
1992年の春から登場した 「300系新幹線」 がよいよ退役することになった。
270Km/hで走行する新時代の新幹線として開発され、それまでの新幹線のデザインを一新し、JRの期待を一身に浴びて登場したのだが・・・・
「のぞみ」として、全席指定で料金もちょっぴり高め、でも、はやいですよ・・・という感じで運行されていたが、僕の印象は正直あまり芳しくないものだった。
まずは、横方向の振動というか振幅が大きく、さらに回生モーターの影響か、走行中にかなり大きな前後の振動を発生させるのも最初に乗った時、エラク驚いたもんだ。
さらに、車体の振動が大きい事が災いしてか、モーターボルトが緩んでモーターが脱落する・・・というトラブルを頻発してしまった。
おまけに、その原因を最初は製造メーカーのせいにして、実は・・・・組み付け時の「締め付けトルク不足」が原因だとか、揚句には、乾いていない塗料の上でボルトを締めつけたから、塗料が乾き、ボルトとボルト座の間に隙間ができて緩んだ・・・なんて、ど素人でも
「そんな訳ねぇだろうが!」
疑問に感じる報告書で、ボルト落下の原因追及を終わらせた事に、この時期、多くの専門書、技術者系雑誌などで、話題になった事も懐かしい思い出だ。
僕の記憶が正しければ、結局は、締め付けたボルトの頭に貫通穴を開けて、そこへワイヤーを通してボルトが脱落しないようにした・・・という、第二次世界大戦の戦闘機のレシプロエンヂンを固定するボルトのような前時代的な方法で密かに対策が取られたのであった。。。閑話休題
こうして、いろいろな問題を抱えて300系は走り続けた訳だが、さらに次世代の700系が登場して、0系、100系、200系と現役の引退に伴って、「のぞみ」から「ひかり」、「こだま」車両へと転身して、よいよ2012年の春に引退する事が決まったという次第だ。
東海道・山陽新幹線から来春300系が引退します
http://www.westjr.co.jp/press/article/2011/10/page_921.html
300系の変遷
http://www.westjr.co.jp/press/article/items/20111020_300_01.pdf
まぁ、ここまで僕的な300系の、余り良くない印象や、現代の技術なのか?という様な事をツラツラと書き綴ったが、いやいや実際には 300系の失敗 が、現代の700系の成功の礎になっている事を評価せねばならないだろう。
振動、騒音の対策や居住性の向上、そして高速走行に耐えうる性能を可能にしたのが、そうした300系の数々の経験があったからこそだと思うのだ。
軽量構造のボディ、空力の向上などなど、開発で得たノウハウも700系に脈々と受け継がれている。
そうそう、速度も試験車両だが、1991年に 325.7Km/h という輝かしい記録も保持している。
満足な試験走行も行わず営業運転を始めて問題を多発させてしまい、それでも、ひたすらに高速走行を求めた 300系新幹線 。。。。。。
そこから得られた失敗も含めた経験は、間違いなく日本の鉄道車両の技術力の向上に役立った。本来であれば、新時代の新幹線として栄光の記憶で終焉を迎える筈であったのに、そこに携わる技術者や企業の論理が優先され、不遇な教訓を多数残すことになってしまった、ある意味で 「不幸な新幹線」 だったのかもしれない。
鉄道の技術力向上、技術のあり方もそうだが、日本の製造業の全てに、色々な問題定義を与えた功績は多大であった・・・・・と僕は感じている。
そうした目で、もう一度 300系 を見つめ直して、来春のラストランを温かく見守りたい、そう思うのだ。

Posted at 2011/10/21 07:32:36 | |
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