カングーをデイライトの交換作業のため入庫させた際、代車を借りたので久しぶりにインプレッション記事を書こうと思う。今回の代車はシルフィである…と聞いてもピンとこない。車検証を見ると1800ccのエンジンを積んでいるので昔のブルーバードクラスと考えればいいのだろうか。トヨタでいうとプレミオ、アリオンあたりか。レンタカーや社用車じゃないとまず乗ることがない車種である。
まず運転席に座って感じるのは、ペダルレイアウトの違和感である。右足をまっすぐ伸ばした先にはアクセルペダルがあって、ブレーキペダル共に左寄りにある。そのうえABペダルの間隔が小さく高さも同じなので、ブレーキを踏むとアクセルも踏んでしまう。かなり意識して足を捻ってブレーキを踏まなければならない。踏み間違えの危険も大きいのではないかと思う。
アクセルペダルの構造もチープでアクセル開度の微妙なコントロールがやりにくい。ブレーキもそうで、スポンジーな感触で踏力と制動力が比例せず、スムーズに停止させるのに神経を使う。せめてリアブレーキがディスクブレーキなら少しはましだったかもしれないのに、このクラスにしてLTドラムである。ブレーキ操作性は「落第」レベルだ。
後席に移ってみると、これはなかなか良い。レッグスペースは広大だし、ヘッドクリアランスも十分だ。屋根が頭上まであって直射日光を受けないし、ヒーターやエアコンの吹き出し口もある。個人タクシーに使うにはいいのではないか。小型の枠に収まるかは定かではないが…。
トランクは一見広く見えるが、タイヤハウスの出っ張りが大きく蓋のヒンジも侵入が大きいタイプなので、四角い箱のようなものはあまり積めない。
運転してみる。ステアリングコラムかスカットルの剛性感がなく、ハンドルが常にビリビリと震えている。ダッシュボードからもカタカタ、ジリジリと異音が出て気になる。ステアリングフィールは、電動パワステにありがちな切りはじめとアシストのタイムラグのせいで切り過ぎそうになる。中立付近に大き目な不感帯があって、直進するのにステアリングを大きく左右に動かす様は、トラックみたいだ。乗り心地も、ハーシュネス対策のためのブッシュの撓みがブヨブヨとした揺れを招き、フリクション感のあるサスペンションがピョコピョコと車体を揺さぶる、一言で言うと「コストコンシャス」なものだ。シートの座り心地も良くないので、お世辞にも「高級感がある」とは言えない。バンならいいかもしれないが、セダンでそれはないんじゃないか、と思う。
1800ccと大き目のエンジンのおかげか、サイズの割に軽量な車体のせいか、加速は良いので高速に乗ってテストしてみるか、と思っていたら、乗降時にルーフに顔をぶつけてアザを作ってしまった。意気消沈して高速インプレは断念した。サイドシルが幅広くなっているのに、車体側面が絶壁なデザインだから乗降性が良くない。
一般道で乗ってみただけの印象だが、このシルフィの商品力では激戦区であるこのクラス(欧州のCセグメント、北米のコンパクトカークラス)ではまったく通用しないと思う。東南アジアで現地生産してタクシーに使うならまあ、OKか。オーナーカーのマーケットではドイツ車や韓国車がライバルとなり、勝負にならないだろう。近年の日産の凋落ぶりは、「良い車を作らなかった」ことが一番の原因なのでは、と代車シルフィを見て思った。
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クルマ談義 | クルマ
Posted at
2022/06/09 21:11:36