
北米とは違って、オーヴァー2Lが売れ辛い国内では、相変らず重く、レスポンシブルとは言えない「L20E」が主力になっていたが、ツィンキャムだのターボを搭載したクルマが次々にリリースされると、モワパワーの声は日増しに強くなる一方だった。
そんな声に日産は、魅力的な装備の充実や マンハッタンカラー と呼ばれる刺激的なツゥートンの導入や、SP、SR以来の、完全とまでは行かないがセミ・オープンとも言える「Tバールーフ」の追加、2Lモデルではギヤリングの見直し、エンヂン制御の見直しと矢継ぎ早に手を打ち、S130Zの人気を維持してきた。
81年の10月には、最大のマイナーチェンジが行われてエクステリアが大幅に見直された。
この時のトピックには、目立たないが「スペースセイバータイア」の採用もあった。
実は、それまでのS130Zは、「テンパータイア」や「スペースセイバータイア」の装備が認められなくて、カーゴルームには巨大な標準サイズのタイヤがカヴァーを被って載せられていた。
このために、せっかくのユティリティスペースも、台無しでこれがS130Zのウィークポイントとして上げられる事も少なくは無かった。
それがようやくマイナーを期に認可が下りて、カーゴルームのサイドスペースに輸出仕様と同様に「スペースセイバータイア」が置かれるようになり、ユティリティスペースの使い勝手も向上したし、重量的にもほぼ4Kgの軽量化も図られた。
ここで、2シーターと2by2の色分けが強くなされ、2シーターはさらにスポーティに、2by2はますますラグジュアリーの路線を色濃く出されるようになった。
しかし、2by2の内装を見ると、まるでローレルかセドリック張りの厚手のサポートなんていう言葉を微塵も感じないシートが採用され、一見するとこれが「Z」??と思わせるような雰囲気を醸し出すようになった。
もちろん日産お得意の、真っ赤な内装色にも磨きがかかり、ドライヴァーの目の疲労度の向上に貢献した・・・(かもしれない??閑話休題)
このマイナーによってS130Zは、わずかであるが息を吹き返したように見えたが、風雲急をつげるである。国内ではターボ化の嵐が吹き荒れ、それはとうとう軽自動車まで波及されたのであったが、当時の運輸省は「Z」はスポーツカーだから・・・という単純明快な理由で、S130Zにターボの認可を認めようとはしなかった。
そんな八方塞のS130Zにもようやく光明が射す時がやって来たのだ!
82年10月。ついにその時はやって来た。
セドリックに始まり日産車に続々と搭載されていた「L20ET」ターボチャージドエンヂンがようやくZにも搭載される事になったのだ。
最大出力145PS/5600min-1、最大トルク21Kg-m/3200min-1という今からみればささやかなモンだが、当時はそれでもS130Zを夢のオーヴァー200Km/hの世界へと導いてくれたのだ。
これは意外に知られていない事実なのだが、この「L20ET」搭載車でオーヴァー200Km/hを為し得たのはS130Zのみであった。
かのC210スカイラインターボでさえ、195Km/h前後が精一杯で、いかにS130Zが空力的に優れていたかを物語る逸話でもある。
さらに、国産車初となるロープロフィールタイアの装着、「215/60-15」のポテンザRE86(M)が採用されL20ETのポテンシャルに見合うコーナリングパワーも手に入れる事になった。
当時のTVCMでは、「Z ターボ!Z ターボ!Z ターボ!・・・」という大歓声中を、このS130Zが疾走し歓喜の嵐が巻き起こる・・・というのが流れたが、これは如何に日産が、そして多くのZのファンがスポーツカーたる動力性能をS130Zに求めていたかを物語るモノではなかったかと思うのだ。
しかし時の流れとは非情で、翌年の10月には新しいZが登場する事が分かっており、正直に言って遅きに失した・・・という感は拭われなくは無かった。
この時、ある評論家は、「S130Zへのターボ搭載は、日産のS130Zへのはなむけだった・・」というコメントを残していた。
名車と言われたS30Zの後を継ぎ、北米でさらなる飛翔を達成し、Zcarの名声を不動のもとしたS130Zであったが、国内では法外な税金の為に非力な2Lで闘わなくてはならず、正直苦戦の歴史であったと言わざる得なかった。
そんなS130Zではあったが、スポーツカーにラグジュアリーな要素を加味させて、新時代のスポーツカーの姿形を照らし出した功績は大きいといえる。
9年で52万台の初代か、いや5年で42万台つくられたS130Z かと言われる、実は S30系 に負けないくらいの台数が出た筈なんだが、現存数が壊滅的に少なく、なかなかお目にかかれる機会が少ないS130Zについて、私は日本のクルマの一ページを築いた一台に違いない・・と断言してはばからないと思うのだ。
もう一度、S130Zの存在価値を大いに見直すべきだと僕は願って止まない。
ターボが追加された翌年、ちょうど一年目にV型エンヂンを搭載したZ31がリリースされた。
しかし、高性能だがエクステリアも合わせて大味になってしまったZ31よりS130Zの方が・・・という声がZ31が出てしばらく続いた事をコメントしてS130Zのブログを締めたい、そう思うのだ。
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Posted at 2007/03/03 12:18:33 | |
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