
ラリー開始の前日、監督の片山はメンバーを集めてこう言った
「我々は亀である。遅くとも確実に走れば、最後にはチャンスがある!だから無理はするな!」 と。
実は、片山は現地に来て、欧州のライヴァルやアメ車の走りを見て、とても速さでは敵わない事を痛感したのだ。
ここで実際の、DATSUN 210 の動力性能を見てみよう。
こうした資料は、さすが米国、ちゃんとした機関に、ちゃんと申請すると、なんと当時のテストデータが入手できるのだ。
では、DATSUN 210 のデータを見てみよう。各画像はクリックすると拡大するのでジックリ眺めて見て欲しい。
米国のテストでは微妙に 100Km/h に至らず、しかも 90Km/h までは35秒弱かかる・・・。300Km/hまで書かれたテストシートが寂しさを覚える(笑)
実にゆっくりした加速・・・北米でハイウェイに入れず白バイに先導された事は有名なハナシで。
各ミションレシオ。・・・この頃の国産車としてはフツウの動力性能なのだ。
片山は、速さでは敵わないが、ラダーフレームに架装され、平行リーフリヂットの前後サスペンションを使った 210 の丈夫さ、耐久性を持ってすれば、この過酷なラリーを完走できると踏んだ訳だ。
とにかく、この年の Mobilgas Trial は例年になく過酷で、途中、豪雨とそれに伴う洪水で、多くのクルマがリタイヤしてしまった。

とにかく豪雨で泥練路が各所で表れて多くのクルマがリタイヤしてしまった。
洪水で増水した川水と泥沼にはまって クライスラー は、先に進めなくなり、豪雨の影響では無いが、走行中に転倒してナビゲータが車外に投げ出されて死亡してしまったモーリスマイナーなどなど、それ以外ににも立ち木に激突してリタイヤするクルマが多発してしまった。
こうした立ち木への激突事故も、この年は多発してしまった。事故が多く、この年を最後に豪州一周ラリーは中止となった。
ラリーが進むに連れて、道端にクルマの残骸が目立つ様になった。
現地のナヴィゲーターは言った
「Mr ここで止まったら、ああなるんだと」
切ない言葉であった。
参加台数67台で、19日間の過酷なラリーを完走したのは、何と35台になっていた。
DATSUN は二台共完走し、難波が乗った富士号が総合24位でクラス優勝。もう一台が殆ど最下位であったが、クラスでは4位と、トヨタがクラウンで二年連続で出場していながら、完走さえできなかったのに、初出場で結果が残せたのは立派と言って良いだろう。
トヨタは前年もチャレンジしたが、この年も含めて完走できなかった。
さらに DATSUN チームは、途中で事故を起こした モーリスマイナー を救援した事で、「スポーツマンシップ賞」も受賞した。

日産車ファンなら、超有名な写真。鯉のぼりを掲げてゴールのシーン。
このラリーで、日産はより多くの事を学んだ。高速走行での振動問題。電気系の水対策・・・
ラリーは正に走る実験室だと。
Posted at 2021/10/19 00:18:48 | |
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