
スカイライン・ジャパンのデザインを紐解く旅もよいよ最終章を迎えた。
西部警察などで一名を馳せたC210こと、スカイライン・ジャパンなのだが、一般的な市場の評価は前作の「ケンメリ」や、その前の「ハコスカ」の方が評価が高い。
しかし、玄人からの評価としてはジャパンの計算しつくされたデザインも実は高評価なのだ。ケンメリのデザインは、完全にそれまでの国産車がそうであったように、亜米利加車の影響を多大に受けていたが、ジャパンは、その時期登場した欧州車、それは現在までもある意味でスタンダードと言われている VW GOLF のデザイン・・・・いや、ジョルジェット・ジュージアロの思想を多大に受けているのだ。
初代GOLFの成功は、その優秀なパッケージングと、クルマとしての走る・曲がる・止まるという基本特性が高い次元で両立されていた事である事は間違いのない事実である。
まったく無駄のないデザイン。しかし、そこには無機質な雰囲気は無く、美しささえ感じる。
住居スペースはこれくらい、エンヂンは、窓の大きさは、荷物はこれくらい詰めるスペースがという、相反する命題を鎬を削って割出、それをボディという殻で包み込む。そこには、無駄な線も面も存在しないデザインが存在した。
かつて ジョルジェット・ジュージアロ のデザインを、「折り紙細工」とか表現した言い方が流行ったが、それは正しくもアリ、また間違ってもいる。単純に直線や平面のデザインのみであるなら、そこに感性は存在せず、人に訴えかけるモノは無く、これほどのヒットにはならなかっただろう。
顧みてジャパンのデザインは、定規で引いたようなシャキッとした直線と、あたかもカンナでスパッと削り落としたような硬質な面で形作られている。
無駄な線も面も存在しないスパッと切り落とされた面と線が織り成すジャパンのデザイン。画像は幻の限定車「ダンディズム」。
決して欧州調のデザインではないが、ここの面は、その先のここの線と繋がり、この面は遊ぶことなく収束させてと、ジャパンの線と面は計算づくで作られており、そこに ジョルジェット・ジュージアロ の計算づくのデザインの影響を感じざる得ないモノだ。
GOLF の発売は1974年頃だったので、そのデザインの影響が ジャパン のデザインにも影を落としたことは疑う事の出来ない事実だろう。
ジャパンのサイドヴューを眺めて見ると、実に考え抜かれた線と面で出来ている事が分かるだろう。
単純な直線と平面では無い、必要な場所に必要な線と面が切られているジャパンのデザイン。
一見すると、フロントのホイールアーチ前半のバンパーから続くプレスラインと凸面が、フロントホイールアーチ後半からの、凹面と、リヤホイールアーチ後半の、リヤバンパーに続く凸のプレスラインと整合性が無いように見えるが、フロントバンパーからの上部の造形は、単純に面を張り出すのではなく、一段深い彫を入れて、フロントバンパーの連続面である事を強調し、バンパー下部から繋がる面は、単純な折り返しにして、ドア部の凹面との整合性を取っている。
バンパー上面から続く彫の深いプレスラインは、ドア面の凹面上部の線との連続線では無く、あくまでフロントバンパーとの線と面との連続面である。あくまでフロントバンパーの機能面を収束させる為の面と線で、ドア部のサーフィンラインの面や線との連続線では無く、バンパーの機能を強調した計算づくの面と線なのだ。
リヤのバンパーから伸びるプレスラインも然りだ。
ジャパンのデザインは、日本人の感性に即した、直線と平面で出来ているとはよく言われるが、それは表面的なもので、そこにあるのは、計算づくの無駄のないデザイン、GOLF 、ジョルジェット・ジュージアロの影響が感じられる、単純な欧州デザインの真似では無い、日本人がそれを噛み砕いて日本独自のデザインとして玉成したデザインであった事を知って欲しいと思う次第なのだ。
ジョルジェット・ジュージアロの代表作のひとつである「ロータス・エスプリ」。そこにもジャパンに通じる計算づくの折り紙細工の美しさが見て取れる。
Posted at 2014/07/20 12:19:48 | |
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