
ライトウェート・スポーツ・・・
もはやこの言葉も死んでしまうのだろうか?
昭和30年代後半から40年代には、日本にも「山椒は小粒でもピリリと・・・」と言った、ライトウェイト・スポーツが綺羅星の様に存在していたのだったが。。。
その中で、販売台数的にも内容的にも優れていたのが、「トヨタS800」であったように思う。
最高出力45PS(もちろんグロスだ!)でありながら、軽量で空力的にも優れていたトヨタS800は、なんと最高速155Km/hでゼロヨンは18.4秒で走り抜ける事ができたのだった。。
このトヨタS800のルーツは、1962年、今の東京モーターショウの前進「全日本自動車ショー」に出品された「パブリカ・スポーツ」であったことは疑う余地も無い事だろう。
ベースは、当時のトヨタのベーシックカー「パプリカ」で、当時の空力の概念をフルに活用してデザインされたエクステリアは斬新で、無骨なホンダSシリーズに対してファニーでコケティシュだと評された。
しかし、そのボディメイキングは、理詰めで考えられ、一見、遊びで採用されたように見える「スライディング・ルーフ」も実はボディ剛性を高める為に採用されたのであった。。。
この「パブリカ・スポーツ」は二年後の「東京モータショー」で、名前は同じ「パブリカ・スポーツ」という名称で再出品されたが、それは「デルタッチャブル(脱着式)・ルーフ」に改められ、細部もより量産を意識したモノとなり、実際にそれが1965年4月に「トヨタS800」としてリリースされる事になったのだ。
水平対抗空冷2気筒のエンジンは、ボンネットの高さを低くする事が出来、無論重心も低くなる、しかも空冷なので軽量・・・
エンジンの軽量さと、ボディのコンパクトさ、空気抵抗の少なさで、この非力な45馬力カーは、前出の性能を発揮したのであった。。。
さらに燃費も驚くほど良く、当時のモードで31Km/Lも走ったというのだから驚きだ。
実際に、所有しているオーナーに聞くと、街乗りでも最低16~18Km/Lは走るというのだから、いかに低燃費かという事が分かろう。。。
そんな「トヨタS800」である、長距離の耐久レースでは、時たま驚くような戦績を残す事になる。
遥か格上の「トヨタ2000GT」と共に、耐久レースでは上位に食い込む事もしばしば。。。
レースシーンでは「長距離のトヨタ」、「燃費のトヨタ」などとレースカーとして有り難くもあり、有り難くも無い名称で呼ばれていた。。。
「トヨタS800」を語る上で一番のトピックスは、1966年の「第一回鈴鹿500Kmレース」での優勝だろう。。
ライヴァル達は、「フェアレディ1600」、「ホンダS600」、「スカイライン2000GT」、「ロータスエラン」と言った、当時の最新鋭のマシン達・・・
馬力的には、どうにもこうにも太刀打ちできないハズだったが・・・
このレースで、ライヴァル達が定期的に燃料を給油する為にピットに入るのだが、「トヨタS800」は一向に給油するそぶりを見せない!!
周回数が増えるにしたがって、給油回数の少ない「トヨタS800」が、しだいに上位にランクアップして行き、ついにはトップに立ってしまった。。。
そしてチェッカーフラッグ!!
驚く無かれ、この500Kmという長丁場を「トヨタS800」は無給油で走りきったのだ。
しかも燃料タンクは、予め70Lに増やされていたが約56Lしか燃料を使ってなく、さらに軽量だった為にタイヤも殆ど消耗していなく、もう一回500Kmレースに出れるくらいしか磨耗していなかったという。。。
ちなみに、邪道とわかっていても燃費を計算すると・・・
レースで「9Km/L」 で走りきった事になるのだ。。。
ハイパワーで大きなボディを、グイグイというダイナニズムで押さえ込む醍醐味もあろうが、じつはこれからのクルマのヒトツの方向性として、もう一度、ライトウェイトというカテゴリーも見直した方がいいと私は思うのだが。。。
Posted at 2005/10/17 05:36:56 | |
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