社用車のGS450hが酷い事故にあった(別の車線からクルマが横っ腹に突っ込んできたとのこと。写真見たケド、助手席側のドアに大穴が・・・。ドライバーが無事で本当に良かった)ので、代車で来たレクサス LS460。
車検時など、何回か代車で来たことのあるクルマだったが、なんとなく今までは乗る機会がなかったというか、あまり興味もなかったというか・・・で、運転したことがなかったのだが、LSもモデルチェンジしてしまっているので、今のうちに乗っとかないと未来永劫運転する機会がなさそうなので、短時間だケド、運転させて頂いた。
※LSの購入層がまず行わない試走と、LSの購入層とはまるで無関係な価値観での試乗レポートなので、レクサスLSの購入検討をされている方は本ブログエントリを御参考にされないようお願い致します。
■Lexus LS460 (DBA-USF40-AEZQH)
●エクステリア
初代セルシオが1989年に登場したときは、中学生ながらに感心したもんだった。
それまでの日本の高級セダンが、ダメなフォルムを、装飾過剰なディテールで誤魔化して高級感を出そうとして失敗しているのに対し、初代セルシオはシンプルで、流麗なフォルム、特にフロントフェンダーなんかの面処理がキレイだなあ・・・と感心したもんだった。
2代目以降、セルシオはモデルチェンジする度に劣化し続けたと個人的には思っている(今でも初代が一番モダンなデザインだと思う)。
で、レクサスというブランドが立ち上がり、「セルシオ」がこの「レクサスLS」と変名して登場したとき、私個人としては
「おっ、今度のは巧いな!」
という印象をもった。
妥協なく徹底して面や線を煮詰めた印象で、ディテールもシンプルさと綺羅びやかさのバランスが良いな・・・と。
塗装などの仕上げのクオリティも素晴らしいな・・・と。
一時期のセルシオは完全に「メルセデス・ワナビー」に陥ってたが、このLSはそうでもないと思う。
ただ、残念なことに(?)
LS600hL>LS600h>LS460
と、同じデザインのクルマなのに、グレード間でかなりオーラが違う。
その象徴が↑のヘッドライトなんだろう。(※写真はLS460)
LS600hでは小糸製作所の自慢の一品となるLEDヘッドライトが「世界初採用」となっており、コレがかなりカッコイイ。
(ソースはナイが、確か、レクサスLS600hでLEDヘッドライトを採用するために法改正までさせたんじゃなかったっけ?)
LS460のヘッドライトもちゃんとカッコイイのだが、LS600hのそれを知っていると貧相に見えてしまうのが悲しい。
バングルブットなどの引用はあるものの、特にBMWワナビー感もない・・・・・と思う。たぶん。
●インテリア
内装デザインも巧いと思う。
インテリアの質感はドイツ御三家では
メルセデス>Audi>>BMW
だと思うが、それらとは別路線。
ドイツ車とは異なり、トヨタらしく「高級車としての演出」のある内装だが、ゴテゴテ下品な感じにせず、シンプルで清潔感のあるデザインに成功しているのではないかと。
インパネも独創的だケド、シンプルで見やすくてイケてると思う。
ステアリングホイールにはパドルシフトが付いている。
左手がシフトダウン、右手がシフトアップ。すぐに慣れた。
後述するが、8ATの制御がクソなので、このパドルシフトは結構役に立った。
●エンジン+ドライブトレイン
↑エンジンルームの全面カバー・・・。
個人的には、ボンネットを開けて、もう一面カバーがある理由が正直ワカラン(LSのオーナーが自分でボンネットを積極的に開けるイメージがないため)。
まるで空力対策のようなカバーデザインだが、カバーが空力的に役に立っているとも思えない。
ひょっとすると、遮音対策には役立てようとしているのかもしれないが、後述するが結構下品なエンジン音は車室内に飛び込みまくってた。
・・・結局、意匠・化粧のためのカバーなんだろう。
考えすぎとも言えるが、裏を返すと、
「レクサスLSにとって、このV8エンジンは見苦しい恥部なんです」
と言っているワケで、個人的には残念だ。
工芸品のようなエンジンを作って、「さあ見てください!」というワケにはいかないのかな?
(少なくともLF-Aは見せる方向)
エンジン諸元
型式:1UR-FSE
V型8気筒DOHC
総排気量: 4608[cc]
最高出力: 283[kW] (385[ps])@6400[rpm]
最大トルク: 500[Nm](51.0[kgf・m])@4100[rpm]
燃料供給装置: 筒内直接+ポート燃料噴射(D-4S)
ボア×ストローク: 94.0×83.0[mm]
圧縮比: 11.8
・・・500Nmってデカいトルクだなあ。
オーバースクエアなボア×ストローク比もちょっと意外。
乗ってみた感じは、結構下品なエンジンだなあ・・・と。
音が悪い。
「ビュローーーッ」
という感じの糞詰まり感のある音を出す。
トヨタの高級セダンって大昔から「車室内無音」を売りにしてきたイメージなのだが、このLS460も下品なエンジン音が大きいし、
新型GS450hも
旧型GS450hも雑なエンジン音が車室内に飛び込んでくる。
個人的にはGS450hのV6の掃除機っぽい雑味と違って、LS460のV8の方がもっと下品な感じがする。
最近の欧州やMFiの「ダウンサイジング過給偏重」もちょっとウザいが、V8やV6でこういうクオリティしかできないなら、いっそ直4ターボとかでも良いのではないかと思う。
そういえばV8ってあんまし乗ったことがない気がする。
E92 BMW M3のエンジンはV8だったケド、スゴい精密さの伝わってくる工芸品のようなエンジンで、なんともシャープなキレ味だったなあ・・・。
・・・と、音は下品な1UR-FSEだが、トルクは流石の500Nm。
1980kgという極悪車重にも関わらず、かなりの加速性能。
ただし、8ATの制御がクソで、基本的に省燃費のために早め早めにシフトアップされているもんだから、アクセルベタ踏みしてからのキックダウンによるシフトダウンにかなりのタイムラグがあり、正に昔のドッカンターボのようだ。
(昔のドッカンターボが好きな人にはツボかも)
マニュアルモードにして、パドルシフトで運転すると、エンジン自体のトルクがスゴいことがわかる。
広い道でのUターン時に、ステアリングをある程度切った状態で、アクセルペダルをドンと踏むと、いとも簡単にホイールスピンしてタイヤスモークを上げ、テールスライド、スピンターンしてくれる。
面白いではないか!
GS450hはハイブリッドなので、電動機によって低速トルクがよりゴツいイメージだが、Uターン時にこんなに過激な動きはしなかったと思う。
たぶん、LS460の方がハイブリッドじゃない分、制御過多じゃないんだろう。
あんましESC(横滑り防止装置。トヨタではなんて言うんだっけ?)とかトラクションコントロールの類が働いてる感じはなかった。好ましい。
●足回り
最初、サスのモード切替設定が付いていることに気づかず、普通にニュートラル設定で乗っていた。
極悪なピッチングだ。このあたりはクラウン直系。
急減速と、急加速のテストを繰り返したのだが、ブレーキング時のノーズダイブも、加速時のリアの沈み込みも、今までに他の車種で体験したことのない過激なピッチング。
速く大きいストローク。
1980kgという車両重量に対して、著しくバネレートが低いんだろう。
固有振動数、相当低い。
ニュートラル設定での試走はたったの5分間弱だったと思うのだが、運転している本人である私がモロにクルマ酔いして、試乗後1時間以上、吐き気が収まらなかった。
それでも、ピッチング後の収まりはクラウンなんかよりはマシな気がする。
ダイブしても、何回も揺動したりはしてない気がする。
意外だったのは、このサスにして、コーナリング時にあまり激しいロールを感じなかったこと。
車重に対してスプリングレートはめちゃめちゃ低いが、比較的シッカリしたスタビライザーでも入ってるんだろうか???
サスペンションのモード切替スイッチの存在に気づいて、「SPORT」モードにしてみた。
ウソみたいにピッチングの挙動が変わった。
ジワーッとゆっくり沈み込む。
これなら酔わない。
サスのモード切替スイッチが付いてるクルマにはいくつか乗ったが、ここまで露骨に違いが体感できたのはハジメテだ。
オモシロイ!これは値打ちあるわ。
単純にダンパーの減衰変えているだけなんだろうか?他にも何か可変させてるのかな??
ただ、じゃあ、SPORTモードの足のセッティングが、先代GS450hと較べて好みか?と訊かれればノー。
そこはやっぱり、最初からの方向性によるクオリティ差があるよね。
SPORTモードと、ニュートラル設定で、こんだけ劇的な差があったワケだが、試乗時に試さなかった「COMFORT」って一体どうなんだろう・・・?
中立設定であんだけ極悪だったピッチングが更に速いストロークになるのかと思うとゾッとするが、ひょっとして何かもっと別のネコ足的な、フラットライド的なモードになったりするのかな?(・・・だとすると、中立設定の存在意義がないが)
ブレーキは見た目地味だが、1980kgの車重にも関わらず、急ブレーキでの制動距離は短い。
連続してハードブレーキングしたときの熱問題とかはどうかわからないケド、レクサスLSの常識的な乗り方では十二分の性能だと思う。
で、例によってこのクルマも私の苦手なBSのRE050A。
なんか試乗レビューの度にRE050Aをdisってる気がするのでここでは割愛。
●総評
もっと退屈なクルマかと思ってたケド、面白かった。
制御過多じゃないので、意外とドリフトに向くと思うし。
サスペンションのモード切替が強烈に効くし。
もう10年ぐらい経って、ボロッとした見た目になって、中古価格が暴落した頃に、今とは異なるオーラを纏うのかもしれない。
・・・あんまし「高級車に乗ってます♪」的なステータス感はなかったケド、それはこのクルマに問題があるワケではない気がする。
自分がセレブリティになったワケではない(22年落ちの中古の軽自動車と、13年落ちの中古のミニバンに乗ってます♪)のに、
試乗を繰り返しているうちに、どうもそういうのに鈍感になったみたいだ。
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