
かつて、非常用の発電装置に関わった一人として今回の災害に関しては色々な思いが過ぎった。
自分が、かつて手がけた施設などの名前が、テレビなどに出て来る度に、あぁ、あそこの自家発のエンジンは、あのタイプだったよなぁ。。。地下タンクの容量は確か・・とか、どんどん頭をよぎる。
そして、まるで我が子の様な感情に捕われ、「頑張ってくれ」、「頑張れ頑張れ」と思わず目頭が熱くなるのだった。
これほどまで、非常用発電と言うものがクローズアップされたのは、阪神淡路大震災以来だろう。
非常用の発電装置についての細かいハナシは別にして、大まかに言えば、大きな商用施設や官庁、病院、原子力設備には、バックアップとして非常用の発電装置が設置されている。
発電装置には、大別して二種類あって、デーゼルを筆頭としたレシプロ機関と、ガスタービン機関がある。
かつては非常用発電装置といえば、デーゼルが主力だったが、冷却水が必要と言う点と、重量が重く、振動、騒音でガスタービンへの需要が増えたが、完全には切り替わらなかった。
ガスタービンは、デーゼルに比べて小型で冷却水が不要という事と、何より振動騒音が抑制し易い、さらに回転変動が少ないので良質な電気が得られる・・・といい事尽くめの様だが、実は大きな問題がみっつある。
1.燃料消費量が大きい。
2.電量供給までの時間が長い。
3.再起動時間が長い。
何たって燃費が悪い。僕の時代は、最低二日間の燃料を燃料タンクに常備しなければならなかったが、デーゼルに比べて燃費が悪いので地下タンクがデカイの何の・・・
さらに回転数が高いものだから、商用電源断、つまり停電からガスタービンが発電を始めるまで「40秒」はかかってしまう。。。たった40秒というが、これが以外に長い。考えてみて欲しい、これが病院だったら。
次ぎに問題なのは、一回運転を停止し、再起動するまでが数分から数十分必要となる。例えば地震等が落ち着いて商用電源が再開した、すると非常用発電装置は運転を中止する。ところが、再び地震が起きて再起動しようとしてもスグには再起動しない・・・これは本当に困った問題であった。
僕が居たメーカーでは、制御装置やスターターを改良して40秒までリスタートできる様にした。これで随分と病院などでも、バッテリーと合わせてガスタービンを採用してくれるようになったものだ。
さて、今回の特殊な発電所での問題なんだが、何かあった時に出来るだけ短時間に電源を確保する・・という事から起動時間の長いガスタービンではなくデーゼル発電が選ばれてきた。
細かい起動時間は退職したとは言え色々な問題があるので差し控えるが、そういった場所での起動時間は数秒で事足りる。
何たって、エンヂンを起動して燃料制御を全開にするのだ!例えれば、クルマで冷間時にキーを捻って、そこからガスペダルを床まで踏んだ状況と言えば良いだろう。だから、よほど耐久性や確実性の実績があるエンヂンでは無いといけないので、こうした特殊な発電所に入るエンヂンのメーカーは正直五本の指があれば足りる数しかないのだ。
だから正直に言うが、十数台のエンヂンが全て一時間でダウンしたと言うのが信じられない、つまり、エンヂン本体ではなく、周りの制御系か燃料系のトラブルと考えている。
考えられるのが津波によって、電気系が、若しくは吸気系に海水が浸入してが可能性が高いだろう。
燃料系は、地震があって揺れても大丈夫なように配管の途中にはフレキシブルチューブが数箇所入っているので意外に破断という現象は起きないものなのだが・・・
現状も心配なのだが、どうして十数機のエンヂンがダウンしたかを早急に公表して欲しいと願っているのだ。
さて、特殊発電所は別にして、一般の非常用発電で心配なのは、燃料の在庫だ。
以前は、非常用発電に於いては二日間「48時間」分の燃料を常に用意しておく事になっていた。阪神淡路以降は3日間「72時間」分の燃料を用意する施設が増えたが。。。
発生から3日間。燃料の供給が無ければ非常用発電もただの箱になってしまう。だから、早急なる商用電気の復旧を望んでいるのだが果して?
さらに停電が少ない国、日本という事で非常用発電のメンテがされていない事例が意外に多くある。
かつて、東日本で大きな地震が起きたとき、某銀行で非常用発電が起動したが、日頃メンテを行っていなかった為に、回転が一定にならず電圧変動が大きく、コンピューターやATMがマトモに動かなかったという実に情けない事もあった。
今回の国難と言われる大震災だが、その中に「人災」という要因が多くなければという思いと、非常用発電が正常に機能してくれているか?本当に心配なのだ。
Posted at 2011/03/14 01:19:11 | |
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