先日導入したプロドライブ製3ポート・ソレノイドバルブに対応したブーストセッティングを試みた。
安全を見てセッティングした
2008.11.25の時点のROMに基づいてたくさんのデータロギングを行った。
このログを参考に、ブースト・セッティングを改良してみた。
※以下、失敗例なので、決してマネすることなきよう。
■Target Boost B
ブースト・セッティングの方向性は、
2008.06.19のブログエントリ:「
【ECU】ブーストセッティング最終章?」
に基づく。
ノーマルROMとは全く別の発送で、実走ログから、実際に実現可能なTarget Boostのマップを作り、それに対してBoost Errorを極力なくすようなInitial Wastegate Duty Bのマップを作ることで、Turbo Dynamics補正になるだけ頼らない制御を目指す。
今回もTD Integral Cumlative Range (WG Correction)のIntegral Positive Maximumは2.00[%]に抑えている。
実走ログから、3ポート・ソレノイドでは、2ポートのものよりも、低回転域、低スロットル域から高いブースト圧を実現可能だとわかったので、Target Boostのマップはそれに合わせたものとしてみた。
■Initial Wastegate Duty B
■Max Wastegate Duty
■上記セッティングでの実走ログ
かなりフィーリングは良く(モリモリとしたトルク感ではなく、かなりシャープでハイレスポンス)、実際速いと思うのだが、大きなオーバーシュートが記録された。
2速→3速シフトアップ→スロットル開→スロットル戻し
で、
Manifold Abosolute Pressure = 2.50[bar](= ブースト相対圧で約1.5[bar])
を記録してしまっている。
レガシィのタービンには酷なオーバーシュート。
スロットルを抜いた際の負圧が原因とも考えられるが、直前行までTurbo DynamicsによりWastegate Dutyがプラス方向に加算されていたのが原因とも考えられる。
■ブーストセッティングの難しさ(選択ギアの問題)
今までブログで取り上げたことがないが、同一回転数・スロットル開度・Wastegate Duty値でも、どのギアを使っているかで、ブーストの効き方は全く異なる(ターボ車・MT・ブースト計アリの方はご存知かと思うが)。
2速より3速、3速より4速、4速より5速で、同じWastegate Duty値なら、高いギアの方が遥かに高いブースト圧となる。
これは、高いギアの方が高負荷なのが原因だと思われるが、車速に依存して吸気量も異なるためだとも考えている(別の理由をご存知の方、教えてください)。
なので、2速での走行ログを元にInitial Wastegate Dutyのマップを作れば、3速では高すぎるブーストとなってしまう。
で、なるだけ4速での実走ログを取り、それに基づいたマップ作成を試みているのだが、4速の車速レンジは高く、高回転域のセッティングは公道ではなかなか難しいので、3速での実走ログも参考にマップを作っている。
パワーチェックのためだけでなく、こういうセッティングを行うために、スロットルアクチュエータを絡めたシャシダイ利用ができるとよいなあ・・・と思う。
定回転制御、定トルク制御などをシャシダイで行うことで、高車速域も含めた、ムラのない2次元マップのセッティングが容易にできるので。
RomRaiderの最近の定義ファイルでは、ブーストセッティングの中に、
●Boost Compensation (Vehicle Speed)
●Boost Compensation (Vehicle Speed) Disable
という項目がある。
NASIOCの「A Complete Tuning Guide」から以下の説明を引用する。
Boost Compensation (vehicle Speed)
Change in target boost (absolute pressure = sea level + boost gauge reading) below a given speed. So if you're driving below the given speed, the car will use this value rather then the value in the target boost table as the target boost. This is not for performance, but making you car run smoother and easier to drive in traffic.
Boost Compensation (vehicle speed disable)
The speed, above which, the car uses the target boost table table rather then the Boost Compensation (vehicle speed) target boost values.
このBoost Compensationを、選択ギアによるWastegate Dutyと実現ブースト値の問題を解決に役立たせることができればよいのだが、どうも違う。
ここでは「Boost Compensation (vehicle speed disable)以下」「Boost Compensation (vehicle speed disable)以上」というザックリしたスレッショルドでのTarget Boost補正しかできない。
私が行いたいのは、Target Boostは選択ギアに依らず一定のマップで、それに対してのInitial Wastegate Dutyを各ギアにより使いわけたいのだ。
つまり、欲しいマップは「Boost Compensation (Per Gear)」なのだが、残念ながらこういうマップは存在しない。
実は存在するけど、まだ解析されていないから定義ファイルに存在しないのか、そもそも存在しないのかは不明(おそらく後者)。
■ブーストセッティングの難しさ(オーバーシュート)
点火時期や燃調と較べるととにかく難しい純正ECUのブーストセッティングは、上述の選択ギアの問題だけでなく、当然オーバーシュートをどう処理するか・・・ということもモチロンある。
オーバーシュートもInitial Wastegate Dutyマップに対し、状況によってブーストの効き方が違うのが原因なのだが、急速なスロットル操作により、ECUによるWastegate Duty指令値にソレノイドバルブ+アクチュエータがレスポンスの良い仕事をしていないのがひとつの原因とも言える(だからブースト制御だけはEVCという方も結構いらっしゃいますね)。
そういう側面からは、せっかくのDBWなので、燃調にはThrottle Tip-in Enrichmentというスロットル開度変更度合に応じた燃料噴射量加算のマップがあるように、Wastegate Duty用にも似たようなマップがあっても良いのではないか・・・と思う。
そういう諸々のネガティブな要因を考慮した上で、純正ROMではTurbo Dynamicsにかなり頼ったマップとなっているのだと思うが、もうちょっとなんとかならんものか・・・と思う。
BL5Aレガシィはスバル史上初のDBWだったと思うので、詰めが甘いのかもしれないが、このECUサプライヤーであるDENSOにとっても、まだまだ経験不足だったのかなあ・・・・と、素人ながらに。
(あるいは、DENSOがスバルをナメていた?)
個人的にはブースト・セッティングは点火時期や燃調よりも遥かに奥が深く、正解を見出し難い(というか正解などない?)ので、とても面白い。
●レガシィB4(BL5A)のECUチューン関連目次はこちら
●レガシィB4(BL5A) 関連目次はこちら