ルノーが戦車を造っていたという事実

各ブランドの成り立ちって調べてみると興味深いものです。技術を活かしてまったく別のモノを造っていた、またはその逆で自動車を造ったというのは割とよくある話。

わかりやすい例では、スバルが古くは航空機を造っていたというのもそうですし、航空機繋がりでいえば、BMWも今は無きSAABも同様。

さて、今回取り上げるのはルノー。実はルノーも過去に航空機用エンジンを造っていました。戦車を造っていたという俄かに信じがたい事実があります。このことは案外知られていないのかもしれません。

現代のルノーブランドの躍進ぶりを見るにつけ、「ルノー＝戦車」と想起させるのは難しいかもしれません。いろいろ資料を調べてみても、残念ながらあまり詳しい資料が見当たりません。

個人的にルノーに関する資料はそれほど多くは持ち合わせがありませんが、一つだけ掘り下げた資料を見つけました。

それはこれ ↓

『A century of Renault , in pictures（写真でつづるルノーの１世紀）』

今から１８年前の1997年のこと。当時のインポーターだったフランスモーターズの販促品として配布していたモノで、1898年から1995年までのおよそ100年間のルノーの歴史についてまとめた冊子。255ページにも及ぶつくり。

それによると、こんな記載が見られます。

１９１４年
第１次世界大戦勃発。＜マルヌのタクシー＞（戦争遂行のため徴用された1,200台の２気筒ルノータクシー）は前線に6,500台の兵士を輸送してマルヌの戦いにおける対ドイツ軍勝利に貢献し歴史に名を残す。

　　≪画像は拝借しました。≫
ルノー・タクシーを兵士の輸送のために暫定的に転用したことは、ルノーの力なくして「マルヌの戦い」の勝利に繋がらなかったということでしょうね。今でも語り草になっているとか。

ルノーは戦争省の要請を受けて軍需生産を開始する。この年の終わりまでにルノー社は砲弾、航空機エンジン、救急車などの製造を含む３１種類の契約を結ぶ。

ルノー社は戦争勝利のさらなる貢献のために、さまざまな軍備に必要な物資を製造することになるわけですね。

１９１５年
フランスは毎日10,000発の75ミリ砲弾を生産するが、それでも需要に追いつかない。フランス政府は国内の全製鋼所と全自動車製造会社を動員する決定を下す。ルノーは軍需生産に対して大いに貢献することになる。

国威発揚のためにもフランス全国を挙げて立ち向かうことになりますが、ルノーは物資製造に貢献するということなのですね。

１９１６年
フランス軍戦車部隊司令官　ジャン・エスティエンヌ将軍がルイ・ルノーのフランス陸軍用ＦＴ１７軽戦車製造計画を支援。

　　≪画像は拝借しました。≫

１９１７年
ＦＴ１７の第１号プロトタイプが生産ラインから発進し、国防省はまず100台発注する。ＦＴ１７は後に1,100台に増え、さらに１９１８年には3,000台に達する。

　　≪画像は拝借しました。≫

１９１８年
ルノーの戦車はドイツ戦線を越え、連合軍の勝利に貢献する。

１９１９年
ルノーの戦車はシャンゼリゼの凱旋パレードで華々しい位置を占める。戦争は終わり、ルノーは100%民需生産に戻ることになる。

件の資料、『A century of Renault ,in pictures（写真でつづるルノーの１世紀）』には以上のようなことが書かれてありました。

さて、ここでルノーのロゴを見てみましょう。

1900年から1972年まで採用されていたロゴ。

お気付きの方もあるかと思いますが、1919年に採用されたロゴは・・・

ルノーはかつて戦車を模したロゴを採用していました。採用された年は終戦の年。

採用したいきさつはわかりませんが、戦勝を祝して貢献したことを残したかったのかもしれませんね。しかし、たった４年間のみの使用で次のロゴへ移行したもよう。

これは想像に過ぎませんが、ルノーにとって戦車を造るという行為は意に反するものだったのかもしれません。ルノーと戦車との関連性はないように感じられますが、クルマ造りの技術が戦車製造でも活かされ、そのことによって大いに貢献したのでしょうね。