだ。軽トラとKeiなら10センチ差だから辛うじてサイドメンバーがかみあう可能性もあるが、軽トラと308なら20センチ差で確実にすれ違うだろう。308の強固なサイドメンバーは軽トラの脆弱なキャビン部分に突入することになる。想像したくもない惨状である。

図にしてみた。赤い部分がサイドメンバー。左が軽トラ、右が乗用車である。サイドメンバーが相手車の下に潜っても、乗用車ならエンジンルームがあるのでまだ緩衝の余地があるが、軽トラなら乗員の身体に直撃である。
次に、トラックに追突する状況を考えてみる。大型トラックには後部突入防止装置(バンパー)が装着されており、
その高さは地上60センチ以下でなくてはならない。多くの突入防止装置は50~60センチあたりにあるだろう。そこにサイドメンバー高さが40センチの軽トラが追突したらどうなるか。強固なサイドメンバーはほとんど荷重を受けることなく大型トラックのバンパー下を潜り、その上のキャビンが大型トラックの荷台部分に叩きつけられることは容易に想像できる。サイドメンバー高さが低いことは、キャブオーバー車では特に安全性に悪影響を及ぼすのである。
保安基準やJNCAPの試験結果はともかく、合理的に考えれば構造上軽キャブオーバーは前面衝突に対してかなり脆弱だということは否定できない。保安基準の衝突速度が56km/hと低い(64km/hが一般的である)のも、軽自動車の対応が困難であることに配慮した結果なのだろうと思う。だがしかし、安全性の底上げをはかり安全のためのコスト負担を企業や消費者にある意味で強制することが保安基準の目的ではないだろうか。現状追認的に緩和された基準を用いるのは本末転倒のように思われる。
運転日報(Kei)
天候:晴れ 一時 雨
積算走行距離:119125キロ
走行条件:市街地
乗員:1名

Posted at 2013/09/01 20:58:22 | |
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