
近代のラリーを闘うには、サーヴィスを如何に充実させるかが重要だ。
限られた予算で、最小限のサーヴィスカーと人員で対応するのはどうしたらよいか?
かつてはサーヴィスに必要な工具、部品、油脂類を運ぶ為にトラックを使っていたが、それでは「足」が遅く、結果としてサーヴィスカーの台数を増やす事になっていた。
1970年のDATSUNは9台のサーヴィスカーを用意したが内容は、移動の速度を上げる為にDATSUN1600SSS「7台」、セドリック・ヴァン「2台」であった。
さて、そこに詰まれる荷物を上げてみると、
タイア 5本
ガソリン10L缶 15本
工具類、交換部品、サーヴィス隊3人、その持ち物・・・と考えると、セドリック・ヴァンは兎も角、セダンのDATSUN1600SSSに、必要な部品類を全て積み込むのはかなり無理である事は明白な事実だ。
ルーフラックを最大限に活用しても厳しい。
サーヴィス隊員から難波へ悲鳴にも似た声が次々に飛んだ。
「ネジ一本無くてもリタイアしてしまうというのに、どうするんだ!!」
そんな声に難波は冷静に答えた。
「サーヴィスカーも
1g でも軽くして移動速度を上げる!ガソリンとタイヤを基本として最低限の部品しか積まない」
「ラリーカーが部品を必要とした時は、1600SSSサーヴィスカーより部品を取り外してラリーカーにサーヴィスする。」
隊員たちは、その言葉にハッとした!!サーヴィスカーに採用された1600SSSは単純なSSSではなく、ラリーカーと全く同じ仕様になっていた事を思い出したのだ。
それは単純に移動速度を上げる為・・・と思っていたのだが。。。
難波は言葉を続けた。
「サーヴィスカーもラリーカーも同じ仕様だ。ラリーカーが必要な部品はサーヴィスカーから、くれてやればいいじゃあないか」
名付けて
「蛸足作戦だ」
「蛸は食べ物が無く、生命の危険が迫った時は、自分の足を食べて命を繋ぐ。そして食べ物が手に入ると、めいいっぱい食べて、足を再生するのだ。」
「ラリーカーに部品を与えても、サーヴィスカーは100%の力は出なくなるが、それこそ何とかできるものだ。ラリーカーに時間的余裕は無いが、サーヴィスカーには時間ができた時に修理できる余裕がある。まさに
蛸足 と同じ訳だ。」
少ない台数で、他のメーカー、ライヴァルより少ない荷物で信じられない速度で移動するDATSUNチームは、大いに恐れられた。しかも、何処へ言ってもDATSUNのシャツを来た人間がコースに立っている!!
丸首 史上最強の心理作戦!1970年サファリの秘策とは!?
https://minkara.carview.co.jp/userid/124785/blog/13516404/
事実を知らなければ、それはある意味恐怖以外でもなく、恐ろしく緻密な心理作戦となりDATSUNを勝利に導いたのだ。
とかくマシンの戦闘力ばかりが強調されがちな中、難波は巧みな心理戦でも勝利したのだった。
省みて現代のラリーは・・・資金力の有無で語られる状況は正常なのだろうか?
40年前のDATSUNを振り返った時、何かが足りないと思うのは僕だけではないと思うのだ。
それは、何もラリーばかりではない、レースでも、いやクルマを売るという行為でさえ、何かを考えさせてくれるハズだ。
510ブルのしたたかさとは、マシンの優秀性だけでなく、こうした知力が有った事も記憶にとどめて欲しいものだ。
Posted at 2009/06/04 00:37:07 | |
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