
さてさて、僕の回想録にお付き合いいただいて感謝に堪えない。
それでは、 スカイライン・ジャパン こと C210 の デザイン の キーワード 二つ目の 「ブリスターフェンダー」 について駒を進めたいと思う。
前作の ケンメリ の時代も、まだまだ亜米利加車のデザインの豊かさ、低く長くという概念は、ユーザーのみならず、クルマのスタイリストにも多大な影響を与えていた。
しかし、オイルショックを経験し、何が何でも放蕩で、豊かさばかりを強調する亜米利加車のデザインにヘキヘキとした印象を多くの人達も持ち始めた事も事実だった。
ジャパンのデザインは、まず、ケンメリの豊かで低く長くという、これまでの概念を見直す事から始まった。ただ、良いところは伸ばして行こうという基本的な考えもあった事を追記せねばならないだろう。
ケンメリのイメージスケッチ。これを見るとマスタングなどのアメ車の流れだと分かるだろう。
その良いところとは、フロントから、さ~と流れて来た風がリヤに、何の抵抗も無く流れて行く感じ、フロントからリヤへ続くエッヂや面の構成が、あたかもスムーズに風が流れる様な感じにしたデザインを玉成しようという基本線だ。
最終案に繋がるスケッチの一枚。フロントからリヤへのスムーズな線と面。サーフィンラインもそこから自然に派生した事が分かる貴重な一枚だ。
なだらかに流れる風を緩やかにリヤに流すようにから、もっとアクティブに、ダイナミックに解釈を変え、フロントから積極的に風を取り入れ、一気にリヤに吐き出す様な感じへとコンセプトを変えた。
フロントグリルは、風の取り入れ口で、リヤの暗めの色合いのガーニッシュは、取り込んだ風を吐き出すイメージで考えられているのだ。
基本コンセプトを知ると、ショートノーズの方が、フロントの彫が深く、風を積極的に取り込むという感じが伝わってくるだろう。ここからもC210の基本はショートノーズだと分かる。
そして、サイドに刻まれた「サーフィンライン」は、ケンメリの時は、前から流れてくる風を後ろにスムーズに流すための絞り込みと整流しているイメージを具現化する「造形美」だったのだが、ジャパンでは、側面の素早い流速の風を、一気に後ろに流し去る・・・というイメージで、後ろに向かって膨らんでゆく造形、「機能美」に基づいてデザインされたのだ。
それはあたかも、空気抵抗になる タイア を避けるために膨らんだ「ブリスターフェンダー」と同じ機能をもった線と面で出来ているのだ。
サーフィンラインが、側面に流れて来た空気の塊を、タイアに当てないように、膨らんでリヤタイアに覆いかぶさっている造形が見て取れるだろう。
ケンメリも、ジャパンも、根底にあるのは、前から後ろに空気を流すイメージで線と面を形作っているのだが、その勢いや、空気の塊をどう処理するかという根柢の思想が違っているという事を、実はサーフィンラインが物語っているのだ。
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Posted at
2014/07/17 01:38:16