
七夕生まれの君へ
父より
お誕生日おめでとう。
今年で19歳になりました。
それまで普通に、大きくなって、やんちゃになって、もしかしたらいつか彼女を連れて来たりって、どこの家族にもある成長の姿をボンヤリ想像しながら過ごしていたのに、6歳の春に、ふと、受けた検査で、その結果を聴いて、それが夢になってしまうと分かって13年が経ちました。
「酷な事を言いますが、このままでは二十歳まで生きて行けるか分かりません」
「普通のお子さんに、あってはならないある酵素の数値が 一万倍 以上みられます。
この酵素が、このままだと、この酵素によって細胞が破壊されて運動機能が損なわれて最後には」
という6歳で人生の終わりを宣言されたのでした。
それから、お父さんとお母さんは、昼間は何時ものようにふるまっていましたが、夜になって君が寝静まると、何日も何日も、君の未来を、そしてこれから、どう生きて行くかを考えると涙が止まらなくなって泣いて夜を過ごしました。
今は、こんなに笑顔で、周りの子供たちと同じように走り回って、ケンカしてって何も変わらない生活を送っているのにどうしてって何度も思いました。
たまたま受けた検査です。もしかしたら、何かの間違いで、今はと思いましたが、それから毎年、検査を受けても悪い数値は良くなっても通常の 3000倍 という異常な数値のままでした。
普通は子供の成長を、楽しみに、時には驚きの目で過ごすのですが、君の場合は、成長が進むと逆に病状が悪化してしまうので、大きくなってゆくたびに逆に不安になってしまいました。
そして、だんだんと歩く速さが遅くなって、走れなくなって、立ったり座ったりがしんどくなって、中学に上がる頃には、クルマ椅子の生活になってしまいました。
成長ともに、同じような病気の子供が通う病院を紹介されて通院する様になって、まわりの、同じような病気の子供たちや患者さんの様子を見て、ある日、お父さんに
「僕も動けなくなって、最後は死んじゃうのかな」
お父さんは、何も言えませんでした。
お父さんも、お母さんも、君が寝ると、突然、病気が進んで何が起こるか分からないので、正直、何度も君が寝静まっていても、夜中に息をしてるか、身体が温かいか確認してしまいます。
朝、君が何時ものように、ちょっと眠そうな顔で「おはよう」って言ってくれることが、本当に幸せです。
ただ、たくさんのお医者さんや、療法士さんの治療や、リハビリで、病気の進行が抑えられ、もう、寝たきりで言葉も話せなくなってしまうと言われていた年齢を過ぎても、身体が動く状態までなんとか確保されて19歳の君は、看護師の方を頼んで、大好きな電車を見に行ったり、模型を走らせに行ったりしています。
正直、この1、2年になって、病状はゆっくり進行していますが、初めて、君が成長して大きくなって良かったって思えるようになりました。
運動なんて縁が無いって思っていたのですが、ボッチャと出会って、まぁ成績はツメの悪さから(笑)いつもどん尻近くですが、県の大会に出たりして、なんだか普通の青年に近い青春を謳歌しているのが何よりのお父さんと、お母さんの幸せです。
もう、腕も上がらない状態ですが、電動車いすで移動する君は、人やクルマがいない道路では、クルマを運転するお父さんに似て、意外なスピードで移動しているのを見た時には、ちょっと驚きました。
本当は、君が免許を取って、お父さんは君の助手席に乗ってみたかったのになぁって思います。
正直、どんどんと、できる事が減っていますが、そんな中で、家族で出来るだけ時間を作って、いろんなところに行って、たくさんの時間を一緒に過ごせたらって思います。
二十歳までが、ここまで頑張ってこれたのです、もう少し、あともう少し家族で頑張って、たくさんの時間を一緒に過ごせたらって思います。
また、新しい一年が始まりました。
正直、色々な苦労も増えるでしょうが、そんな時は、家族で、お父さんや、お母さんの力も借りながら前を向いて歩んでゆきましょう。
生まれて来てありがとう。
そして、これからも一緒に頑張ろうね。
2022年7月7日
七夕生まれの君へ 父より
Posted at 2022/07/08 09:25:03 | |
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