
ボディカバーを専門に永らく販売を行っております弊社、仲林工業ですが、会社ですので当然のことながらたくさんのお手紙・封書が届きます。
ほとんどが取引先の会社さまや商品を購入した先からの請求書、またダイレクトメール、チラシ、どういう経緯で届くようになったのか(?)アダルトDVDのパンフ、、、
うれしいのが、ボディカバーを購入くださったお客さまからの、使用感を含めた感謝のお手紙です(誠にありがとうございます!)。
写真付きなどでも、よく頂戴します。
そして定期的に届くのが、「商品化を検討いただけませんか」「一緒に開発しましょう」という新商品のお誘い。個人さまであったり、発明団体さまであったり、送ってくださるところはさまざまなのですが、
ボディカバーの新しい構造に関するアイデアや、新たなオプション機能についてのアイデアが、
細かな図解とともに文書で説明されており、
「一緒に商品化しましょう」「特許取得しておりますので、是非、商品化を」と申し出てくださるのです。
私も、到着した内容に対しましては必ず目を通しておりますが、
誠に失礼ながら、カバーとしては致命的なアイデアだったり(大変、申し訳ない表現ですが)、物理的に商品としてなり得ないものだったり(※1)、、、
(※1)カバーを装着したまま車を走らせる、水中でもそのまま泳げるようにする、等といった内容です。
実用化に向けて検討させていただいたものは今までひとつとしてないのですが、
東日本大震災があってから、その新アイデアの内容で、
極端に増えたものがありました。
それは、
「
大地震のときに、車を確実に守れるカバー」です。
お電話まで頂戴し、「これは、地震に不安を抱える今後の日本で絶対に売れますから!」と、熱く語ってくださった方もおられました。
「大地震のときに、車を確実に守れるカバー」。例えば以下のような構造です(※2)。
(※2)相手さまのアイデアゆえ、具体的な構造は表記できませんので、表現や付属アイテム等変えております。
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地震を感知した瞬間に、車がカプセル状に包まれるカバー
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空気を孕んでいるため、津波が来ても沈まずそのまま流され、衝突の衝撃からも守られる。
カバーに番号などを振り分けておき、地震が収まってから、車を探し出す。
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浮き輪の装備されたカバー
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大地震による津波に襲われても、水没から免れる。また、浮き輪がクッションとなり、
安全に車は水面上をたゆたい、カバーに保護されていることから傷がつきにくいまま流されることになる。
このような内容のカバーを提案されています。
共通しているのは、あくまで「
大地震などの災害から愛車を守る」というコンセプトなのですが、
私が気になるのは、その発明される方が、被災地から遠いところにおられるようすであること。
もちろん、断定はできませんし、私もそこを突っ込むつもりはありませんが、
実際に地震の被害を体感された方によるアイデアなら、もっと耳を傾けますが、どの文書、どの説明からも、「これは今、売れますよ!」というのが先走った、荒い息遣いが感じられる内容・アイデアに思えてならないのです。
当然のことながら、私も商売人でありますので、
今、売れるアイデア、アイテム、商材に興味がないわけではありません。
品物を売っている以上、何がよく売れるのか、それに目を光らせています。誤解を恐れずに申し上げますが、お金、大好きです。
私が言いたいのは、お金「だけ」を求めるのは嫌なのです。
再度、誤解を恐れずに申し上げますが、自分が本当に納得した形で、お金を得たい。
それには、お客さまに求められる商品、お客さまがお金を払いたくなる商品、買い替えのときにまた仲林工業にしようと思われる商品、
それをつねに心がけています。
さらに言えば、自分がお金を支払う立場になったとき、納得してこれに指定の金額を出せるか? 何度も何度も、必要になったとき買いたいか? という自問自答を繰り返しながら、カバーの型を作り出しています。
お金は大好きです。
お金がなければ良い商品をお客さまへ提供し続けることもできません。
40年以上つづいた我が会社を維持することもできません。
お金は大好きですが、単純にお金だけがあってもこれらをつづけることはできません。
私も小学生の頃、阪神・淡路大震災を、ある意味で体感しました。
震源地から離れた大阪南部ではありますが、被災された方々は周囲で見かけます。
我が身は安全であったけれど、身内を失くしてしまったひと、
障害を負ってしまったひと、心を病んでしまったひと、住居を失い、移ってこられたひと、移る先さえ見失っているひと、
「被災の形」とはそのひとそのひと、さまざまなのだ、、とそのとき、実感しました。
何が言いたいかといいますと、災害発生時、車を保護する時間があるならば、まずはひとを守っていただきたい。
車がカプセル状に包まれるカバーが実現できれば、車ではなくひとを包んで守っていただきたい。
浮き輪の装備されたカバーなら、それにより、津波に流されないひとがひとりでも多く助かってほしい。
地震対策用の車体カバーの新アイデアが手元に届くたび、そんな気持ちになっております。
言わずもがなですが、新しいアイデアを考案されることを悪く考えているわけではありません。
しかし、せめて地震対策用の商品を発明するならば、地震に遭われた方々や状況を、もっとよく見るところから始めるべきじゃないでしょうか。
そう思えてなりません。
どんな状況でも、愛車を守りたいという気持ちも重々、承知しておりますし、
そのお気持ちを軽視しているわけではありませんこと、
最後に記させていただきます。