今販売されている乗用車には、乗員拘束装置としてシートベルト、シートベルトプリテンショナー、シートベルトフォースリミッター、そしてSRSエアバッグが装備されている。この点では、国産車も欧州車も変わりない。そして、衝突試験のJNCAP等では欧州車も国産車も変わらない成績を収めている。しかし、欧州車と国産車では決定的な違いがある。欧州車では衝突衝撃の大きさに応じてプリテンショナー→エアバッグの順で作動するのに対し、国産車は小さな衝撃でプリテンショナーとエアバッグが同時に作動するのだ。そして、この違いは衝突試験ではなく実際の事故の場面で安全性に大きな影響を及ぼす可能性がある。
なぜなら、エアバッグは作動時に爆発的に展開するから、エアバッグ作動それ自体によりケガをするリスクが存在するからである。エアバッグはそれこそ「最後の手段」であり、乗員の致命的なケガを防ぐために必要な場面だけ展開すれば十分なのだ。だから、リスクの小さいプリテンショナーをまず作動させて、致命的な衝撃を受けた場合のみエアバッグを作動させるのがより安全だということになる。国産車のように小さな衝撃でプリテンショナーとエアバッグが同時に作動すると、プリテンショナーのみで十分な場面でリスクの大きいエアバッグを展開することになってしまう。
それに、衝突衝撃が2回以上加わるような事故の際、小さな衝撃でプリテンショナーと同時作動する国産車のエアバッグは十分な保護性能を発揮できないおそれがある。たとえば、高速道路でコントロールを失って、まず中央分離帯にぶつかって跳ね返ってから左側の防護壁に衝突するような場面で、最初の小さな衝突でエアバッグを展開してしまうと、続いて起こる大きな衝突の際にはエアバッグが使用済みになっていて役に立たないということが起こるのだ。エアバッグは1回だけ、しかも一瞬しか作動しないから、本当に必要な場面まで大事にとっておくべきなのだ。
カタログの安全装備のリストに書いてある内容やJNCAPの星の数は同じでも、メーカーの設計思想により実際の安全性能は大きく異なるものなのかもしれない。
Posted at 2010/08/15 18:55:44 | |
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