CGいや小林章太郎 氏 にとって、GT-Rは「ついてないクルマ」であった。
セダンGT-Rは、エンヂンの不調にあげくはクラッチも不調も合わさって満足の行く結果が残す事ができなかった。
リヴェンジにと、再び駆り出されたセダンGT-Rは、3月というのに都内で30cmを超える積雪を記録して、とうとう記録を取れなかった。
ツゥードア化されて登場したGT-Rは公道上では卓越したハンドリングと動力性能を発揮したが、さてこれがサーキットになると・・・
小林氏は、GT-Rの真のポテンシャルを知るために思い切った秘策を打って出た!
それまで日産の広報が用意するGT-Rを使っていたが、それでは満足の行く結果が得られない・・・つまり一台しかない広報車は常に雑誌などのテストや試乗という名目の「破壊試験」にさらされているから完調でない場合が多い。
そこで、櫻井眞一郎氏に直訴して、なんと、生産ラインから「抜き取り検査」されるためにラインオフされたGT-Rを提供してもらう事にしたのだった。
もちろん、そのGT-Rは、CGのためにわざわざ実験課の手によって念入りに慣らしが行われ、万全の状態で手渡されたのだ。
ただ残念なのは、好き好んで普通は買わないだろう「レギュラー仕様」の155PSのGT-Rであった事だ。。。
まずは「谷田部」で動力性能のテストが敢行された。
気象は快晴、無風状態で、低温高湿度という絶好の条件で、最高速や中間加速のテストが行われた。
結果・・・
最高速1Km平均185.56Km/h 、ゼロヨンは16.6秒、0-1Kmは31.1秒という結果になった。
セダンに比べて最高速は伸びたが、加速ではゼロヨン、0-1Km共に0.2秒遅い結果となってしまった。。
これは最高速は、ツゥードア化による空気抵抗が効き向上したが、加速はレギューラー化されたエンヂンによる影響が空気抵抗の低減や重量軽減を上まわってしまった・・・と推測された。
さらに小林氏は・・・
「オプションのテールウイングを付ければ、カタログ値の195Km/hは無理だろうが190はいける・・」かもしれないとコメントを残していた。
一方、操縦性では、こんなインプレを残している。
「FISCOにGT-Rを持ち込んでハンドリングを満喫した。
4.3Kmコースの高速コーナーでは、標準タイアのままでも、スロットルとステアリングで前後輪のコーナリングパワーをバランスさせながら、ドリフトに近い姿勢できれいに回る事ができる。
公道上ではロールしないと思われたサスペンションもサーキット上で可能な大きい横Gではかなりロールし、パワーがある分だけに、ロール・オーバーステアに転ずる。
一方、ヘアピンの様なスローコーナーでは、GT-Rの”ツーリングカー”的な要素が大きなマイナスになる。
まずアンダーが強く、大きくロールし、2速でフルパワーをかけると容易に後輪がブレークしやすい。」
結果としてこの時代のGT-RについてCGではどう思ったのだろうか?
随分あとになるが、R32のGT-Rが出た時に小林氏は、TOP画像のタイトルで、この頃のGT-Rについてこうコメントしていた。。
「何度、日産の広報車を借りてテストしても完調でなく、また調子が良かった時も雪が降ったりして、谷田部で満足すべきデータが取れなかった。
後に櫻井氏にお願いして完調なハードトップGT-Rを借りたが、最高速も加速も我々の期待を大幅に下回り、これはきっとレギュラー・ガソリン仕様だからだろう・・と慰めあった。」
現実問題として市販されるGT-Rにおいては、なかなか思った様な結果が残せなかったのは事実だろう。
しかし、それとは違ってレースシーンではロータリーとの激しいバトルが繰り広げられ、戦績を残した。
確かに雑誌などでは結果は残せなかったGT-Rだが、そのあまりにも高額な車両価格と、レースでの結果が、それらのデーターを、ハイチューンゆえの気難しさ・・という言葉に摩り替わり(それも事実だが・・)神格化されたというのが事実であるだろう。。。
ここで但し書きなのだが、僕はGC10やKPGC10の高性能さを否定するモノではないことを断っておく。
メーカー自身でさえ、完調に保つ事の出来ないチューニングのエンヂンを市販したという事実が、今の誰でも気軽に・・というお手軽なハイパワー車とは意を異なっていると思うのだ。
それゆえに、ハコスカGT-Rをいかに完調にするか?というチューナーも多数出てきたし、プライヴェーターもたくさん存在する事になった。
果たせるかな現代の高性能車で、そんな執念にも似た思いでクルマを維持するオーナーがどれくらい出てくるのだろうか?
そこには、単純にレースでたくさん勝ったから・・とか、単純にマニアックだから・・といった要因分析では図り知る事の出来ないGT-Rの
真の魅力が潜んでいる様に思えてならないのだ。。。
ハコスカGT-Rの真の魅力を求めて、僕はまだまだ魅惑の迷宮の旅を続けなければならない・・・そう改めて感じたのだった。
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Posted at 2006/08/06 18:27:08 | |
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