
クルマのデザインというのは、本当に難しい。
万人に受けようと画策すると、当たり障りの無いモノになり、大体が「面白みの無いデザイン」と称されてしまう。
一方、思い切り既存の価値観や感覚を逸脱したデザインを試みると、「乗る人を選ぶクルマ」などと称されてしまう。
成功したモデルの後のモデルチェンジもまた難しいものだ。
フェアレディーもご多分に漏れず、デザインによって好不調が大きく分かれてしまったモデルだ。
例えば初めてZとなったS30からモデルチェンジしたS130などは、間延びしたとか、肥大したなどと、陰口を叩かれ正直、後の世に余り残らなかったモデルだが、考えてみると、安全性や居住性、環境の面からは大きくZ30より進歩していた。
僕はある意味で、S130は嫌いではない。
デザインで言えば、完全なキープコンセプトで面白みには欠けるが、そのデザインをそうでないデザインに替えるマジックを考えてみた事はあるだろうか?
そのひとつが「カラーリング」だ。
S130でもシルバーとブラックを上手に配色した、マンハッタンカラーが有名だが、実はメーカー純正でひとつ間違えれば「際物」になってしまう色の取り合わせで、そうでない好例があるのだ。
それが、日本には残念ながら導入されなかったが「280ZX 10th ANNIVERSARY」モデル限定車だ!!
これは、1980年にZの登場から10年を記念して登場した、北米専用のモデルだ。
確かに910ブルでも「赤黒ツートン」は存在したが、このZのエクステリアは考えに考えられているツートンなのだ。
まずは、通常は低重心に見せるために下側だけに施す暗色を、ボンネット、ルーフまで施工しているのが注目される。
こうする事によって、さらに上面の存在を希薄にして、さらなる低重心に見えるようになっている。
ただ、これだけでは、重苦しくなってしまうので、その黒の面と赤の面に細いストライプを入れて、面と面とのメリハリをつけて、それを防いでいる。
ここで重要なのは、ボンネット上のバルジの境のストライプ色が何と「赤」である!というのが、驚きではないか!!
これを白などにしなかった為に、全体との色調が統一され、S130の持つロングノーズ感が上手に演出されている。
さらにさらに、ボンネット上の「Z」のエンブレムが、ボンネットの黒に合わせて、「ゴールドメッキ」されている・・ので、シルバーに比べ、ギラギラ感が緩和され、イヤミの無いアクセントとして燦然と輝いている・・・
クルマというのは、まさに乗る人のセンスを具現化していると思うのだ。
ノーマルの美しさを堪能するのも良いだろう。
しかし、駄作だの没個性的だのというモデルを、オリジナルのカラーを生かしながら、ホイールやエクステリア上の工夫を加える事によって、「粋」に乗っているオーナーを見ると、思わずうなってしまうのだった。
そんな、一工夫で如何様にも・・・というのをメーカーである日産がやった事に、少々驚きと、だったら最初から・・と思うのは私だけだろうか・・・
(PS)
売れてなかったとか、不人気だと言われていたS130Zだが、実は1979年の年間総生産台数は約10万台に達して、現在から過去において最高の数字を記録しているのだ。。。
もうすこしS130Zを見直すべきでは無いだろうか・・・
Posted at 2005/04/28 00:47:52 | |
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