~共鳴が支える日常トルクと、その奥にある設計意図~
私の普段乗りとして活躍しているRN1ステラカスタムRS。
…ですが、ただの移動用ではありません。この車両、じつは平成17年世代の車両制御を検証するための“実験台”として、日々観察と試行の対象となっています。
そんなある日、エアフィルター交換のついでに、吸気周辺を観察していて気になったのがこの構造です。
★スーパーチャージャーの吸気経路にある謎の箱と筒
ボンネットを開けると、スーパーチャージャーユニットの上に四角い箱状の部品、さらにその先には筒状の小ぶりなパーツが鎮座しています。いずれもスーパーチャージャーの吸気側に挿入された部品です。
「これ、なんだ?流れを邪魔してるようにしか見えないんだけど…」
「ストレートダクトの方が流速的に良いのでは?」
そんな素朴な疑問から構造を深掘りしていくと、そこには意外な“音”の戦略が隠れていました。
「吸気音の反射波」を使った空気制御
これらの箱と筒――一般的には**レゾネーター(共鳴室)と呼ばれるもので、単なる消音装置ではありません。
エンジンが空気を吸い込むとき、吸気管内には脈動(吸気音波)が発生します。
この波は吸気パイプの内壁や分岐点(=レゾネーター)で反射し、次の吸気タイミングに影響を与えます。
波の戻りタイミングが合えば、吸気が加速されてトルクが上昇(共鳴加速)
タイミングがズレていれば、流れがぶつかってトルクの谷が発生(干渉)
つまりレゾネーターは、「吸気音の反射波をコントロールしてトルク特性を整える装置」でもあるのです。
★レゾネーター撤去で得られるものと、失うもの
吸気をシンプルにしたい、という考え方ももちろん有効です。
実際、レゾネーターを撤去してストレートパイプ化すれば、
吸気音が増す(スーチャー音も強調)
ダクト内の抵抗が減って、レスポンスが向上するように感じる
といった変化を体感できます。が、その裏で…
3,000〜4,000rpm付近にトルクの谷が発生する可能性
反射波の干渉で流速が不安定になり、空燃比の乱れ
音で“速くなったように感じる”が、実際には落ちている場合も
といった副作用も出やすくなります。
スーパーチャージャー付きのEN07は吸気流速が速く、反射波の戻りも早いため、ちょっとした設計のズレが走行フィールに現れるのです。
★「音」を設計に取り込むチューニング
もしこの構造を見直すなら、ただ“取っ払う”のではなく、「狙った回転域で共鳴加速を起こす」という方向で再設計することが考えられます。
例えば:
・ストレートパイプ化しつつ、共鳴長を意識したダクト長設計
・レゾネーターの容量や形状を変更して、狙った共鳴周波数に調整
・FORTEで静電吸着を抑制し、流れの安定化を図る
といったチューニングを組み合わせていくことで、「ただ音が出る吸気」ではなく、“音で走りが変わる吸気”へと昇華することができそうです。
★最後に・・・
普段乗りに見せかけて、実は観察用の母体。
RN1ステラRSは、そんな立ち位置でこの先もしばらく私の実験素材でいてもらいたいと思います。
単純な“パイプの形”が、トルクや燃調、フィールにどう影響するのか――
それを読み解く鍵は、「音」にもあるかと思います。
(ちなみにLEXUS LFAのエンジンにはヤマハの技術が生きています。マフラーが三本の理由は排気効率も考えながら、高、中、低の音を和音にして響かせるという技術が使われています。その技術はパイプオルガンからなんですね。ピアノ製作技術が航空機用プロペラ製造に変化し、戦後それがまた今の世にフィードバックしています)
※よく見る“グラスが割れる実験”も、音圧だけでなく「音の周波数」がグラスの共振周波数と一致して起こる現象です。
吸気管でもこれと似たように、特定の回転数で「吸気の波」と「パイプの長さ」が共鳴・干渉することで、トルクの山や谷が生まれます。
Posted at 2025/07/13 19:41:11 | |
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