
朝から雨もよいの空だ。私を憂鬱な気分にさせる要因の一つだ。仕事も身に入らない。やっぱり行こうか…。
憂鬱と書いたが本当はそれは正しくない。わくわくした気分でもあるのだ。だってあなたに逢えるのだから…。でも実際に行動を起こすとなると簡単ではない。目の前には現実の日常がある。どうしよう…。
あの人から「今月中に逢えませんか?」と連絡があったのは11月の初めであった。すぐにでも逢いに行きたかったのだが、ぐずぐずしているうちに最後の日になってしまった。どうしよう…。二度とあの人に逢えないかもしれない。
よし、行こう!誘われて行かないなんてツゥではない。待っていてくれ、時間までには必ず行くから…。
「ハシモっちゃん、ごめん。この仕事あとで必ずやるから。」
「すみません。昨日に引き続きで申し訳ありませんが、時間休をいただきます。」
上司の皮肉を背中で聞き流しながら職場を後にした。足利ICから高速だ。途中こらえきれないかのように霧雨が降って来た。あなたの涙だろうか…。今向かっているよ、もうすぐだ!
インターホンを押すのはいつでもドキドキするが、今日は格別だ。
「どなたですか?」
「僕だよ。」
「ツゥさん!?ツゥさんなのね。」
「遅くなってごめん。」
「来てくれたのね…。うれしい。どうぞ入って。でもそこからだと
まだ大変だから
気をつけて来てちょうだいね。」
「わかっているよ。」
「
やっと逢えたね。」
「もう来ないのかと思っていた…。私のことなんて忘れていたんでしょ?」
「初めて会った時から君のことを忘れたことはないさ。今月は毎日君のことばかり考えていたんだよ。」
「嘘でもうれしいわ。来てくれてありがとう。でももう少し早く来てくれれば錦の着物をまとった美しい私を見せられたのに…。」
「それは残念だけれど、生まれたままの今の君の姿もとてもきれいだよ。」
「恥ずかしいわ。ずっとお話していたいけれど、時間がないわ。早く入って。」
「そうだね、入らせてもらうよ。」
「どう?」
「
とても気持ち良いよ。柔らかくて、温かくて…。」
「
もう時間だ。」
「時間になってしまったのね…。」
「最後のお願いを聞いてくれないかな。」
「なに?」
「あそこを見せてくれないかな…。」
「えっ?
あそこ?本当はいけないのだけれど最後だから見せてあげるわ。」
「
きれいだ。また入ってもいいかな。」
「はい。」
「
最高だ。極楽、極楽。」
「もう帰るよ。今日はありがとう。
君のことは絶対に忘れない。」
「私こそありがとうございます。」
「もう逢えないのかな…。」
「ツゥさん、逢いたいという気持ちを二人が強く持っていれば必ず逢えますよ。」
「湯の平温泉 松泉閣」(2012年11月30日)パート1
「湯の平温泉 松泉閣」(2012年11月30日)パート2
Posted at 2012/12/01 06:59:07 | |
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