ルノー・ドーフィン の、間違いなく設計者が悩んで悩んで、スペアタイアを収めたであろう、苦労の様子を前回は見て頂いたが、ドーフィン 以外にも実は多くのスペアタイア隠蔽の名車たちが存在する。
幾つかコメントを頂いたが、そこから、実際の画像を見てご紹介したいと思うのだ。
まずはスバルだ。
スバル、富士重工時代から、技術者の考え方が色濃く出た仕様が見え隠れして、それをまた紐解くのも実に楽しいモノだ。
サイドブレーキは駆動輪に掛かるべきだと、長くフロントにサイドブレーキが装備されて居たり、FF なので少しでも駆動輪に荷重をかけたいと言って、
駆動輪に、荷重を確保したいという思想から、スペアタイアまでエンヂンルームに押し込んだ。
スペアタイアまでエンヂンルームに押し込んでいた。
次に紹介するのは、初代ホンダZだ。
初めて、Zのモデルが本田宗一郎に披露された時、宗一郎が
「尿瓶みてーなデザインだなぁ」
と言った話は有名なんだが、どっこい、このZは、考えに考えられてデザインと造り込みがされており、スペアタイアも実にスマートに隠されていた。
スペアタイアと工具が実にスマートにリヤに収められていた。これが現代のN VAN にも生かされている。
そして、最近のミニヴァンも実はスペアタイアの所存に困っている。
標準的には「パンク修理キット」でスペアを無くすことが多いが、一部車種にはOPでパッセンジャーサイドに装着できるようになっている車種が多い。
セレナにもオプションだが、スペアータイアをパッセンジャサイド下に装着できる。
こうして見ると、スペアタイアひとつ取っても、各社各様に色々な思いが取れて面白いのだが、実にもっと拘ったメーカーが英国にあった事をご存知だろうか。
それがこれからご紹介する Bristol Cars(ブリストル・カーズ)だ。
この ブリストル・カーズ は、実に小さなメーカーなんだが、最近話題になったのは、Bristol Fighter だろう。
コイツの「Tモデル」は、最高出力1,012PS、最高速度430km/hというとんでもないスーパーカーだ。
なんたって、2007年に売り出された「Tモデル」は、最高出力1,012PS、最高速度430km/hという高性能を誇り、ブガッティ ヴェイロン なんて眼中にないくらいのスーパーカーだ。
Bristol Cars は、英国に残る、数少ない 純英国資本 のメーカーなんだが、まぁとにかく変わっていて、宣伝なんて一切やらない、知る人ぞ知る、知っている人しか売らない言うというメーカーで、じつは歴史は長いのだが世界的にはほぼ無名だ。
1950年代に存在した 400 シリーズは、当時としても高性能で、車内に入れば、まさに英国車の薫り高いウッドの世界が広がるのだが、
400 シリーズの中でも傑作の声の高い 410 シリーズ。外装も内装も実に丁寧に作り込まれている。
この 400 シリーズには、Bristol ならではの拘りが存在するのだ。まずは エンヂンルームを覗いてみよう。
クライスラー製V8エンジンが搭載されているとはいえ、ちょっとエンヂンルームが狭くないか。
V型8気筒 5,211cc、OHV、最高出力:250 bhp/4,400min-1 最大トルク:340 lb/3,800min-1 の強心臓を、なんと 3速 AT で 200 Km/h 以上の世界に誘ってくれるのだが、いくら巨大なクライスラーV8とは言え、エンヂンルームが狭くないだろうか。
実は、ここからが Bristol Cars の拘りで、レフトサイドに回って、フロントフェンダーを開けると、
左のフェンダー内には、出荷段階では 205VR15 PIRELLI CINTURATO が隠されている。
なんと、そこには出荷段階では 205VR15 PIRELLI CINTURATO のタイアが隠されていた。
そうなると反対側も・・・という事で、
反対側には、バッテリーと、マスターバッグ などなどが収められていた。
目立つのは、バッテリーとブレーキ・マスターバッグなどなどが隠されている。
フェンダーと言えば、トヨタ2000GT のバッテリーとエアクリーナーが有名なんだが、上には上と言う訳で、Bristol 400 シリーズ は、スペアタイアまでも押し込んでしまったという次第なのだ。
こうして駆け足で、一風変わったスペアタイア事情をご紹介したのだが、こうした変わり種には、それぞれの設計思想が脈々と流れており、それを読み解く事も実にクルマの世界を知るには面白いという事を、ぜひ皆さんに知って欲しかったと思う次第なのだ。
Posted at 2021/08/02 03:59:11 | |
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