
走り出して、先ず気付いたのがクラッチの操作感だったが、次に気になったのは「サイドブレーキ・レヴァー」の位置だ。
よくパッセンジャー・サイドに在るのは日本では使い辛い・・というハナシを聞くが、無論ドライヴァーの左手に近ければ近いほど操作がし易いのは当然だが、良いも悪いもグローバル化で、そうそう日本にぴったりと合ったポジションのクルマばかりを造れなくなって来たのは事実だ。
だから使い辛くても良いという訳ではないが、パッセンジャーサイドに寄っている事よりも、若干後ろ寄りにある事の方が問題だと思うのだ。
もう少し前へ出した方が、遠い事は遠いのだが、操作性はグッと良くなると僕は感じた次第だ。
「GT」を名乗るその走りは前日のブログの通りだが、操縦性も好感度が高い。
丁度、試乗コースに90度ならぬ100度くらいの角度の付いた交差点があるのだが、そこをエイ!とばかり勢い良く曲がって、さらにサッサッサッと細かい操舵を繰り返しても、揺り返しは皆無で、これまでの日産車の「電動パワステ」にありがちだった、スッとアシストが抜ける現象も無かった。
路面の凹凸も上手にいなすし、ロールもほどほどで背の高いクルマを運転していると特に意識しなくとも良い。
この点では、例のザックスのショックの威力だろうが、デュアリスよりもエクストレイルの方が乗り心地も良く、ダンピングの良さを痛感できる。
デュアリスの方は、ガツンとした入力に素直で、その振動や上下動が結構あるのだが、エクストレイルの方は、そうした入力に対して「角」を丸めた衝撃しか伝わらず一般的には乗り心地が良いと感じられるだろう。
それでいて、極端にロールが大きくなったりダンピングの不足があるかと言えば、そうでないのでお奨めという訳だ。
室内も、意外にデュアリスは閉塞感があり、特にリアの居住性はスペースはあれど、広さ感が無い・・・という私見だ。
余りにも褒めてばかりいたのでは先へ進めないので、後二点ほど気になる点を書き込みたい。
クリーン・ディーゼルの技術の根本とも言える「DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)」なんだが、ここにひとつ気になる点がある。
この事については触れているコメントが少ないのだが、まず基本的な仕組みとして簡単に言えば、
PM、まぁ早く言えば「スス」だ、これをフィルターで吸着する、そのときに排気温度を利用して600度にキープして化学反応によってPMを処理している。
ここで「600度」というのがキーワードで、実はカタログにはこんな一文が記載されている。
短い距離や低速での走行が続くと、DPFによるPM除去がされず、メーター内にあるDPF警告灯が点灯する事があります。その場合、クルマを停めて、手動再生スイッチを押して、PM除去を行う必要があります。詳しくはカーライフアドバイザーにお問い合わせ下さい。
と言う事で、「600度」が確保し辛い状況では人手によって強制的に「DPF」を動作してやらないといけないのだ。
さらに
クリーンディーゼルエンジンはNOxの排出量を減らすために、新開発のリーンNOxトラップ触媒(LNT)を採用しています。エンジンシリンダー内の燃料噴射量を瞬間的に濃い状態にして、触媒に溜められたNOxの還元浄化を繰りかえし行う事で、クリーンな排気性能を実現しています。この高度な燃料噴射制御は同時にDPF(ディーゼル・パーティキュレート・フィルター)の再生頻度を増加させます。DPF再生時にはシリンダーへの燃料付着が起こるため、走行距離に対するオイルへの燃料希釈割合が増える傾向となります。良好な潤滑性能を保ちながらクリーンディーゼルの高性能を長く維持するためには、5000kmごとのオイル交換が必要となります。
と言う具合に、普通とは違ったメンテやら手続きが必要である事が、意外に知られていない事に僕は疑問を持っているのだ。
しかし「DPF」の問題は警告等が点灯するくらいなら、その信号を元に、自動で燃焼温度を上げる仕組みを組み込めないのか?等と思ってしまう。
これは「NOx」対策に、一瞬燃調を「リッチ」にしているのだから、それを利用して、昔のロータリーの「サーマルリアクター」宜しく上手く処理できないか・・・とも感じているのだが。。
オイルの交換サイクルに付いては、これも十二分に説明があってしかるべきだろう。
最近はメンテフリーで、一万キロだの一万五千キロなんてオイル交換を推奨している手前、いきなり、クリーン・ディーゼルだけは「5000キロ」でと言っても、説明をちゃんとしないと、まともにオイルを交換するオーナーなんて少ない可能性が「大」ではないかと思うのだが。。。
僕的には、普通3000キロで交換しているから抵抗はないが、世の中には点検時までとか平気でオイル交換をしないオーナーがたくさんいる事を思えば、「大丈夫か!?」と思っている次第なのだ。
色々なことを書き綴ってきたが、日産滅亡の危機が去り、この十年間はロクな最新と呼べる「技術」も無しにやって来た「日産」を思えば、久々に技術的に「面白い!」と思える技術を搭載したクルマに巡りあえた様な気がする。
しかしながらインターフェイスで「現代の名工」と呼ばれる財産を持ち合せているのに、一番操作系で大事な部位において、例えばクラッチの操作感で違和感が大きかったり、クラッチ、サイドブレーキ・レヴァーの位置なども適切か?と、疑問に思える部分が散見されたりして、その点を見ただけでも本当に日産の持ちうる財産を駆使して作りこまれているのか?と感じざる得ないのだ。
さらにひとつひとつは、限りなく「良い」のだが、クルマという集合体で見ると「う~ん」と唸ってしまう部分も多くある。
「ザックス」のショックも良い、他にも工夫が満載されて、例えば騒音対策でフロントグラスの厚さが厚くなっていて、さらにそれに伴いAピラーの補強と大いに工夫しているのだが、それが他のエクストレイルと比較して、大きなアドヴァンテージを持っていて、これなら300万円を出しても良いという「購買意欲」につながっているのか?
クルマという、ひとつの集合体としてまとまった時に、部分部分は良いのだが、どうもチグハグで、それがクルマ全体の評価を「並」か、価格的に価値観を見出せず逆にある意味評価を下げてしまっている様に思えるのだ。
確かに、少々見切り発進の感が無くもない「エクトレイル20GT」だが、その荒削り加減故に、それぞれの部品や組み立て、感性に及ぶ部分の出来栄えが「露」であると思う。
そういった部分では、逆説的な言い方だが、まだこれからのクルマだと期待十分だし、その反面、現状のチグハグぶりを見ると、「まだまだ大丈夫じゃあないのか!?」とも感じてしまっているのだ。
ただ繰り返すが、一癖もふたクセもあるが、手が届く価格帯で、しかもMクラスで久々に乗って楽しい日産車である事は間違い無いだろう。
本当の日産の評価はこの次だ。
値段が高いZやスカイラインが良いのは当たり前、中小型で300万円以下の、それも出来うるなら高くとも200万円前後のクルマでシャキリとしたのが出るのを切望して止まないのだが・・・
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Posted at
2008/10/15 06:16:41