プジョー308のステアリングフィールは独特である。独特ではあるが、懐かしい感じがする。どこが懐かしいのか、ちょっと長くなるが説明してみようと思う。
パワーステアリングが登場する以前、車のステアリング機構は「ボールナット式」が一般的だった。「ボールナット式」はステアリング操作力が軽く、悪路でも路面からの入力がステアリングに伝わりにくいという利点がある。反面、操作感が悪く路面の状況を伝えにくいというのが欠点である。その後、小型車を中心に「ラックアンドピニオン式」のステアリング機構が採用された。「ラックアンドピニオン式」は構造が簡単でコストがかからず、軽快な操作感が得られるという利点がある。逆に、ステアリング操作力が必要で路面からの反力を受けやすいというのが弱点なのだが、小型車なら弱点が目立たなくて済む。当初は「ラックアンドピニオン式」でパワーステアリングじゃない(いわゆる「生ステ」)ものが大衆車の主流だった。そういう車では、路面の不整がステアリングにビシビシ伝わってきて、今タイヤが何を踏んでいるのかが手の感触でわかるような感じだった。「ダイレクト感」はバッチリだったのである。
さらにその後、油圧式のパワーステアリングが小型車にも装備されるようになったのだが、ステアリングの操作感という点では「生ステ」のものと大差なかった。低速で操舵するには確かに軽いが、走行しているときの路面からの反力はしっかり伝わってきたし、走りだしてしまえばパワステかそうでないかを言い当てるのが難しいくらいだった。ステアリングが直進に戻ろうとする動きも強くて、カーブの出口で握力を緩めるとスルスルとハンドルが滑って勝手に直進に戻ったものだった。
ところが、電動パワーステアリングが登場する頃から様子が変わってきた。ステアリング機構にやたらフリクション感があり、ハンドルを切るのも戻すのも同じだけ力が要るようになった。路面の感触や反力がまったく伝わらず、まるでテレビゲームのようなステアリングが普通になってきた。メーカーは「ステアリングに振動やショックが来るとクレームにつながる」と思っているのか、ステアリングに伝わるインフォメーションを徹底的にシャットアウトするようになったのである。私がそういうステアリングが「大嫌い」であることは、これまで再三述べてきたとおりである。
プジョー308は、電動パワーステアリング登場以前のステアリングフィールにかなり近い。「308は電動油圧パワーステアリングだから当たり前」なのだが、メーカーはたぶん「電動パワーステアリングが大嫌い」な顧客をはっきり意識してセッティングしたのだと思う。今時の車にしては驚くほど路面の傾きや凹凸、タイヤのバランスの狂いなどがハンドルにダイレクトに伝わってきて、最近のステアリングフィールに慣れている人からすれば「洗練されていない」と言われることは間違いない。308の場合乗り心地は良くて荒れた路面でも滑らかだから、ステアリングの感触とのギャップが大きい。そのあたりが「独特で懐かしい」と感じさせる原因になっている。
運転日報(プジョー308)
天候:曇り
積算走行距離:3092キロ
走行条件:市街地・郊外一般道
乗員:1名
ブログ一覧 |
308 | クルマ
Posted at
2013/03/08 00:12:07