
ロータリー勢が「サイド・ポート」の馬力向上に苦心、光明を得ていた時、ライヴァルGT-Rは豪雨の中、「50勝」という大きな節目を迎えていた。
詳細は
「豪雨 ハコスカGT-R 50勝目豪雨の勝利」:
http://carlife.carview.co.jp/User.asp?UserDiaryID=202334
を見て頂ければ幸いだが、ここで少し補足したいと思う。。
'72年3月20日72年富士グランドチャンピオンシリーズ第一戦「富士300キロレース」に「高橋国光」と「都平健二」の操る、HT GT-Rが参戦した。。。
このレースに出場していたのは、トヨタからセリカ1600GTが三台とマークⅡGSSターボが一台。。
一方のロータリー勢は、寺田陽次郎のカペラと岡本安弘のサヴァンナの二台が出場していた。
折りからの強力な低気圧の接近に伴い、風速18m/secという強風と、横殴りの豪雨の中、レースは始まった。
二台のGT-Rは、スタートと共にトップを奪い、恐ろしいペースで後続を引き離した。
前半は溝の深いタイヤを履いた都平GT-Rが先行したが、溝の浅いタイヤを履いた高橋GT-Rが、コーナーで意外なほど深いブレーキングをするのを見て、8週目にブレーキングを遅らせたところ・・・
スピンしてしまいコースアウト、リタイヤになってしまった。
一台となってしまった高橋だが、その後も驚異的なラップを重ね、ついに他のマシンを周回遅れにしてしまい、劇的な「50勝」目を飾る事になったのだ。
ここに当時の高橋のGT-Rに乗った貴重な画像がある。
低いシートバック、ジェットのヘルメット、レーシングスーツだって、現代から比べればお粗末な物だ。。。
こんなコックピットから、芸術的なGT-Rの操縦がされていたなんて、未だに信じがたいモノがある。。。
そんなGT-Rの前に、よいよ究極の「サイド・ポート」チューニングを施された「サヴァンナRX-3」と「カペラ」の「12Aロータリー」軍団が大挙押し寄せて来たのは、二ヵ月後の5月。。。
今では考えられないが、旧富士スピードウェイの、通常の「右回り」のコースを逆走するという、左回り4.3Kmのショートコースで行われた「日本グランプリ ツーリングカーレース」にマツダは、打倒GT-Rを目指して「12A改ロータリー」を搭載したマシンを送り込んだ。。。
このレースに備えて、GT-Rもさらなる軽量化が推し進められていた。
1000Kgを超えるウェートから、なんと100Kg近い減量を施し950Kgを切るウェートまでなっていたのだ!
そして、ロータリー勢が苦手とするコーナリングに対して、更なるアドヴァンテージを得るために、「不等ピッチスプリング」の開発をし、このレースに間に合わせたのだ。
しかし、さらに軽く空気抵抗の少ないロータリー勢は、それまで無敵を誇った日産ワークスを尻目に、予選では1・2・3を独占していたのだ。。。
果せるかな、本戦が始まると、一速のギヤ比が高く、パワーウェイトレシオに劣るGT-R勢は、早くもロータリーの後塵を拝する事になってしまった。
1968年に登場し、すでに4年という歳月と、それまでに重ねられた改良で、すでに限界・・・というところまで来ていたKPGC10 GT-Rにとって、最新型で軽量なロータリー軍団には、もはや太刀打ちできなくなってしまったのか?
しかし、GT-Rも生まれながらの戦士である。
日産パイロットたちの華麗なコーナリングテクニックにより、コーナーの立ち上がりを良くする為に、通常ではタイムが落ちるとされているテールスライドを、ワザと誘発させ、S20DOHCエンジンの回転数を9000~10000min-1にキープして、驚異的な立ち上がりでコーナーをクリアーし、タイムを向上させていた。。。
対するサヴァンナも、新開発の「ワットリンク・リヤサス」でGT-Rに対抗したが、新型サスを開発したマツダ技術陣の英知より、日産のパイロット達の神業に近いテクニックが、コーナーとコーナーでの立ち上がりで、サヴァンナを圧倒した。
しかし富士のストレートは、GT-Rにとって、永遠のように長く感じ「悪夢」以外の何物でも無かった。
コーナーでサヴァンナを抜きさっても、直線では難なくサヴァンナがGT-Rをパスしてしまうのだ。。。
もはや、GT-Rにレースマシンとしての戦闘力向上の余地は皆無に等しかったのだ。
結果は・・・・
ロータリー勢の圧勝だった。
日本のレースシーンにも、ひとつのピリオドが打たれ、また新しい歴史が刻まれようとしていた。。。
GT-R終焉の時は、刻一刻と迫りつつあった。。
この年の9月には、より大きくなってしまったC110「ケンメリ」スカイラインの登場が決まっていた。
その最後のレースまで、あと5ヶ月。。。
しかし、ハコスカGT-Rの戦いは最後まで続くのであった。
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ロータリー VS GT-R | クルマ
Posted at
2005/06/15 01:35:49