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2015年10月04日

目線 豊さに振りまわされたバイオレット

目線 豊さに振りまわされたバイオレット  1967年(昭和42年)日産は初の女性デザイナーを採用した。おそらく日本で初めての女性カーデザイナーであろう、後にも名を残す島田京子と、望月迥子の二名だ。

 この頃、日本は「イサナギ」景気の真っ最中で、GNPで世界第三位になり、自動車生産台数でついに亜米利加に続いて世界第二位に躍り出た。

 クルマに対する要求も、単純な移動手段だけでなく、趣味性の高さ、意匠のセンスも求められるようになっていた。

 そんな中、国内販売では、七つの新機構と、シャープでシンプルな造形で世界各地で名声を得ていたブルーバード510がコロナに対しては抜きつ抜かれつのデットヒートを繰り返していた。

「良いモノを作ったのに日本では売れないんだ!?」

510をまとめた 大田昇 や、デザインした 四本 にも、その原因が分からないでいた。そんな時、新たに戦力に加わった女性二名から、510ブルーバードに対してこんな印象が語られて、それがその後の日産車の方向性にも影響を及ぼした。

「理知的だけど線も面も冷たく、色気が足りない・・・・」

さらに追い打ちをかけたのが、コロナばかりではなく コロナ・マークⅡ にも苦戦していた販売サイドからも510ブルーバードに対して否定的な声が聞こえて来るようになって来たことだ。

世間は豊かになった、クルマの見た目にも豪華さが無ければダメだ、510はコロナマークⅡに比べたら 「豊かさ」 と 「豪華さ」 にかけている。


シンプルで飽きの来ないデザインも当時は豪華さ華やかさがない冷たいデザインだと酷評されていた。

中には「ブリキの箱」の様だと言い放つ販売店まで出ていた。

 そんな声に押されて、デザイナーたちは苦悩し「豊かさ」や「豪華さ」をキーワードにしたデザインの模索が始まった。

 さらに北米では曲面を生かし、クウぺの様な流線形のデザインが流行り始めていて、窓面積を小さくしてクルマの室内を「プライヴェート・ルーム」とする思想「マクルーハン・インボルブ」にも影響され、流線形と窓面積の縮小でデザインが進められた。


フロントからリヤに流れる様なポップラインが、造形的な優しさ、優雅さを、コーダ・トロンカ調のノッチを避けたなめらかなラインが710のハイライトだ。そこには論理的な線と面が展開され無駄な線や面は存在しない。

 果せるかな 710ヴァイオレット が発売されると、販売店サイドからは歓喜の声が上がり 「これならコロナに勝てる!こんな良いデザインが日産にもできるんだ」という声が多く寄せられた。


流れる様なサイドライン。ノッチを無しくしたCピラーは如何にも流線形と言う雰囲気だ。

 僕が 710ヴァイオレット を大いに評価するのは、日産自動車のカーデザイナーの大御所であった「前澤義雄」氏曰く 「白鳥になることのない”醜いアヒルの子”みたいなクルマ」 と言わしめた 710ヴァイオレット だが、そのデザインに隙はない。

確かに当時の日本車に多かった、不要なプラスチックによる「過飾」はご容赦なんだが、一本一本の線や、そこに流れ込む面構成に無駄や、今のトヨタ車に見られる思い付きのプレスラインは一本もない。

 そのことを端的に表す驚異的な数字がある。 「空気抵抗係数 CD値 だ。」


単純に曲面と曲線をデザインしたクルマではない。ツゥドアハードトップでCD0.39を誇る!

 ノッチや不要な断面変化を避けたなめらかな造形は、空気抵抗にも良い影響を与え、1970年代にあってすでにセダン CD0.40 、ツゥドアハードトップ CD0.39 を誇っていた。

 時代や、売り手の最前線である販売店の声でデザインされた 710ヴァイオレット であったが、結構な出足で販売台数を伸ばしていた矢先に不幸に見舞われることになる。

オイルショックの到来であった。
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Posted at 2015/10/04 23:06:22

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この記事へのコメント

2015年10月10日 22:19
 「視界が広すぎるとかえって疲れる」、という説は、特急電車の運転士の労働研究からわかったことだそうです。視界の下の方で速く流れる線路を見ていると、眼精疲労?が高まるというもので、特急電車の運転台が高いのは、この節によるものの模様です。

 さて、本題のバイオレットですが、私が小学生の時には思いのほか良く見かけたような気がします。幼少ながら前期と後期の見分けと意味もわかりました。私はこの車に、初代セリカの影を感じます。特に後期のセダンは、セリカクーペの考えでセダンを作ったらこうなった、というテーマ性?を感じました。

某間違いだらけ誌では、カリーナのライバルとされていましたが、ボクシーなカリーナHTが受け入れられていましたので、多くの人の好みというのは本当にわからないものです。
コメントへの返答
2015年10月12日 4:01
>視界の下の方で速く流れる線路を見ていると、眼精疲労?が高まる・・・・

正確に言うと、目線からの距離による「相対角速度」の差が問題なのですね。
つまり 同じ速度でも、景色や地面がなどの「較対象物」が、目線に近いほど角速度が大きくなり、体感速度が大きくなるという事ですね。
そうなると、見たモノの処理速度を早くする必要性が増して「疲労度が増す」という事です。

このことは、言われるように特急の運転席の位置が高くされている要因であり、さらに言えば、300系新幹線以前の新幹線では客室の窓にも当てはめられて、疲労度もそうですが、体感速度を遅くするために、在来線に比べて高い位置に窓が据え付けれていました。

さてさてヴァイオレットですが、最初は売れていたんですね。
ただタクシー業界からは、当初から後方視界が悪いと不評でしたが、一般のユーザーからはそこそこの評価でした。

ただ残念なのは、半年後に起こったオイルショックで、一気にユーザーの志向が、省エネに向いて、ヴァイオレットやブルーバードUは豪華すぎる、無駄が多い、華美だと言われるようになって時代にそぐわなくなってしまったことです。

これがスポーツカーやスペシャルティカーなら、何とか持ち堪えられたのでしょうが、毎日使いのクルですから、イメージで不経済だと思われるようになったのは不幸でした。

人の嗜好って本当に掴み辛く、時代の運不運にも左右されるので難しいですね。

プロフィール

「後視 いやぁこんなに簡単なバックカメラがあったなんて!! http://cvw.jp/b/124785/23876370/
何シテル?   01/04 14:54
無類のクルマ好きで、日産車を愛してやみません。 徳小寺 無恒のHNを引っさげ、かつての愛車、ワインレッド・パール・ツゥートンのU14ブルーバードの話題を軸...

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