
前回、ブルーバード510の開発秘話をブログしたが、その中で、「リヤのセミトレはローレルのを縮めて・・」とコメントしたところ、「ローレルの方が、後から発売されたのにおかしいのでは・・」との指摘を受けた。。
まさに510の後に、初代ローレル(C30)は発売されたのだが、実は発売に至るまでに日産の社内には、大きな葛藤があった事は意外に知られていない・・・
今回は、また「長い!」と文句を言われそうだが、初代ローレルの誕生の秘話をブログしたい。
挑発 その一言で名車は生まれた510誕生秘話
http://carlife.carview.co.jp/User.asp?UserDiaryID=1645822
まず初代ローレルは「ブルーバード・ローレル」という名前でリリースされたかもしれない・・・という驚愕の事実を言わないといけない。
そして、あたかもその採用した「G18」というエンジンや、リヤのセミトレの形状から「プリンス」が企画したクルマだったのでは・・・という説もあるが、それも間違いである・・事を書かねばならないだろう。。。
この表を見て頂きたい。
昭和41年頃になると、ようやく自動車のシェアにおいて、個人の需要が「営業車」や「法人」の需要を追い抜いた事が分かるだろう。
日本の自動車産業は、最初は「タクシー」などの「営業用」が需要を引っ張り、次ぎに「会社」などの「法人需要」が大半であった事がよく分かると思う。
だから、昭和40年以前のクルマの開発には、「営業車」や「法人」で使われたら・・・という事を想定していたので、内装もシンプル、とにかく壊れない・・・事が大前提になって開発されたいたのだった。
丁度、ブルーバードが510になる頃は、「個人」の需要が体勢を締めるようになっており、あくまで個人ユースを主体に開発を進めることになったのだが、当時の日産のラインナップを見ると、「ブルーバード」と「セドリック」の間、1800ccのクルマが無い事が、技術者の間から問題視されるようになった。
ここで、面白いのは日産の社内において、販売ではなく「技術者」の中から、こうした市場の分析をしてクルマの開発をしていた・・・という事実がいかにも日産らしい・・と言えるのではないだろうか?
そして、「ここまで個人需要が増えたなら、まったく個人をターゲットにしたクルマを造ろう」と企画が始まったのが、初代「ローレル」だったのだ。
つまり当時の技術者達は、コテンパンに負けていたブルーバード410のリヴェンジに、まだ日本の自動車の業界に無かった、本格的な「パーソナルカー」をブルーバードのひとつのシリーズとして据え置き、トヨタ・・しいては世間をアッと言わせてやろう!という意気込みで「ローレル」の開発はスタートしたのだった。
つまり初代ローレルは、あくまで「ブルーバード」の上級車種として企画されたクルマであったのだ!!
そこには、内部の事情もあった。。。
いくら意気込みはあっても、いっぺんに2車種を開発するのは大変だ!そこでシャーシユニットをできるだけ共通共有化して兄弟車的に開発を進めざる得なかったのだった。。
さらに、どうせなら「ブルーバード」より上級に仕立てて「営業車(タクシー・ヴァン無し)」で、サイズも「ブルーバード」と「セドリック」の中間にしてやろう・・・という事で、当時の「ブルーバード410」と「セドリック130」の車体寸法を足して二で割って外寸を決めた!!!
しかし・・当時の図面は同じ技術者として、まったく頭が下がる思いである。。手描きながら一寸のスキも無い!
自分も技術者として社会人デヴューした当時は、CADなんて使わせてもらえなく、すべて手描きで描いていたが、ここまで美しい図面は描く事が出来なかった。。
まさに技術者の気合と腕が、この図面ヒトツでもヒシヒシと伝わってくるではないか!!!(閑話休題)
しかし、この数字決めの中で、ふたつ程足して二で割った数字でないポジションがある。
それが「ホイールベース」と「トレッド」だ。
それは「オーナーカー」らしく居住性を確保したい・・という願望もあったが、実は、操縦安定性を世界レヴェルに引き上げたい・・という願望があったからだと聞く。
「ロングホイールベース」も、「ワイドトレッド」もクルマの安定性を良くしてさらに運動性能もよく出来る・・と踏んだのだ。
その「ロングホイールベース」も「ワイドトレッド」も最小半径が大きくなってしまい、日本の道路事情に合わなくなってしまうので、スティアリングの切れ角を大きくして、何と最小回転半径をふた回りも小さい「ブルーバード310」並みにした!!
さらに、高速化やオーナーカー向けに思い切り技術屋の思いを実現してやろう・・と、まずはラジエターのファンを「プラスチック製」にした。
こうすることによって、ファンの間隔や形状を変化させて、騒音も減らせるし、軽量化にもなる・・という算段だ。
そして燃料ポンプも「電磁式」にしてエンジンの回転に関わらず安定した圧力でリヤのフェールタンクから燃料を吸えるようにした。「電磁式」にした事によって、急加速時や高速回転時の燃料の追従が良くなってエンジンのレスポンスや回転が滑らかになる・・というメリットをもたらした。
エンジンは510用に開発が進んでいた、
L13 を設計変更して、同じシリンダーピッチながら、ボアもストロークも最大に広げて1800ccを確保させて、最高出力105PSで最高速165Km/hを狙う事にした。
シリンダーピッチを同じとする事によって、エンジンの造り勝手を悪化させること無く量産ができる・・という訳だ。
技術的に次々とアプローチが許されるとなると、もう技術者は、さらに貪欲になるものである。。
スティアリングの機構を「ラック・アンド・ピニオン」にしてしまえ!そうすれば、スティアリングの反応がシャープになって、「ロングホイールベース」や「ワイドトレッド」が生かせる筈だ・・と、まさに初代ローレルは、我が国初の純然たるオーナーカーを目指して、数々の新機軸が採用される事になったのだ。
しかし、初代ローレルを語るには、まだまだスペースが足りない・・
それには、余りにも長くなりすぎるので、ここは一旦筆を置いて、「エクステリアデザイン」や「510ブルーバード」との絡み、「足回り」に付いてはまた後日続きを語ろうと思う。。
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Posted at
2006/04/16 18:38:40