ボルボのアッパークラスとして位置付けとなる90シリーズ。XC90は昨年2016年2月にすでに先行して発売しています。
価格帯が800万円台からということもあり、X5やGLE、Q7といった高級SUVともライバルとなるモデルなだけに、選択肢が増えて面白い状況となりました。
で、XC90の後を追うように、S90やV90、V90クロスカントリーといった他の90シリーズもことし2月に日本で一斉に発売を開始しました。
90シリーズについては、以前ブログでも取り上げたとおり、2013年に発表された「コンセプトクーペ」がスタディモデルとなっています。
デザインや細部の意匠はまんま90シリーズですよね。
(参照:
ボルボ・コンセプトクーペがカッコいい )
この「コンセプトクーペ」のスタディは、以降のボルボデザインに大きく変革をもたらしています。次期XC60はXC90のデザインそのままにボディサイズを小さくしたようにも映ります。
さて、90シリーズの中でも個人的にこれはイイなぁと感じたのがS90。
一見普通のセダンのようにも見えますが、全体を見とおすと、エッジを効かせながらも流れるような美しいデザインと感じました。
従来のフラッグシップS80はもちろん悪くはありません。
≪ボルボS80(2008-2015)≫
最新のS90はさらに一皮剥けたかのような大胆なデザインと感じるのです。
独英のライバルたちを観てみましょう。
■メルセデス・ベンツEクラス(W213)
L 4,930mm×W 1,850mm×H 1,455mm WB 2,940mm
■BMW5シリーズ(G30)
L 4,945mm×W 1,870mm×H 1,480mm WB 2,975mm
■アウディA6(C7)
L 4,945mm×W 1,875mm×H 1,465mm WB 2,910mm
■ジャガーXF
L 4,965mm×W 1,880mm×H 1,455mm WB 2,960mm
そして・・・
■ボルボS90
L 4,965mm×W 1,890mm×H 1,445mm WB2,940mm
それぞれのモデルにはブランドの思想やデザイナーの考えに基づきデザインされているもの。それぞれ個性があって、あまり似通っていないのも特徴かもしれません。
特にリアのCピラー付近の処理ですが。
このデザイン処理は独特なもの。往年のアマゾンや1800ES、200シリーズをも彷彿とさせるデザイン処理が巧みだと感じる部分。
S90(とA6)は駆動方式がFFですが、それ以外はFR。S90はデザイン上まるでFRのようにも見える伸びやかなデザイン。
このことについて、調べていたら興味深いことがわかりました。記事を引用します。
新型90シリーズのライバルは、ドイツ・プレミアム御三家(メルセデス・ベンツ、BMW、アウディ)のミディアムクラスだ。特徴的なのは、その伸びやかなスタイリングだ。まるでFR車のようなそのスタイルの秘密は、フロントアクスルからアクセルペダル(Aピラー下部)までの距離にある。これがFR車と同等に長いのだ。
キャビンの居住性の効率が高いのがFFレイアウトの美点なのだから、Aピラーが後退するのは、やや疑問ではあるが、実際のS90 /V90を目の前にすると、このかっこよさを実現するため、と説明されれば素直に納得してしまう。ドイツ車とはまったくテイストの違うデザインはボルボがSPAで実現したかったプレミアム性の獲得に大いに貢献しているといえる。
(引用終了)
※引用先 ボルボS90/V90は、ボルボのフラッグシップたりうるか? Motor Fan
親会社が中国の吉利汽車(ジーリー)となり潤沢な資金を得てS90は開発したわけです。独英のプレミアムブランドたちと互角に戦い合えるために、経営陣の判断でデザイン上FR化を目指したのかもしれませんね。
さて、前置き長くなりました。7月某日、S90を実際に観たくてボルボディーラーを訪ねました。ショールームに展示されていたのは・・・
≪画像は拝借しました。≫
マッセルブルーメタリックという淡いブルー。
S90の流れるデザインにはとても似合う品のある美しいボディカラー。S90はこの時初めて見たわけですが、写真で見るよりもやっぱりデザインがきれい。
相手をしてくれたセールスマン氏によると、展示車のS90は“Inscription(インスクリプション)”というグレード。“R-Design”というスポーティに位置づけられたグレードもあるようですが、S90はキャラクターからして“Inscription(インスクリプション)”で十分だと思う。
セールスマン氏によると、ボルボは2L以上の排気量のエンジンは今後つくらない方針だということを教えてもらい、S90も例に漏れず、2L直4の過給機のついたターボエンジンなんだそう。
先ごろ、ボルボは2019年までに全モデルにEVモデルを用意すると発表がありました。
(参照:
内燃機関に頼らない時代は本当に来るのか )
訪れたときが、ちょうどこの発表直後だったので、セールスマン氏にいろいろと聞いてみました。特に驚いた様子はなく、2L以上の排気量エンジンはつくらないというのは将来を見据えた布石なのかもしれません。
あとセールスマン氏から衝撃の事実を教えてもらいました。それはS90の販売は500台で終了するということ!
これはいただいたカタログ表紙にもたしかに記載ありました。セールスマン氏によると、スウェーデンの工場でつくられるスウェーデン製S90はこれをもって生産が終わりで、今後は中国製になるとのこと!
セールスマン氏によると、中国製S90はクオリティなどの面で不安があることと、日本市場で販売するにあたり、“Made in China”は受け入れられそうにない懸念があることを教えてくれました。
ボルボ(というよりもジーリー?)の事情で今後は中国製になるようですが、日本のS90ファンにとっては水を差す事態かもしれませんね。
英独プレミアムブランドとも互角に戦えるS90だっただけに、インポーターもおそらく苦渋の決断だったに違いありません。まぁ、総合的に考慮しても賢明な判断なのでしょう。
S90が500台限りで販売終了というのはなんとも残念な話です。ボルボフラッグシップセダンは待ち望んでいるファンも多いでしょうに、ねぇ、、、