X-Car の売却の為に、複数の買い取り専門店に時間差をかけて、
「出張査定」 を依頼したのだが、どうも 間が悪くて二社の業者が重なってしまう場面が起きた。
しかし、彼らもネットによる一括査定には慣れているという事で、お互いに軽く挨拶を交わし、粛々と作業を進めていった。見ていると、それは見事に、お互いの査定部位に干渉をしない様に絶妙なタイミングで査定を進める様子に感服してしまった。
そして、ドラマは最後に二社が重なり、二社の査定が終わった段階で、GA社から驚くような提案がなされた。
「徳小寺さん、ここで PM社 さんとオークションをさせて頂きませんか?」
正直に言うが、まだ中古車屋への下取りと言う手段も考えていたので、正直躊躇したが、
「こちら、つまり、我々業者の都合で申し訳ないのですが、正直に言って、なんとして今月の売り上げにしたのです。我々はクルマを買い取った後、業者オークションに出品するのですが、それが行われるのが毎週木曜日。
つまり、来週の木曜日のオークションが今月の最終なんで、なんとしても今日決めたいのです。
徳小寺さんと、PG社さんがよろしければ、ここでオークションを行いたいのですが、徳小寺さん、PG社さん如何ですか?」
ここで、PG社さんが会社に電話を入れ、
「それでは、徳小寺さんが良いと言われるのであれば、ここで、やりましょう。やり方は如何しますか?
1.各社名刺の裏にベストプライスを記載して、一度に提示。
2.まったくの最低金額からのオークション形式。
GAさんこれで、どうですか」
GA社「お受けしましょう」
そこで、僕は最低価格を決め、オークション式にお願いすることにした。
PG社さんは、スマホで会社に電話をかけ、金額を会社に伺いながらのオークションとなった。
徳小寺
「それでは、最低価格○○万円よりスタート。両社、まずは、この金額はクリアーできますか?」
両社
「大丈夫です。」
GA社
「プラス5,000」
PG社
「○○万円丁度」
と十二回、オークションは続き、「¥100」単位に突入、そして
PG社
「○○万円△△千円丁度」
暫く沈黙の後
GA社
「○○万円△△千円□□円」
PG社
「ここで降ります」
「GA社さん、一体いくらまで出すつもりだったのですか?」
GA社
「実は会社からは 「○○万円△△千円丁度」 と言われていたのですが、最後の 「□□円」 は、僕の裁量だったですよ・・・危なかった。。。」
そこで両社と僕の三人で握手を交わし、GA社と契約書を交わした・
そして、その一週間後。GA社が手配した業者がやってきて、X-Car との濃密な時間は終止符を打った。
車庫から出て、走り去る X-Car 。
向きを変え、後姿になる瞬間、業者のドライヴァーが軽く会釈をして、そして、心地よいバイエルンのストレイトシックスのサウンドと、軽いクラクションを鳴らして去って行ってしまった。
そう言えば、こうして X-Car の車外のサウンドをマジマジと聞いたのは初めてかも・・・
五年目の春を迎えようとしていた。
僕としては、クルマを 五年以内に 買い替えをしたのは初めてであった。
X-Car の後姿を見ていると、涙が流れてしまった。
まったく、故障は多いし、手間ばかりかかったクルマだったが、国産車にはない、バイエルンのクルマ造りの神髄を見ることが出来て、正直、僕のクルマ感に大いなる影響を与えた。
「出来の悪い子ほどかわいい」 か。。。
後日、偶然にも GA社の彼に会う事になった。
「徳小寺さん、あの年式であの走行距離じゃぁ、本当はあの金額は出せないモンです。でも、クルマを見た瞬間。徳小寺さんのクルマへの愛着と手入れの様子が、どんどん目に浮かんだのです。
そうしたら、もちろん、サンルーフ、本革、社外HDDナヴィという、売るのに有利な条件もあったのですが、僕は徳小寺さんのクルマへの愛情を買わせて頂いたのです。」
そして・・・
オークションの最後の 「□□円」 は、僕の誠意かなぁ・・・と笑って、お互いに分かれた。
嬉しかった。
「出来の・・・・」とは言ったが、いやいや、彼は最後の最後に、僕に最大限の「ご奉公」をしてくれたんだ。と実感した瞬間でもあった。
さよなら X-Car 。
そして 永久に。
Posted at 2012/03/03 10:02:40 | |
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