■Motor Fan illustrated vol.82~ニッポンの実力 JAPANESE ENGINE 01~
出版: 三栄書房(2013/08)
夏に発売された号なので、もう何ヶ月も前に読んだのだが、内容が退屈な割には付箋だらけになってしまい、何かレビューが面倒なまま数ヶ月が経過してシマッタ。
■ニッサン エンジン開発トップに聞く 上田隆正(パワートレイン開発本部/エキスパートリーダー)
熱効率的に、1気筒あたりの適正な容量・・・というのは、昔からいろんな書籍で見てきたが、ここでも論じられている。
日産が今後、軽自動車のエンジンを開発する可能性があるかないか、について(※現在は三菱自動車からのOEM)
"3気筒660ccは単気筒あたりの容積に対して筒内表面積の比率が大きく、よって冷却損失が大きいという欠点があります。ベースのポテンシャルはかなり限界に近いのではないかと思います。"
MFiからの2気筒660cc案、3気筒1L案に対しては・・・
"気筒容積400~500ccくらいが熱効率向上の面では有利と判断し、改良を重ねてきました"
そうなんだよね。
本誌から脱線するが・・・
4気筒での1500~1600ccは理に適ってるし、4気筒2000ccはギリギリのライン(1気筒あたり500cc)。
そうなると、
Dセグのセダン・ワゴンなんかでときどき採用されている、4気筒2.5Lあたりはもう、「1気筒あたり」に着眼するとアウトなんだよね。
そして、
軽の3気筒660cc。1気筒あたり220cc。
熱効率的には完全にアウト。
スバルが作っていた、
4気筒660ccなんてもっとアウト。1気筒あたり165ccだ。
でも・・・
ビートのエンジン E07Aが、ノーマルのレブが8400rpmで、「当たりのエンジン」ならリミッターカットするだけで10000rpm回ってしまうのは、
「ホンダだから」(※他の軽自動車のエンジンに不可能な説明はコレ)
「ややオーバースクエアだから」
という理由だけではなく、ピストンが軽く小さいから・・・という理由もデカい。
(バイクのエンジンとかもそうだよね)
熱効率を無視。エコではない。
でも・・・ロマンがあるではないか!
私は懐古趣味が嫌いで、最新テクノロジーを追いかけるのが好きなタイプだが、このテのロマンを追い求めると、残念ながら今の潮流では22年前(もうすぐ23年前)のクルマに乗り続けることになってしまう。
(いや、「高回転型」にロマンを感じる時点で既に、懐古趣味というかオールドタイプなのか・・・)
■SPECIAList for J-ENGINE 三菱重工業 傘中空バルブ
"日産GT-Rの2012年モデルから採用されている"
"日本が世界に誇り得るエンジン部品のひとつ"
として紹介されている。
「ナトリウム封入バルブ」とは、冷却媒体としてのナトリウムをバルブに封入し、摺動運転時の「シェイキング効果」で熱を傘部からバルブシート及びバルブガイドに高速に逃すことで
・バルブ破損
・ノッキング抑制
・デトネーション防止
を狙ったもの。
ノッキング抑制、デトネーション防止は魅力的だな。とても。
ノッキングマージン稼げれば、ハイブーストできるし。
本誌から脱線だが、こないだ、ホンダの中の人に
「つい最近発売されたN WGNって、N BOXと何が違うんですか?一緒に見えるんですケド・・・」
と訊いたところ、
「良く訊いてくれました。エンジンが違うんです(笑)」
と回答された。
N WGNから、S07Aのバルブがナトリウム封入になったとのこと。
ほほう。GT-Rのような高価なターボ車ならともかく、軽のNAに投入とは、ホンダなりの「攻め」なんだろうな。
ナトリウム封入バルブのコスト差ってどうなんかな?結構ありそうなイメージだが・・・。
■マツダ エンジン開発トップに聞く 人見光夫(執行役員/パワートレイン開発本部長)
●REについて
"REは、機が熟せばいつでも出せるようにという気持ちで研究開発を進めています。"
ロータリーについてはこの一文だけで、後はもちろんスカイアクティブ、特にディーゼルの話題なので、これまた本誌からは脱線なのだが・・・
2007年頃は「RE13B RENESIS」の後継ロータリーエンジンとして「RE16X」という型式が存在した。
実物も「人とくるまのテクノロジー展」だか何かで見た気がする。
「RE16X」。1600cc=800cc×2ローター。
2007年頃はマツダのコンセプトカーも特に絶好調だったので(「大気」など)、「RE16XでのRX-7復活」の噂があり、楽しみにしていた人も多かったハズ。
しかし、
RX-8の製造中止・・・
リーマン・ショック・・・
元マツダの畑村耕一氏による「ロータリーは何故ダメなのか」「何故未来のないエンジンなのか」をあらゆる角度で丁寧に解説した記事・・・・
(※畑村氏の解説は本当にわかりやすいが、思想がダウンサイジング過給とミラーサイクルに偏り過ぎなのでMFiが畑村氏を担ぎすぎなのは、ちょっと危険)
そしてスカイアクティブの好調っぷり・・・・
・・・から、マツダが「ロータリーエンジンの基礎的研究は継続する」と公言しつつも、正直「完全に凍結している」もんだと思ってた。
でも2013年に入って、この人見氏がポツポツとREの開発が順調に進んでいるということを語っているんだよね。
RX-7の復活でも、ロードスターへの搭載でもいいけど、ロータリーの復活はロマンだなあ。
(個人的にはロータリー好きというワケでもないのだが)
●スカイアクティブの圧縮比14とノッキング
スカイアクティブではガソリンエンジンも14という高圧縮比であることは周知。
近年、世界的に圧縮比はどんどん上がっていく傾向(911ターボなんかも高いんだよ)だが、14は特に高い圧縮比。
これを、「バルブ遅閉じ」で有効圧縮比を下げることにより、実圧縮比が14でも「有効圧縮比」を可変(14としない領域では下げる)ことでノッキング回避している。
私もレガシィB4(BL5A)でECUをやっていた頃、有識者にそういう概念・制御の仕方があることを教わって、ハイブースト領域では、バルブタイミングにより有効圧縮比を下げる方向のセッティングを試行錯誤した経験がある。
懐かしいなあ。。。
※参考ブログエントリ:「
【ECU】AVCSバルブタイミング調整」
で、本誌インタビューにおける、高圧縮比について。
"ノッキングが起きてエンジンが壊れたという例は市場から報告されていますか?"
というMFiからの問いに対し、
"壊れるとはまったく思っていませんでしたが、音をいちばん心配していました。圧縮比が高いとノッキング音も非常に大きいのです。幸い、そういう苦情はありません。言い換えれば、攻めればまだまだ性能が上がる、ということです。"
"従来のエンジンだと「クランク角で1度進めるとトルクはこれだけ上がる」という効果が、高圧縮では2倍ぐらい得られます。点火時期を前後に振ったときのトルクカーブの傾きが急峻なのです。逆に遅らせると2倍悪くなります。"
とのこと。
点火時期のトルク効果に圧縮比がそんなに密接に関わっているとは知らなかったなあ・・・。
ECUの適合も幅が広がるが、同時に、適合が洗練されていないと、せっかくのエンジンもゴミになりかねないワケだ。
面白いな。
■スバル エンジン開発トップに聞く 武藤直人(取締役専務執行役員/スバル技術本部長)
元、コアなスバヲタとしては↑こんな写真だけでテンション上がる。
●EJについて
EJからFB、FAへと世代交代したが、依然としてレースシーンやSTI系モデルではFA20ではなくEJ20が使われていることは私も気にはなっていた。
で、実際、
FA20のBRZに試乗して、正直とてもガッカリしたのも事実。
K20A(シビックやインテグラのタイプR)やF20C(S2000)なんかより10年とか遅れてデビューした、同じ2L NAのエンジンなのに、パワーでもフィーリングでも全く追いついていないので。
「ターボを前提にしたエンジンのデチューン版?」と思わせる印象だった。
個人的にはスバルの技術では、ボア×ストローク=86×86のスクエアなFA20では、ターボを積んでもEJ20のようなハイパフォーマンスなエンジンは作れないだろう、と思っている。
で、本誌インタビューでは、スバル自体も見解・悩みは正にそういうところらしい。
"そこが現在の大きなテーマでありエンジン部門では最大の関心事です。まだ、正確には方向性が決まって定まっていないのです。EJのボルトピッチはポルシェの6気筒とほぼ同じで、いま、世の中で水平対向のハイパフォーマンスといえばポルシェ911のGT3ですが、では我われはどのようなパフォーマンスを提供すればいいのか。EJ系の処遇と、その代替をF系でどのようにするかという点は、今後1年ぐらいで決まると思います。"
・・・FBが市場に登場してからもう3年間が経つが、随分長いことお悩みなんですな。
当初はEJを完全にFB・FAに置き換えると言っていたが、
「そりゃパフォーマンスガタ落ちだろ。EJももうとっくに限界だケド」
と懸念してしていた私の予想は当たったワケだ。
果たして・・・?
●直4について
"エンジンは水平対向で。我われは直4エンジンはやりません。"
お、技術本部長、よくぞ言い切った!
「やりません」が実は「やれません」でもOK!!!
■三菱自動車 エンジン開発トップに聞く 竹村純(開発本部長)
読んでていて興味をもてたネタが皆無だった。
MMC乗り、MMC派の方々、ゴメンナサイ。。。
■Supercar Chronicle LANCIA DELTA S4
最近はランチア熱もスッカリ落ち着いたし、ランチア本もたくさんコレクションがあるので新情報なんてないのだが、それでも、ランチアのラリーカーの特集にはちょっぴり胸アツ。
・・・もう何ヶ月間も、カバンに入れっぱなしで持ち歩いている、「Motor Fan illustrated vol.83~ニッポンの実力 JAPANESE ENGINE 02~」もいいかげん読まないと・・・・。せめてホンダの章だけでも。。。
●自動車 書籍レビュー関連目次はこちら
Posted at 2013/12/29 20:54:53 | |
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