
皆さんは、
「コーダ・トロンカ」 というスタイリングをご存じだろうか。いや、言葉を知っているだろうか。
僕の年代には、懐かしく、また実に甘美な言葉なのだ。
「コーダ・トロンカ」 を端的に言えば、流麗なファスト・バックの途中から、スパリと切り落としたようなリアスタイルを総称している言葉だ。
他にも「カムテール」などという言い方もすることを付け加えておこう・・・閑話休題
これは1930年代に、最も空気抵抗の少ない形として提唱された、カーデザインで、このデザインは現代にも脈々と受け継がれており、「プリウス」なんぞのリアスタイルも、間違いなく
「コーダ・トロンカ」 と言えるだろう。
僕の大好きな二代目のシルヴィアも、「コーダ・トロンカ」スタイルだ。こんな美しいクルマが売れなかったのは不思議だ。
まぁ、人間の直観的な感覚でも、空気抵抗が少ないイメージがあるので、面白いところでは、フェアレデーSR311のテールに、「コーダ・トロンカ」のテールを被せた
ガンさん事、黒澤元治氏、若かりし頃のマシンがこれだ。
レーシングSR311が、1968年にレースシーンに登場してエラク驚いたのも懐かしい記憶だろう。
そうそう、ちょっと 「コーダ・トロンカ」 の話題から逸れるが、リヤを流線型にしたモンがあるのなら、実はフロントを流線型にしたレーシングマシンも存在した。
それが、かの浮谷東次郎がドライヴした「カラス」こと
フロントノーズを滑らかにして、「全身」黒づくめだったので「カラス」と呼ばれていた、ホンダS600がコレだ。
ホンダS600だ。
人間の感性は、遠からず近からず、空気抵抗の少ない形はコレだという具体的な表現が、黒澤元治のSR311や、浮谷東次郎のホンダS600だったのではと今となって思うのだ。
ちなみに、ノーマルのS600はこんな感じだ。若い子はホンダSシリーズなんて知らんだろうからね。
面白い事に、そうした直観的な感性に逆らうのも人間の性で、1970年代から80年代には、こんな、
折角の 「コーダ・トロンカ」 スタイルを崩して、デッキスタイルにするキットが売られていた。
「コーダ・トロンカ」 をスタイルを、「デッキ・スタイル」に崩すキットが各車各様に出ていた。
一瞬、意表を突くスタイルだが、ラゲッヂスペースは無くなるは、空気抵抗も増大するはで、良い事は何もなかったんだが、何故か結構な数が売れていた。
実は、僕が久々に 「コーダ・トロンカ」 を思い出したのは、1930年代という昔に提唱されたスタイルが、今でも洗練され脈々と生き続けている事に、ある種の感性と現実の整合性の一致に、最近のコンピューター尽くめには無い、人間の凄さを感じたからなのだ。
果たして、今のカーデザインや設計をやる連中に、100年も通じる形や理論が出来るのか?そんな、不安もよぎった事を告白せねばなるまい。
そういった意味でも 「コーダ・トロンカ」 という言葉を、もう一度、皆さんにもクルマにかかわる人にも思い出して欲しいと願ってブログを UP した次第なのだ。
このブログで何かを感じて頂けたら幸いだと感じているのだ。
Posted at 2012/08/10 02:45:02 | |
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