今回のヴァルヴスプリングの折損のクレームのプレス・リリースをもう一度読み返して、それを素人なりに解釈すると。
「スプリングの材料の中に異物が入っていて、そこからスプリングが折れてしまいました。色々と努力しましたが、完全に治す事が出来ず、最終的に、異物が入っていても折れないように、スプリングを太くして丈夫にしました。」
少々、乱暴な解釈だが、おおよそ、多くの人はこう理解したに違いない。
前回もブログしたが、どう考えても「異物混入」の対策と「太くする」という相関関係が見出せない。
ちょっと、ここでエンヂンのヘッド周りヴァルヴ近辺のお浚いをするが、
学生時代の参考書より。OHCエンヂンのベーシックなヴァルヴの構造だ。
カムシャフトによって、ヴァルヴが上下してエンヂンのシリンダー内に、混合気を入れたり、燃焼スミの排気ガスをシリンダーから排出する機能がある。
押し下げるのは、カムシャフトの凸部でできるが、下がったヴァルヴを戻すにはスプリングの反力が無いと下がりっぱなしになってしまう。。。
クルマが10万キロ走行したら、一般的に100万回はヴァルヴとスプリングが上下をした事になるとも言われている。
(ざっと計算すると、6,000min-1で 50回/秒 の上下をしているのだ。・・・閑話休題)
下の画像は、出所は内緒だが初期の日産で使われていたレーシングエンヂンのヴァルヴ構成部品の画像なんだが、このエンヂンではバネがダヴュルになっている。
究極のレースシーンで、強度を確保する為にダヴュルスプリングを採用している。
これを設計した方にお話を聞く機会があった。氏曰く
「バネレートを上げられて、重量を軽くするためにはシングルを使いたかった。しかし、当時の技術では、バネレートを上げて巻き数を減らすと、必然的に線径を太くすべきなのだが、やはりバネの断面に大きなストレスが掛かって耐久性に難があり採用できなかった。」
これは、どういう事かといえば、高校の教科書でも出ていた公式だが
スプリングを語るうえでの基本的な係数たち
G(剪断弾性係数) × d(線径)4乗
K(バネレート)= ---------------
8 × D 3乗 × n(有効巻数)
Gは「剪断弾性係数」は、教科書では「8,000kg/mm2」と習った記憶がある。
バネレートを大きくするには、この式から紐解くと、D(巻き径)か、n(巻き数)を減らすか、さらに d(線径)を太くするのが有効と分る。
特に d(線径) を太くすると「4乗」で効いて来るので、技術者としてはスプリングの断面寸法、つまり線径を太くしたいのだが、ここで大きな問題が出てくる。
バネが太くなれば太くなるほど、断面においての「捩れ」も大きくなり、捩れるという事は、バネの断面に破断させようとする力が大きくなるので、破断しやすくなるとも言えるのだ。
さらに、ちょっとでも表面に傷があれば、捩れの力が強い分だけ、さらに破断しやすく・・・という次第だ。
まぁ、ここに述べた論理は、高校の教科書レヴェルのハナシなんで、熱とか、共振とか、もろもろの二次的な要因は、まったく考察されていないのだが、この式を見ても、折損防止に
「バネを太くした」 という論拠は可笑しい・・・と僕は思ったのだが。。。。
しかし、ここまでトヨタのヴァルヴスプリングの製造技術が怪しいのなら、もはやオットーサイクルの高性能なレシプロエンヂンの製造は、トヨタでは出来ないとも究極には言えるかもしれない。。
材料不良を、重量や、さらに強度に不利な形状変更で対策するっていうのだから、こりゃ世界中からトヨタは愚か、日本の工業技術に疑問符が付いてしまう可能性だってあるからだ。
さらに数千キロしか走っていないのに、ヴァルヴが折れて修理するハメになったら・・・実際に北米では恨みを込めて(?)こんな動画も出回っている。。。
そんな矛盾だらけの対策しかできない技術力しかなく、ヴァルヴシステムに「スプリング」が使えないとなると・・・・
かつてメルチェデスのレーシングエンヂンに採用されていた「デスモドミック」がこれだ!
昔のメルチェデスのレーシングエンヂンや、モーターサイクルのデュガティに使われていた「デスモドミック」くらいしか対策が無い様に思えるのだが・・・・さてさてトヨタの懸命な技術者の皆さん如何なモンだろうか?
冗談はさておいても、今回のヴァルヴスプリングの問題の真偽は、いつか解明されるのか?
トヨタの発表を鵜呑みにするくらい、ユーザーはそこまで、技術に不明じゃないとも思うのだが、どうだろうか??それとも、高校生レヴェルの公式しか使えない、僕の単純な思い込みなのか?・・・・
Posted at 2010/08/01 12:57:04 | |
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