不定期シリーズの続・お客様の質問にお答えしてはトータルで37回目の今月で2回目の書き込みとなります。
最近福岡店にいる時は店頭でピュアコンのブラックボックス用のコイル巻きをしている事が多く、宇部店では後ろにコイルを巻くためのスペースがありますが、福岡店はハンダ付けをするスペースはあってもコイルを床に広げるほどのスペースが無く、仕方なく店頭の隅の方で純白のボビンに巻いています。
そのためこれまで何人ものお客様にその姿を見られて、「本当に一から巻いているんですね!」とか、機械巻してある物をわざわざほどいて巻き替えているんですね!」と驚かれています。
右の少しクーリーム色のコイルがメーカー製の機械巻した物で、それを全てほどいて左の特別注文の純白のボビンに巻き替えています。
「そんな手間のかかる事をして、本当に音が良くなるのですか?」と良く聞かれますが、機械巻のコイルから手巻きのコイルに替えた方は不思議と音が良くなったというのを実感されているのも事実です。
そこで今日は何故音が良くなるかという部分を箇条書きして分かりやすく解説したいと思います。
1 インダクタンスが大きいい機械巻されたコイルは中心部の径が大きいため、車から発せられる
電磁波の影響を受ける事が多く、知らない間に音が濁ってしまっている。
2 内径の小さい市販のコイルで電磁波の進入を防ぐと一定以上こいるのインダクタンスが上が
らず、ツイーターの周波数レンジを広げようとするとコンデンサ側の値を大きくしないといけなく
て、どうしてもインピーダンスが低くなって、必要以上に鋭い音になってしまう。
3 銅線を巻いているボビンは市販の物は固くて、信号を流した時に出る微弱振動が跳ね返され
て音にストレスを与える。
少し柔らかい材質で振動を外に逃がして、ストレスの無い滑らかな音にする。
4 機械巻は同じ方向にしか銅線を巻かないが、手作業ではムラが出たら巻き戻して更にもう一
度巻き返して、たまに途中で止めて型を付けてから次の周回を巻く様にしているので、機械巻
には出来ない締め付けが可能になり、結果として銅線の長さの割に高いインダクタンス値を得
る事が出来て、更に同時に抵抗値を下げる事が出来る。
とこの様な理由が手巻きコイルを使用した場合のメリットで、材料を供給してもらっている業者方からは「これで社員を使って大量生産すれば儲かりますね。」と言われましたが、これは自分が巻いているからこの結果が得られて、普通に知識と経験が無い者が巻いても機械巻以下の性能の物しか出来ないので、社員を使って量産という事は考えていません。
自分がコイルが持つ性能を知ったのは中学生の時で、その時にドイツのビジーという会社のコイルの優れた性能に引かれて、自分で「ビジーの様なコイルを巻きたい!」バカの一つ覚えで何度もコイルを巻いてほどいてを繰り返していました。
結果としてビジーの様なコイルは巻けませんでしたが、それとは違う別な周波数用のコイルである程度優れた性能の物が巻ける様になって、銅線の長さの割に高いインダクタンス値が得られる=高性能を中学生の時に実感していました。
ただ自分の趣味で高性能というのと、お客様からお金を頂いて巻くコイルは更に上の次元で、おそらく無我夢中で中学生の時に巻いていたレベルのコイルも給料をもらって巻くのであれば、よほどの向上心で自分の作った物をジッと見て、悪い部分を炙り出すという厳しい目を持たないとそれは出来ないでしょう。
たまたま5年前にビジーのコイル付きのアンテナを見つけて、宇部店のコイルを巻く場所に置いて中学生の時の気持ちを思い出しているのですが、これを見て「ステンレスの太い棒を機械で物凄く強い力で巻いている性能を、それより細い銅線を巻いても出来るはずがなかったのでは?」と50年経って気が付きました。
早いうちに145MHzでビジーの性能に追い付くのは諦めて、145MHzの8分の5波長と51MHzの4分の1波長の両方に同調するコイルに方向を変えて、後は28MHzと21MHzの4分の1波長と周波数をどんど下げて巻きの大きなコイルを作る方向に変わって行き、今のオーディオ用のコイルの原型になっている物を高校生の時には趣味で作っていました。
ただ最初に高性能なコイルを巻きたいと思ったきっかけとして、ビジーのAFー10のコイルは目の前に置いて中学生の時の無心な頃を思い出して、良いコイルを巻きたい!という気持ちを高めながら巻いているので、そういうのが分からない人が巻いて同じ様な物が巻けるのだろうか?
特に「今のこれでいいのか?」とか、「ほどいて一から巻きなおそう!」という自分が作る物に厳しい目が向けられるかを考えると、実際には機械巻以下の性能の物しか出来ないと考えていいでしょう。
ただなぜここまで言い切れるかというと、以前に機械巻した物をほどいていってちょうど良い巻き数で締め直して端子を付けるという作業で、ちょっ気を抜いた事でコイルがばらばらとほどけて使えなくなって、仕方なく違うボビンに一から巻いたら機械巻よりも性能が良かったというのがスタートなので、そこを考えたら機械巻以上の物が社員に作らせて出来るとはとても考えられません。
そんな社員のミスから生まれた一から手巻きコイルですが、自分が当初予定していたよりも良い音が再生出来るのと、車自体が内径の小さなコイルを使わないと良い音が出せない方向にどんどん向かっているのと、純正のディスプレイオーディオがややインピーダンスを高めに設定しないと、過去の様にインピーダンスを下げて無理やり電流を流して勢いを付けるに対応していないので、内径が小さくてインダ
クタンス値が高めの市販されていないコイルの使用が必要となっています。
もう一つの質問がグローブボックス下のピュアコンの外付けのコイルと、ブラックボックスの中に入っているコイルの役割が知りたいというお客様が何人かおられて、外付けのコイルはドアスピーカーの高音域をカットする役目で、ブラックボックスの中のコイルはツイーターの下限の周波数、つまり中音域に近い周波数をどこまで再生させるかをコンデンサとの組み合わせで決めていて、コイルのインダクタンスを大きくしてコンデンサの値を小さくするとインピーダンスを高くする事が出来ました。
またブラックボックス内のコイルはツイーターと繋がっているので、ここの内径を小さくする事で電磁波の吸い込みを大幅に減らして、それで高音域が更に綺麗になったという事です。
今日は技術的に難しい話になりましたが、日頃からお客様から質問が多い部分を取り上げさせて頂きました。