日産のクーデターから数日が過ぎたが、あれだけ神格化されていたゴーンも、今やマスコミでは「金の亡者」 として面白おかしく取り上げられている。
まさに「手のひら返し」とはこの事で、「スキャンダラス」な事ばかり漁って、これまでのゴーンに対するあんた達の評価は何だったのかとも言いたくなるモノだ。
確かに、現状の情報がすべて正しければ、ゴーンはとんでもない経営者という烙印を押さざる得ない状況だ。しかし、考えてみて欲しい、
「貴方が90億もらって、二兆円近くの負債を抱えた日産を建て直す事が出来たか」
と聞くと、恐らく誰もが「出来ない」と答えるだろう。そういうと、単純に工場閉鎖や人員削減をやっただけという声も聞こえるが、そこまでしなければ「倒産」しか道の無かった日産を、それすらも出来ずに右往左往してどうする事も出来なかった日産を救ったのは誰あろうゴーン、彼なのだ。
その時に、江戸時代から明治中期まで辛酸を嘗めた不平等条約の様な株式の比率も、ルノーからの 8000億の金を得るには仕方が無かったというのが歴史の事実では無いだろうか。
無論、僕はだからと言ってゴーンを擁護しない。
日産がリバイバルプランを終えて、本来なら新しい道を歩むべく所を、何時まで経ってもゴーンに頼り切って、何もしなかった日産、ゴーン以外の経営陣に腸が煮えくり返って仕方ないのだ。
ゴーンの所業を、今更、「実は前々からおかしいと思っていた」、「金に汚い」とか今になって、したり顔でコメントする旧経営陣の一部や、社員にも怒りを覚えるのは僕だけだろうか。
正直に言って、今一番、日産に必要なのは、
これからの確固たるヴィジョンを、僕ら古くからの日産のファンや、日本国民に示す責任があると思うのだ。そして、僕たち日産を応援するファンも、同じように、こうなって欲しいという声を発する事が大事だと僕は思うのだ。
まぁ、間違っても僕は経済学者や経営について熟知なんてしていないが、これからの日産に、こうなって欲しいという幾つかの思いがある。
1.ゴーン以前の日産には戻って欲しくはない。
皆さんもご存知の通り、日産は昔から騒動無くして成り立たない企業であった。戦後の労働争議も、全く派手で、1953年5月から始まった、俗に言う「日産争議」、まぁ「日産百日争議」なんて、他のトヨタなども同じように「争議」が起きたが、夏ころまでには収束したのに対して日産は、組合が分裂して最終的には旧組合が妥結に至ったのは、なんと9月の中旬だったのだ。
おかげ様で、早期に終結したトヨタとは販売も開発においても、それからの差を生む大きな要因となった。
その後も、日産社内で「天皇」と呼ばれた 日産労組の塩路会長の引きずり下ろし、そのスキャンダルを仕組んだ 石原 俊 も、推し進めた「グローバル10」の負の遺産が響き、日産の歴史から葬り去られてしまっている。
今回の一件で、日産上層部のゴーン派2名が居なくなった。噂なんだが、西川社長と前社長の志賀さんは犬猿の仲とか。恐らく、これから社内でのゴーン派の粛清が始まると思うが、過去の日産の様に、派閥や、権力の闘争を繰り返し、クルマの開発や販売に支障をきたしてしまった暗歴史を、ゴーン無き後に繰り返して欲しくはないと思うのだ。
2.疲弊しきった国内販売の早急な立て直し
数が出ない、利益が望めないというアホな理由で、ふと気づく他社と渡り合えるクルマが無くなってしまっている現状を打破して欲しい。
「純国産」、「日本の小型車」と日本のクルマとしてのプライドを技術をアピールしていた日産も今では
シーマってまだ売ってんの、そう言えばジュークってあったなぁ・・・ティアナってどんなクルマだったっけと国内販売されているクルマたちの影が薄い。
日産が切り開いた、例えばミニヴァン「エルグランド」の路線は、今やトヨタの「アル・ベル」に取って代わられ、あれだけ話題になって売れていた「ジューク」も、「C-HR」に取って代わられ、Mクラスのワゴンも無く、「やったぜ!」と息巻いているのは半電気自動車のみ。
まぁグローバルに見ると、中国の販売市場は約3,000万台、対して日本の市場は 500万台 と 6倍の差があるのは分かる。しかし、日産は日本のメーカーじゃあないのか。
僕が学生の頃は、国内のシェアで言えば トヨタが約40%あって、日産は30%前半と差があったが、今の様に日産のシェアが10%チョイでライバルは軽自動車も含めたシェアで言うとスズキやダイハツなんていう悲壮な状況では無かった。
端的言えば、軽自動車の台数が増えたともいえるが、日産が売れないと言って手を抜いた、エルグランドや、シーマ、フーガ、ティアナや小型のセダンの販売台数がトヨタを中心とした他のメーカーに移行しただけとも言えると思うのだが如何だろうか。
ここは、現実的に言って、グローバルにも戦えるLクラスセダンの再構築と、国内で数が稼げて粗利の高いLクラス・ミニヴァン、そして趣味性の高い「ジューク」や、国土に合った魅力的な5ナンバーとは言わないが小型のセダンを早急に開発して欲しいと思うのだ。
そして、国内で数がさばけなくとも、グローバルで売れる、この2車を国内でもリリースして欲しいと思う。ひとつは
現行「マイクラ」。幅が1700を超えるがエントリカーとしてデザインも良いしライトハンダーが既にあるので国内仕様化も容易な筈。
幅が1700を超えるが、このサイズで、こんなシャープなデザインの国産車が無いので軽を除くエントリカーとしてどうだろうか。
もう一車は、
懐かしいパルサーの名前で、スポーツモデルには「SSS」も存在。リヤハッチに光る「SSS」バッヂは、ちゃ~んと「SSS」の法則通りだ。(クリックで拡大)
「パルサー」だ。セダンは日本で言う「シルフィ」で嬉しい事にスポーティモデルには「SSS」という伝統のエンブレムが光っている。
あれだけ延々と築いて来た歴史観を捨てていた日産が、この「SSS」だけは、未だに「SSS」の法則でバッヂが作られている。
血統 ブルーバードの伝統の証「SSS」の秘密に迫る。。
→ https://minkara.carview.co.jp/userid/124785/blog/246030/
これは610、ブルUの SSS のエンブレム。基本的にU14まで書体は変っていない。
パルサーもライトハンダーがあるので、日本市場に導入しやすいのだろう。
車種も増やす事が出来るし、国内市場+グローバル市場で数がさばけるのではないのだろうか。
そして、プロボックスしか見なくなった小型ヴァンの再構築と、JPNタクシーがあっという間に蔓延してしまったタクシー専用車の立て直しも忘れずにお願いしたい。
3.不平等条約の解消
今回のゴーン・ショックの遠因と言われる、ルノーの日産合併の要因である、持ち株の不平等条約の解消だ。
ルノーとの関係の解消は望まない。なぜなら、ここまでの間に部品や技術の共有化で、正直コストが下がってきた。EVの技術もルノーとの協業の賜物だろう。
日産がルノーの株を買い増しして、ルノーの決議権を無くして対等な関係になれば、お互いに緊張感が生まれて、まぁ、今まで ゴーン のツルの一声で決まっていたのとは違って、なかなか決まるモノも決まらなくなるかもしれないが、それは、何も日産ルノーだけの問題ではない、だからここは、このままルノーと喧嘩別れをするよりは、こうしたモノや人との三菱も含めた関係を続ければ、まさに三社にとって ウィンウィン の関係となると思うのだが如何だろうか。
しかし、今回のゴーン失墜の現実で、さらに思ったのは、今回の一連の「不正」よりも、一番ゴーンの「負の遺産」は、
後継者を育てなかった
事に尽きると思うのだ。
正直、ルノーにも日産のトップを見回しても、どうみても ゴーン と対峙できるだけのカリスマ性をもった指導者が居ない事が実は大問題だと感じる。
これが、実は今目の前で起こっている、ルノーにしても日産にしても、この先どうなるのか分からないという状態に陥っている要因の他ない。
このまま「不平等条約」を解消しても、日産が元に戻るのではと言われる要因もソコにある。だから、お粗末な ゴーン 後の指導権争いをするのでは無く、早々にこれからの道筋を明らかにしてルノーより先に日産の未来を指し示す事が、「不平等条約」の解消も含めて新たな「日産・三菱・ルノーアライランス」の構築が出来ると信じて止まないのだが如何だろうか。
前日のブログでも書いたが、間違いなく、何かの後ろ盾が無ければ、如何に暴君の悪事を暴いてめでたしだけではなく、その後も安定して日産が企業活動できる確約は無かったら、クーデターは起きなかっただろう。
その後ろ盾が「何」かは分からないが、それが単純なパワーバランスの競争の結果ではなく、未来志向のクデータであって欲しいと願っている。
悪事を暴く、文句を言うのは簡単だ。今の日産に必要なのは、ゴーンが居なくても未来の日産の姿を示せるという自信を指し示す事が大事だと重ね重ね思う。
20年前、ゴーンの出現が世間をあっと言わせた。今度は日産が未来志向の企業活動の道筋を立ててぜひ世間をあっと言わせてほしいと古くからの日産ファンの一人として声を上げたいと思うのだ。
そうだ、あとひとつ、日産のファンとして実現して欲しいのが、もう一度御料車造りにチャレンジして欲しいという事だ。
現行の 「屋根」 のある御料車は、トヨタに取って代わられたが、屋根のないパレード用の御料車は、これから国産車各メーカーに製作を働き掛けるというではないか。
まぁ、使用する時期を考えれば、すでに裏では尾張のメーカーが内々に決まっているのだろうけど、スケッチだけでもイイ。これぞ新生国産車を手掛ける日産だったらという御料車を考えて欲しいのだ。
かつては日産・プリンス・ロイヤルが長きに渡って御料車の勤めていたが・・・
現在の日産の全てを注ぎ込んだ「純国産」の誇りを是非、こんな時期だから敢えて示してくれたらと思うのだ。
もう一度、良い昔の日産の姿を思い出すためにも。